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伝統・民族

コリードス・トゥンバドス

Corridos Tumbados

メキシコ / 中南米・カリブ · 2017年〜

別名: Corridos bélicos / Sierreño-trap

メキシコの伝統的コリードにヒップホップ要素を加えた現代ジャンル。2019年のNatanael Cano『Corridos Tumbados』とJunior Hがジャンル名と型を作り、2023年のPeso Pluma『Ella Baila Sola』とFuerza Regidaが世界的爆発をもたらした。

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ひとことで言うとメキシコの伝統的コリードにヒップホップ要素を加えた現代ジャンル。2019年のNatanael Cano『Corridos Tumbados』とJunior Hがジャンル名と型を作り、2023年のPeso Pluma『Ella Baila Sola』とFuerza Regidaが世界的爆発をもたらした。

まずはこの曲からNatanael CanoCorridos Tumbados ▶ YouTube

代表的な人Ariel Camacho

どんな音か

コリードス・トゥンバドスは、メキシコの伝統的な語り歌コリードに、ヒップホップの一種であるトラップの重低音(808と呼ばれる深い電子ベース)を溶け込ませた、2019年以降に爆発的に世界化したジャンルだ。テンポは80-100BPMの中速。編成の核はシエレニョと同じアコースティック三人組(バホ・キント、レキント、トゥバ)を保ちつつ、そこに808サブベースと、細かく刻むトラップのハイハットを重ねる。歌はメキシコ北部の鼻にかかった発声で、語りかけるようなラップに近いフロウで進み、サビでメロディが開く。歌詞は地元の界隈(バリオ)の生活、麻薬経済(ナルコ文化)、富、ロマンス、そして時に自嘲的な鬱屈まで扱う。録音はクリアで、低域は深く沈むのに、ホーンや弦は乾いた響きを保つ——これがコリードス・トゥンバドスのサウンドの署名だ。

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

トラップ · 140 BPM

聴きどころ

まず低音を聴いてほしい。二つの低音が重なり合う——強拍ごとにボンボンと鳴るトゥバ(金管の低音楽器)のベースラインと、トラップ的な808のサブベース。性格の違う二つが同じ低い帯域で響き合う。ドラムが入らない曲も多く、ハイハットや指パッチンだけでリズムを保つ「アコースティック・トラップ」的な質感も独特だ。バホ・キント(12弦の伴奏ギター)の和音の鳴り、レキント(高音域のギター)のオブリガートも聴きどころ。そして歌の語尾でわずかに揺らすメキシコ的なこぶし(声を細かく揺らす歌い回し)も、耳を澄ますと面白い。Junior Hの『Sad Boyz』を聴けば、この編成でどれほど鬱屈したトーンまで出せるかが分かる。

初めて聴くなら

最初の一曲はPeso Pluma & Eslabón Armadoの『Ella バイラ Sola』が最適だ。トゥバの低音、レキントのキラキラした上音、ラップ的な歌唱、すべてが短い尺に凝縮されている。次にNatanael Canoの『Soy El Diablo』を聴くと、ジャンル創設期の生々しい姿が見える。Fuerza Regidaの『TQM』はビートを強めた、よりクラブ向きの一曲。逆にJunior Hの『Sad Boyz』系を聴けば、同じジャンルでも鬱屈で物悲しい方向まで振れることがわかる。明るいクラブ寄りから物悲しい方向まで——陽射しの下が似合う伸びやかなサウンドで、昼下がりのドライブや、屋外でビールを開けるBBQによく似合う。

代表アーティスト

  • Ariel Camachoメキシコ · 2013年〜2015
  • Fuerza Regidaメキシコ · 2015年〜
  • Eslabón Armadoアメリカ合衆国 · 2017年〜
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  • Junior Hメキシコ · 2017年〜
  • Natanael Canoメキシコ · 2018年〜
  • Peso Plumaメキシコ · 2020年〜

