ヒップホップ・R&B

トラップ・アルヘンティーノ

Argentine Trap

アルゼンチン / 中南米・カリブ · 2017年〜

アルゼンチン発のスペイン語トラップ。Duki、Bizarrap、Trueno、Tini、María Becerraらが代表。BBC1版バトルラップ「El Quinto Escalón」が起点。

どんな音か

ブエノスアイレスを中心とするスペイン語のトラップ。テンポは概ね130〜150BPM(半拍取りで65〜75BPM体感)。ベースは深い808、ハイハットは三連符/六連符で細かく刻み、スネアはクラップに置き換わることが多い。歌唱は強いオートチューンを通したメロディ・ラップで、語尾を伸ばしながらメロディを揺らすのが特徴。アルゼンチンスペイン語特有の「ll」「y」を「シャ」と発音する独特のアクセント(ジェイスモ・レイスモ)が、英語トラップとは違うリズム感を生む。

生まれた背景

2010年代半ば、ブエノスアイレス中心部のパルケ・リバダビアで開かれた即興バトルラップ大会「El Quinto Escalón(2012〜2017)」が直接の起点。Duki、Trueno、Wos、Ecko、Khea、Paulo Londra、Bizarrapらがここから出てきた。当時のアルゼンチンは経済危機が常態化しており、家を出られない若者たちがYouTubeに自宅録音を上げ、わずかな機材で世界に届く道を切り開いた。Bizarrapの『BZRP Music Sessions』はその後、Shakira、Quevedo、Residenteらを巻き込みグローバル現象になった。

聴きどころ

まず注目はオートチューンの「揺らし方」。アメリカ合衆国トラップが声を機械的に固めるのに対し、アルゼンチン勢は意図的にピッチをずらして人間味を残す。Dukiの『Goteo』を聴くと、語尾を引き伸ばしながら音程を半音下に滑らせる癖がよく分かる。Bizarrapのビートは、シンセのリードフレーズが意外なほどメロディアスで、Daft Punkやフレンチハウスの匂いを感じる瞬間もある。María Becerraの歌唱は、トラップレゲトンの境目を行き来する柔らかさが聴きどころ。

代表アーティスト

  • Dukiアルゼンチン · 2016年〜
  • Bizarrapアルゼンチン · 2017年〜
  • María Becerraアルゼンチン · 2019年〜

代表曲

日本との関係

日本ではBizarrap feat. Shakiraの『BZRP Music Sessions #53』(2023年)が一気に話題になり、Spotify日本のバイラル・チャートにも入った。テクノハウスのDJの一部がBizarrapのインストを差し込むことがあり、渋谷・心斎橋のクラブで耳にする機会も増えている。Truenoはレゲトンに寄せずブーンバップ的なヒップホップ純度の高さで、日本の硬派なヒップホップ・リスナーから個別に支持を集めている。

初めて聴くなら

入口はBizarrap feat. Quevedoの『BZRP Music Sessions #52』。シンプルな2コードのループに乗るQuevedoの哀愁メロディが、トラップ・アルヘンティーノのメロウな側面を象徴している。次にDukiの『Goteo』、Truenoの『Dance Crip』を聴くと、ハードな側面、コンシャスな側面が見える。María Becerraの『High』はポップ寄りで、夜のドライブやひとりの帰り道に似合う。

豆知識

「El Quinto Escalón」は直訳すると「第五の階段」。会場だったパルケ・リバダビアの公園内の階段がそのまま大会名になった。優勝賞金は当初わずか数千ペソ、観客は数百人規模だったが、決勝戦のYouTube動画が数千万再生を記録するモンスター・コンテンツに育った。Bizarrap(本名Gonzalo Julián Conde)は常にトラックスーツとサングラスとキャップで登場し、素顔をほぼ公にしていない。日本ヒップホップDJ/プロデューサーにとって、自宅完結型でグローバルに届く成功例として頻繁に参照されている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1970年代1990年代2000年代2010年代トラップ・アルヘンティーノトラップ・アルヘンティーノヒップホップヒップホップレゲトンレゲトントラップトラップ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
トラップ・アルヘンティーノを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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