パンジャーブ・ポップ
北インド/パキスタンのパンジャーブ州発のポップとヒップホップ。Karan Aujla、Diljit Dosanjh、AP Dhillonが世界的成功。
どんな音か
腹に響く四つ打ちのドール(両面太鼓)の連打に、トゥンビ(一弦楽器)の高音がチクチクと刺さり、そこにオートチューンを軽くかけたパンジャーブ語のラップとメロディが乗る。シンセはトラップ寄りの808ベースが効いていて、テンポはおおむね90〜100BPM。歌い手は喉を絞らずに鼻に抜けるような朗々とした発声で、サビでは合いの手のような掛け声がぎっしり詰まる。録音はラウドでマスタリングは派手、車内で爆音にして気持ちよくなる設計。
生まれた背景
聴きどころ
まずドールの「ダ・ダッ・ダダ」という独特のシンコペーションに耳を慣らしてほしい。次に歌の節回し。サビで突然旋律が高い音域に跳ね上がり、語尾を長く伸ばすのがパンジャーブ歌唱の癖で、これがトラップのビートに乗ると独特のうねりを生む。歌詞は英語まじりでも構わず差し込まれるので、知っている単語(「gun」「love」「Mercedes」など)を拾うだけでも気分は掴める。ミュージックビデオの色彩設計も派手で、楽曲とセットで味わう前提で作られている。
代表アーティスト
- Karan Aujla
- Sidhu Moose Wala
- AP Dhillon
代表曲
- So High — Sidhu Moose Wala (2017)
- Brown Munde — AP Dhillon (2020)
- Tauba Tauba — Karan Aujla (2024)
日本との関係
日本での認知度はまだ低いが、インド料理店のBGM、ボリウッド系ダンス教室、シク・コミュニティの集まる東京・神奈川の寺院(グルドワラ)で日常的に流れている。AP DhillonやKaran Aujlaの来日公演はまだ実現していないものの、TikTokでDiljit Dosanjhの楽曲を使ったダンス動画が日本の若者の間でじわじわ拡散。映画『RRR』の世界的ヒットでインド音楽全般への扉が開いたことが、間接的にパンジャーブ・ポップへの入り口にもなっている。
初めて聴くなら
最初の一曲はKaran Aujlaの『Tauba Tauba』(映画『Bad Newz』挿入歌)。低音と歌のフックが一度で耳に残る。次にAP Dhillonの『Brown Munde』。これは海外移民の自分語りソングで、北米のパンジャーブ系若者がアンセムとして掲げた一曲。三曲目はSidhu Moose Walaの『So High』、彼は2022年に銃撃で世を去ったが、低い声で淡々と語るスタイルはこのジャンルの土台になった。ドライブ中か、夜の散歩で大音量で聴くのが似合う。
豆知識
Sidhu Moose Walaの本名は「Shubhdeep Singh Sidhu」で、出身村のMoosaに由来する。彼の死後にリリースされた『SYL』は政治的な内容ゆえインド国内ではYouTubeで即ブロックされたが、世界の他地域では数億回再生を記録した。またDiljit Dosanjhは2024年にコーチェラでパンジャーブ語のままステージに立ち、Ed SheeranやSiaとも共演している。パンジャーブ語が「世界で最もストリーミングされる地域言語」の一角に入ったのは、彼ら世代の功績。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- エレクトロニックゴア・トランス