代表曲

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生まれた背景

決定打は2019年、ソノラ州エルモシージョ出身のNatanael Cano(当時18歳)がロサンゼルス拠点のレーベルRancho Humildeと組み、伝統的コリードにトラップ感覚を持ち込んだアルバム『コリードス・トゥンバドス』をリリースしたことだった。アルバム名がそのままジャンル名の由来となった。

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「Tumbado」はスペイン語で「横たわった」「だらけた」の意で、伝統的コリードの直立した勇ましさを脱力させた、というニュアンスがある。Rancho Humildeの創設者ヘスス・イグナシオ・ペレス=マレーラは、シナロア/ソノラ出身の若手ミュージシャンを米カリフォルニアで組織化し、TikTokとYouTubeを軸にディアスポラのメキシコ系青年層に音を届ける戦略でジャンルを商業的に離陸させた。同じ2019年、Bad Bunnyがナタネル・カノの『Soy El Diablo』のリミックスに参加し、ジャンルは汎ラテン・ポップ側と最初の接点を持った。決定的な世界化の瞬間は2023年、Peso Pluma(本名Hassan Emilio Kabande Laija、グアダラハラ・ハリスコ生)とEslabón Armadoの共演曲『Ella バイラ Sola』がBillboard Hot 100で4位を記録したことだった——地域メキシコ音楽(レヒオナル・メヒカーノ)の曲として初のトップ5入りで、ジャンル史の画期になった。同年、Peso Plumaは全米NBC『Tonight Show』にスペイン語のまま出演(4月28日)、Coachella 2023でヘッドライナー級の出演を果たし、彼のアルバム『Génesis』(2023)は2024年グラミー・ラテン部門で最優秀地域メキシコ音楽アルバム賞を受賞した。並行してFuerza Regida(カリフォルニア拠点)がクラブ寄りの強いビートを、Junior Hがメランコリックな「Sad Boyz」路線を、それぞれ確立し、ジャンル内での多様化が進んだ。

その後の代表曲

日本との関係

日本での流通は限定的だが、Peso Plumaの『Ella バイラ Sola』は2023年TikTok経由で日本のティーン層にも届き、Spotifyの日本バイラル・チャートに断続的にチャートインしている。J-POPでの直接的な影響は薄いが、YOASOBIやAdoの海外ツアーでラテン市場が意識される中、若手プロデューサーの一部がコリードス・トゥンバドスの808とアコースティック楽器の組み合わせを実験している例がある。フジロック2024ではラテン系ステージでの現地ミュージシャンの出演があった。埼玉・愛知のメキシコ系コミュニティのYouTubeチャンネルではPeso Plumaのカバーが定期的に上がっている。

豆知識

「Tumbado」はスペイン語で「横たわった」「だらけた」の意。Natanael Canoはこのスタイルを始めたとき18歳だった。

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Peso Pluma(本名Hassan Emilio Kabande Laija)は2023年、地域メキシコ音楽のアーティストとして初めてジミー・ファロンの『Tonight Show』にスペイン語のまま出演した(2023年4月28日)。英語に切り替えず全米屈指の人気番組に立ったことは、英語圏でラテン音楽への関心が高まる象徴的な出来事となった。一方で影の面もある。歌詞のナルコ描写を理由に、メキシコのチワワ州やキンタナ・ロー州などではライブ会場での演奏が制限されており、Peso Plumaは2023年10月、麻薬カルテルからの脅迫バナーを受けてティファナ公演を中止した。ジャンル名は英語圏のメディアでしばしば「Trap Corridos」「Sad シエレニョ」などとも呼ばれるが、シーン内では「コリードス・トゥンバドス」が正式呼称として定着している。

影響・派生で結ばれたジャンル

系譜図を見る
コリードス・トゥンバドスを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

コリードス・トゥンバドス の系譜全体図(多段)を見る

感触が近い系譜も地域も違うのに、聴くと通じるジャンル

コリードス・トゥンバドスが好きな人は、この6つも刺さる可能性が高いです。系譜図には出てこない、意外な隣人たち。

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