ポップ

トルコ・ポップ

Turkish Pop / Trap

トルコ / 中東・北アフリカ · 1960年〜

別名: Anadolu pop / Arabesk

トルコのAnadolu-pop(Ajda Pekkan、Sezen Aksu)から現代のTurkish trap(manifest、Ezhel)まで。Arabeskは中高年層の音楽として並行。

どんな音か

西欧ポップの構造に、アナトリアの旋律、アラベスクの泣き節、トルコ語ラップやトラップが混在する。サズ(長棹リュート)の高音、ダルブッカの跳ねるビート、シンセ・ストリングス、808ベース、そしてオートチューンを利かせたボーカルが層をなす。テンポはバラードからEDM寄りまで幅広い。トルコ語は母音の母音調和が強く、語尾が揃って韻を踏みやすいので、ラップとも歌とも相性が良い。サビでメロディが半音階で粘る独特のうねりがトルコ・ポップの指紋。

生まれた背景

オスマン帝国崩壊後の世俗化、ラジオ時代の西欧志向、1960〜70年代のアナドル・ロック(アナトリア民謡ロック)、80年代の海賊カセットで広まったアラベスク(アラブ風の哀愁ポップ)、これら全てが層をなしている。Sezen Aksuが80年代以降、トルコ・ポップの作家・プロデューサーとして産業全体を設計し、Tarkanを世界市場に押し出した。2010年代後半からはトルコトラップが急成長、Ezhel、Ceza、UZIといったラッパーが既存のポップ産業を上書きしつつある。イスタンブールはトルコ語圏全体(中央アジア、バルカン、欧州の移民コミュニティ)の音楽ハブ。

聴きどころ

メロディの半音階的なうねりと、サビでの語尾の伸ばし方に注目。これがトルコポップの旋律的指紋で、アラブ・ポップとはまた違うアクセントがある。リズム面では、ダルブッカやベンディール(フレームドラム)の不均等な拍が4/4の隙間に入り込むパターンが多い。Tarkanの『Şımarık』(通称キスソング)の口笛のフックは、その典型例。トラップ寄りの楽曲でも、サビになると突然アラベスク歌唱が顔を出すことが多く、その切り替えがトルコ・ポップ独特の快感。

代表アーティスト

  • Sezen Aksuトルコ · 1975年〜
  • Tarkanトルコ · 1992年〜
  • Ezhelトルコ · 2017年〜

代表曲

日本との関係

Tarkanの『Şımarık』は1999年に世界的にヒットし、日本でもクラブやレストランで流れた記憶を持つ人がいる。続いてMustafa Sandalの『Aya Benzer』も一部のリスナーに知られた。アニメ『進撃の巨人』のオープニング『紅蓮の弓矢』をトルコ系アレンジャーがリミックスしたバージョンがYouTubeで広まったり、逆に日本の和楽器とトルコ伝統楽器のフュージョン作品も少数ながら存在する。新大久保のケバブ店、東京・中野のトルコ料理店ではTurkish Popが日常的に流れている。

初めて聴くなら

Tarkanの『Şımarık』、これは世界共通の入り口。続いてSezen Aksuの『Hadi Bakalım』、80年代の名曲で、トルコ・ポップの母とも呼ばれる彼女の声を体験できる。新世代からはmanifestの楽曲(トルコ語ラップ・コレクティブ)、もしくはEzhelの『Geceler』、トラップアラベスクの現在地が分かる。深夜のドライブか、ケバブを焼きながらの台所が似合う。

豆知識

Tarkanの『Şımarık』は世界中で勝手にリミックスされ、ホリー・ヴァランスが英語カバー『Kiss Kiss』として2002年に全英1位を取った。元曲の作詞作曲者であるトルコ側にロイヤリティが入る形だが、英語圏では原曲がトルコのものだと知らない人も多い。またSezen Aksuは2022年、創世記の人物を歌詞で揶揄したとして宗教保守派から脅迫を受け、コンサートを一時中止する事態に。ポップ歌手が国家論争の中心に置かれる、それがトルコの音楽の重さを物語っている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1950年代1960年代2000年代トルコ・ポップトルコ・ポップポップポップトラップトラップ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
トルコ・ポップを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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トルコ · 1960年前後 (±25年)

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