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ヒップホップ・R&B

トラップ

Trap

アトランタ / アメリカ合衆国 / 北米 · 2003年〜

2000年代の米国南部で成立した、ハイハットの細かい刻みと808ベースを特徴とするHip Hop。

どんな音か

南部ヒップホップの一系統。テンポはBPM130〜170(1分間の拍数)とかなり速い。だが手拍子(スネア)が2拍に1回しか入らないため、聴いていて感じる速さはその半分くらい、ゆったりしたものになる。これをハーフタイムと呼ぶ。だから一発一発が重く着地する。音作りの核は三つ。一つ目は「サブベース」と呼ばれる、とても低い音だ。ドラムマシン『808』のキック(バスドラム)を極端に低く長く伸ばし、それをそのままベースの旋律として鳴らす。二つ目は、『タカタカタカ』と細かく連打されるハイハット。1拍を細かく4つに割った刻み(16分)と、1拍を3分割する3連符(トリプレット)を、曲の途中で切り替える。三つ目は、持続音のシンセが作る、ホラー映画を思わせる不穏なメロディだ。これらに加えて、ヴォーカルはオートチューンで加工され、歌とラップの中間のような節回しになる。歌詞は薬物売買、ストリート、贅沢、自己肯定が多い。仕上げの音作りで中域を削って低音を前に出すので、腹に響く重低音になる。そしてこの重低音の上に、乾いた手拍子(クラップ)がパチンと乗る。

生まれた背景

2000年代初頭、米国南部アトランタ。T.I.のアルバム『Trap Muzik』(2003)で「Trap」という言葉が一般化した(「trap house」=麻薬の販売所のこと)。続いてGucci Mane、Young Jeezyが2000年代半ばに歌詞世界を作る。サウンド面では、Shawty ReddやDJ Toompが2000年代後半に808中心の暗い音像を先導し、Lex Lugerが2010〜11年に大音量の808サウンドを量産・標準化した。ZaytovenやMike WiLL Made-Itもこの時期に主要プロデューサーとなる。Migosは2013年「Versace」、2016年「Bad and Boujee」で、3連符に乗せてたたみかけるラップの節回し(トリプレット・フロー)を世に広めた。起源は1990年代のThree 6 Mafiaらにさかのぼるが、これを主流化させたのがMigosで、以降のラッパーが学ぶ雛形になった。2010年代後半、Futureはオートチューンの哀愁を一つの様式にまで高めた。Travis Scottは同じ808を土台に映画的で巨大な音響を組み立て、21 Savage、Lil Baby、Cardi Bらがそれをポップの主戦場へ運んだ。クラブ向けの電子ダンス音楽(EDM)にも広がり、「Trap EDM」(Baauer『Harlem Shake』2013など)も派生した。ストリートの符牒だった一語が、いまやポップの共通言語になっている。

聴きどころ

ハイハットの「タカタカタカタ」という細かい刻みに注目したい。途中でこれが倍速になる瞬間や、3連符に切り替わる瞬間が、トラップらしい盛り上げどころだ。808のサブベース・キックが「ドゥーン」と長く伸びる音色、オートチューンで音程が機械的に揺れるヴォーカルの艶、そして暗く不穏な響きのシンセが作る陰った気分も聴きどころになる。

リズムを聴く

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

トラップ · 140 BPM

代表アーティスト

  • Migosアメリカ合衆国 · 2008年〜2022
  • Travis Scottアメリカ合衆国 · 2008年〜
  • Futureアメリカ合衆国 · 2010年〜
  • Futureアメリカ合衆国 · 2010年〜
  • Young Thugアメリカ合衆国 · 2010年〜
  • RL Grimeアメリカ合衆国 · 2011年〜

代表曲

日本との関係

BAD HOP(横浜)、Awich(沖縄)、JP THE WAVY、Tohji、Yung Lean、ralphなど、日本ヒップホップの主流が完全にトラップ系。RYKEY、Yvng Patra、KOHHもトラップの語法。MV制作も米国南部の作法を直接コピーするケースが増えている。

初めて聴くなら

まずはこれ、というジャンルの出発点なら、T.I.『Rubber Band Man』(アルバム『Trap Muzik』2003収録)。トリプレット・フローの定番はMigos『Bad and Boujee』(2016)、完成形を聴くならFuture『Mask Off』(2017)。808とフルートの組み合わせがトラップの聴き心地を象徴する。さらに広げるなら、サイケデリックで浮遊感のあるTravis Scott『Astroworld』(2018)。日本にも根付いており、川崎発のBAD HOP『Foreign』(2018)が好例だ。

豆知識

「808」と呼ばれるサブベース・キックは、1980年発売のローランドTR-808リズムマシンのキック音だ。発売当時は「リアルなドラムに聞こえない」との評で売れ行きが振るわず(出荷は1万2000台未満)、約3年で生産終了になった。あの独特の音色は、規格外の(本来は不良品とされる)トランジスタから生まれていた。だが半導体技術が進歩してその不良が出なくなり、部品が手に入らなくなったことが、生産終了の直接の原因だった。ところが安価になった中古機が南部ヒップホップのプロデューサーたちに愛用され、結果としてこの808の音が、マイアミ・ベース(1980年代マイアミ発の重低音ダンス音楽)とトラップという2ジャンル、そして2010年代のポップ制作の土台になった。

影響・派生で結ばれたジャンル

トラップを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ合衆国 · 2003年前後 (±25年)