スウェーデン語ラップ
スウェーデン語ラップ。ストックホルム/マルメ郊外(Förorten)出身の移民系若者発。Yasin、Greekazo、Einár(故)ら。
どんな音か
スウェディッシュ・ラップは、ストックホルム郊外のリンケビーやテンスタ、マルメのローセンゴードなど、いわゆるFörorten(フォーロルテン、移民系団地)から発信されるスウェーデン語ラップを指す。BPMは135〜150のドリル/トラップが主流で、ロンドンUKドリルに似たスライディングする808、突き刺すような速いハイハットの三連符、暗いマイナー鍵のメロディが基調になる。声はオートチューンを薄くかけたメロディアスな歌ラップが多く、Yasinのなめらかなフロウ、Greekazoのよりラフな質感、故Einárの哀愁あるメロディラインなど、若い世代の声が中心だ。スウェーデン語の硬い子音とアラビア語・ソマリ語混じりのスラングが、ドリルの硬質なビートと自然に噛み合う。
生まれた背景
聴きどころ
まずスウェーデン語の歯音「sj」「tj」の鋭い擦過音に耳をすませてほしい。「sju」「tjej」のような単語の頭で空気を切る音が、ドリルのハイハットと混ざってリズムを担う。次にメロディラインの暗さで、ヨーロッパのドリルらしくマイナースケールを延々と歩く構成が多く、サビでも安易に長調に逃げない。Yasinの曲では、サビのメロディが半音ずつ下がっていく動きが、フォーロルテンの夜の寒さをそのまま音にしている。三つ目はスラングで、「habibi」(アラビア語で「愛しい人」)や「para」(金)などの外来語が普通に混ざり、移民ルーツがそのままシーンの言語に刻まれている。
代表アーティスト
- Yasin
- Einár
- Greekazo
代表曲
- Katten i trakten — Einár (2019)
- XO — Yasin (2019)
Diamanter — Greekazo (2020)
日本との関係
日本での認知はほぼ無い。スウェディッシュ・ポップ(ABBAやRobyn)と同じ国の音楽だと言われても、リスナーが結びつけにくいほど別物の世界だ。日本のJ-rapシーン側からの直接の言及も少ないが、UKドリル経由でロンドン・ニューヨーク・ベルリンと並ぶ「欧州ドリル都市」のひとつとして、舐達麻やBADHOP周辺の若いリスナーがSpotifyで発見する例は出てきている。Einárの死を扱った海外ニュースを通じて、スウェーデンの「もうひとつの顔」を知った日本人もいる。今後、東京の郊外都市と発信構造が似ているため、密かに参照点になる可能性はある。
初めて聴くなら
入口の一曲はYasin『XO』。なめらかなオートチューン歌唱でドリルの硬さが少し和らぎ、初心者にも入りやすい。もう少し直球のドリルが好きならGreekazo『Diamanter』、亡くなったEinárの代表曲なら『Katten i trakten』。後者は彼の存命中の象徴的なヒットで、当時のフォーロルテンの空気がそのまま閉じ込められている。深夜の電車や薄暗い部屋で聴くとスウェーデン語の硬さと808の冷たさが映える。明るい時間に流す音楽ではないが、ヘッドホンで歌詞のフロウを追うとフォーロルテンの輪郭が見えてくる。
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ロック・メタルメロディック・デスメタル
