エレクトロニック

ロウアーケース・ミュージック

Lowercase Music

アメリカ合衆国 / 北米 · 1998年〜

1990年代後半に興った、極小・極静の音を主素材とする実験音楽の潮流。

どんな音か

ロウアーケース・ミュージックは、非常に小さな音、弱い物音、ほとんど聴こえない空気の動きを素材にする実験音楽。紙を触る音、部屋のノイズ、電子機器の微かな鳴りが、拡大されて作品になる。Steve Rodenの「Forms of Paper」では、紙に関わる小さな音が、静かな顕微鏡写真のように聴こえる。

生まれた背景

1990年代後半のアメリカ合衆国を中心に、サウンドアート、フィールドレコーディング、ミニマルな電子音響の流れから出てきた。大音量や劇的な構成に反対するというより、普段は無視される音を聴くために音楽の焦点を極端に小さくした。Morton Feldmanの静けさやAlvin Lucierの音響実験とも遠くつながる。

聴きどころ

再生音量を上げすぎず、部屋の音と作品の音の境目を聴くとよい。何も起きていないような時間に、紙の繊維が擦れる音や電子音の細い線が現れる。集中して聴くほど、自分の呼吸や椅子の音まで作品に混ざってくる。

発展

スティーヴ・ローデン「Forms of Paper」(2001)、ベルンハルト・ギュンター、リチャード・チャートランド、テイラー・デュプリーなどが代表。Linerecords、12k、Trenteoiseauxなどのレーベルが拠点となった。

出来事

  • 1999: スティーヴ・ローデン「Lowercase Sound」用語使用
  • 2001: ローデン「Forms of Paper」
  • 2002: 「Lowercase Sound」コンピレーション、12k
  • 2008: 国際的拡散の頂点

派生・影響

アンビエント、サウンドアート、現代電子音響音楽、現代の「静寂志向」音楽全般に影響を残している。

音楽的特徴

楽器微小ノイズ源、コンピュータ、フィールド録音

リズム極小ダイナミクス、長い時間構成、静寂

代表アーティスト

  • モートン・フェルドマンアメリカ合衆国 · 1950年〜1987
  • アルヴィン・ルシエアメリカ合衆国 · 1965年〜2021
  • スティーヴ・ローデンアメリカ合衆国 · 1995年〜2023
  • 中村としまる日本 · 1995年〜

代表曲

  • Crippled Symmetryモートン・フェルドマン (1983)
  • Forms of Paperスティーヴ・ローデン (2001)
  • From Behind The Gardenスティーヴ・ローデン (2003)
  • Time On A Triangleアルヴィン・ルシエ (1989)
  • Nocturnes for the Blue Hourスティーヴ・ローデン (2008)

日本との関係

日本ではオンキョー(音響)、即興、サウンドアートの文脈で受け止められた。中村としまるのノーインプット・ミキサーなど、極小音や電子的な自己発振を扱う日本の実験音楽とも相性がよい。大きな会場より、静かなギャラリーや小空間で体験されることが多い。

初めて聴くなら

入口は「Forms of Paper — スティーヴ・ローデン (2001)」。より長い静けさに耳を慣らすなら「Crippled Symmetry — モートン・フェルドマン (1983)」。音響の実験としては「Time On A Triangle — アルヴィン・ルシエ (1989)」も近い感覚で聴ける。

豆知識

ロワーケースという名前は、大文字で主張する音楽ではなく、小文字のような音に耳を寄せる態度を表している。聴く環境そのものが作品に入り込むため、静かな部屋で聴くほど印象が変わる。

影響・派生で結ばれたジャンル

ロウアーケース・ミュージックを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ合衆国 · 1998年前後 (±25年)

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