ポップ

パンジャーブ・ポップ

Punjabi Pop / Hip-Hop

インド / 南アジア · 2010年〜

北インド/パキスタンのパンジャーブ州発のポップとヒップホップ。Karan Aujla、Diljit Dosanjh、AP Dhillonが世界的成功。

どんな音か

腹に響く四つ打ちのドール(両面太鼓)の連打に、トゥンビ(一弦楽器)の高音がチクチクと刺さり、そこにオートチューンを軽くかけたパンジャーブ語のラップとメロディが乗る。シンセはトラップ寄りの808ベースが効いていて、テンポはおおむね90〜100BPM。歌い手は喉を絞らずに鼻に抜けるような朗々とした発声で、サビでは合いの手のような掛け声がぎっしり詰まる。録音はラウドでマスタリングは派手、車内で爆音にして気持ちよくなる設計。

生まれた背景

発祥地は印パ国境にまたがるパンジャーブ州。インド側のパンジャービー語話者と、世界中に散らばったシク系移民コミュニティ(カナダイギリス、米西海岸、オーストラリア)が同じプレイリストを共有していることが、このジャンルを一気に世界規模に押し上げた。2010年代後半、Punjabi MCの時代のバングラ・ビートにヒップホップの語彙が完全に接続され、トロントやバンクーバーのパンジャーブ系若者がスタジオを構え始めた。畑仕事と結婚式で叩かれていたドールが、いまやBillboardのチャートに居座っている。

聴きどころ

まずドールの「ダ・ダッ・ダダ」という独特のシンコペーションに耳を慣らしてほしい。次に歌の節回し。サビで突然旋律が高い音域に跳ね上がり、語尾を長く伸ばすのがパンジャーブ歌唱の癖で、これがトラップのビートに乗ると独特のうねりを生む。歌詞は英語まじりでも構わず差し込まれるので、知っている単語(「gun」「love」「Mercedes」など)を拾うだけでも気分は掴める。ミュージックビデオの色彩設計も派手で、楽曲とセットで味わう前提で作られている。

代表アーティスト

  • Karan Aujlaインド · 2014年〜
  • Sidhu Moose Walaインド · 2017年〜2022
  • AP Dhillonインド · 2019年〜

代表曲

日本との関係

日本での認知度はまだ低いが、インド料理店のBGM、ボリウッド系ダンス教室、シク・コミュニティの集まる東京・神奈川の寺院(グルドワラ)で日常的に流れている。AP DhillonやKaran Aujlaの来日公演はまだ実現していないものの、TikTokでDiljit Dosanjhの楽曲を使ったダンス動画が日本の若者の間でじわじわ拡散。映画『RRR』の世界的ヒットでインド音楽全般への扉が開いたことが、間接的にパンジャーブ・ポップへの入り口にもなっている。

初めて聴くなら

最初の一曲はKaran Aujlaの『Tauba Tauba』(映画『Bad Newz』挿入歌)。低音と歌のフックが一度で耳に残る。次にAP Dhillonの『Brown Munde』。これは海外移民の自分語りソングで、北米のパンジャーブ系若者がアンセムとして掲げた一曲。三曲目はSidhu Moose Walaの『So High』、彼は2022年に銃撃で世を去ったが、低い声で淡々と語るスタイルはこのジャンルの土台になった。ドライブ中か、夜の散歩で大音量で聴くのが似合う。

豆知識

Sidhu Moose Walaの本名は「Shubhdeep Singh Sidhu」で、出身村のMoosaに由来する。彼の死後にリリースされた『SYL』は政治的な内容ゆえインド国内ではYouTubeで即ブロックされたが、世界の他地域では数億回再生を記録した。またDiljit Dosanjhは2024年にコーチェラでパンジャーブ語のままステージに立ち、Ed SheeranやSiaとも共演している。パンジャーブ語が「世界で最もストリーミングされる地域言語」の一角に入ったのは、彼ら世代の功績。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1950年代1970年代2000年代2010年代パンジャーブ・ポップパンジャーブ・ポップバングラバングラヒップホップヒップホップトラップトラップ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
パンジャーブ・ポップを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

インド · 2010年前後 (±25年)

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