バングラ・ロック
1970年代末〜80年代のダッカで生まれた、ベンガル語で歌われるロック。LRB・Warfaze・Miles を軸に世代を継ぐ。
まずはここから
ひとことで言うと1970年代末〜80年代のダッカで生まれた、ベンガル語で歌われるロック。LRB・Warfaze・Miles を軸に世代を継ぐ。
まずはこの曲からAyub Bachchu — Cholo Bodle Jai ▶ YouTube
代表的な人Kumar Bishwajit
どんな音か
バングラ・ロックは、ベンガル語で歌われるロックの総体で、1970年代末〜80年代のダッカが独自に育てたバンド文化を指す。中心はブルース/ハードロック寄りの LRB(Love Runs Blind、Ayub Bachchu 率いる4人組)、プログレッシヴ/ヘヴィメタル寄りの Warfaze(散調y 率いる)、ソフトロック/ポップロック寄りの Miles(Hamin & Shafin Ahmed 兄弟)、パンク/ハードコア寄りの Aurthohin(Sumon Kaisar)と Nemesis(Zohad Reza Chowdhury)、そしてゴシック/プログレメタル寄りの Artcell、フォーク・ロック寄りの Chirkutt(Sharmeen Sultana Sumi)に分けられる。編成はエレキギター+ベース+ドラム+ボーカルの4-5人組が基本、キーボードを加える編成もある。歌詞はベンガル語で、恋愛だけでなく1971年独立戦争の記憶、1980年代の Hussain Muhammad Ershad 軍政(1982-90)への抵抗、都市の疎外感を扱う。同時期のバングラ・ポップ(Runa Laila、Sabina Yasmin 世代)がバラード中心だったのに対し、ギターの歪みと歌詞の政治性で明確に別軸を作った。
聴きどころ
Ayub Bachchu のギター・トーンを追いかけてほしい。彼は Fender Stratocaster を Marshall JCM800 で歪ませ、ワウペダルを踏まない直接的なブルース・ロックのソロを、ベンガル語のバラード詞に載せる型を作った。『Sei Tumi』の間奏部での彼のギター・ソロは、Eric Clapton の『Wonderful Tonight』的なメロディック・フレーズをベンガル民謡(バウル)の音階に近づけたもので、これがバングラ・ロックのギターの手本になった。Warfaze『Ekti Chele』はプログ・ロック的な変拍子(5/4→4/4→7/8)を活用したロング・トラックで、散調y のツイン・ギター・ハーモニーは Iron Maiden の『Hallowed Be Thy Name』的な構造を持つ。Miles『Firey Elam』はキーボード主体のポップロックで、当時のバンド・シーンで最も洗練されたスタジオ・プロダクションを持っていた。Chirkutt『Kanamachi』は女性ボーカル Sumi の声で、バウル民謡の旋律をロックのビートに乗せる新世代の型を示した。
初めて聴くなら
最初は LRB『Sei Tumi』、Ayub Bachchu のギターとバラード詞の完成形。続いて『Ferari Mon』、バングラ・ロック最大のヒット。硬派サイドを聴きたいなら Warfaze『Ekti Chele』、ポップ・サイドは Miles『Firey Elam』。新世代の女性ボーカルを聴きたいなら Chirkutt『Kanamachi』、これは Coke Studio Bangla 経由でも再演されている。夜、部屋を暗くしてスピーカーで聴くのが向いている。
代表アーティスト
- Kumar Bishwajit
- Ayub Bachchu
- Miles
もっと見る(あと7件)
- Warfaze
- James
- LRB (Love Runs Blind)
- Aurthohin
- Artcell
- Nemesis
- Chirkutt
代表曲
- Ayub Bachchu — Cholo Bodle Jai (1988)
- Warfaze — Ekti Chele (1994)
- LRB (Love Runs Blind) — Ghumonto Shohore (1994)
もっと見る(あと10件)
- LRB (Love Runs Blind) — Sei Tumi (1994)
- LRB (Love Runs Blind) — Ferari Mon (1996)
- Miles — Prothom Prem (1997)
- Warfaze — Boshe Achi (1998)
- Aurthohin — Trimatrik (1998)
- James — Baba (2000)
- Artcell — Onno Shomoy (2002)
- Nemesis — Kobe (2005)
- Nemesis — Onneshon (2005)
- Miles — Firey Elam (1996)
生まれた背景
起点は1977年の Souls(当時 Feedback から分派)と1978年の Feedback、そして1979年結成の Miles だが、いずれも1980年代前半までは英語カバー・バンドだった。決定打は1991年の LRB 結成で、Ayub Bachchu(1962-2018、チッタゴン生)が Souls を離れて自らのバンドを立ち上げた瞬間だった。
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彼は少年期からチッタゴンで Deep Purple、Jimi Hendrix、Eric Clapton を聴きながらギターを覚え、1980年代前半にダッカのライブハウス Solaz でキャリアを始めた。1992年の1st アルバム『LRB』と同年『LRB 2』はセットで発売され、当時のバングラデシュ音楽産業では前例のない「ダブル・アルバム」形式でシーンを刷新した。1994年『Ghumonto Shohore』(眠る街)、1996年『Ferari Mon』(逃亡する心)でバングラ・ロックの頂点を刻んだ。同時期に1984年結成の Warfaze が Iron Maiden 譲りのツイン・ギター・ハーモニーで硬派メタルを持ち込み、1988年結成の Miles がキーボード主体のポップロックで最も広い層に届いた。
音楽的特徴の詳細
楽器エレキギター、エレキベース、ドラム、キーボード、時にタブラやハルモニウム、ボーカル
リズムスタンダードなロックの4/4、パワーバラードの3/4、ヘヴィメタル系の変拍子、時にベンガル民謡由来の6/8
発展
1990年代後半以降、Souls の元メンバー James(Faruq Mahfuz Anam、1964-)が Nagar Baul を結成し、粗い声質と土着的な旋律で「バングラ・ロックの Kurt Cobain」的な地位を占めた。2000年代には Aurthohin(Sumon Kaisar 率いる)、Nemesis(2001結成、Zohad Reza Chowdhury)、Artcell(1999結成、プログレメタル)、Chirkutt(2002結成、女性ボーカル Sharmeen Sultana Sumi)が層を厚くした。決定的な喪失は2018年10月18日、Ayub Bachchu の心臓発作による突然死(56歳)で、ダッカの Chandrima Udyan で行われた告別式には数十万人が集まった。この日はバングラデシュのロック史における1970年代米国のエルヴィス死去に匹敵する国民的追悼の日として記憶されている。
出来事
- 1977: Souls / Feedback 結成、ダッカのバンド文化開始
- 1991: LRB 結成
- 1995: LRB『Ferari Mon』
- 2002: Chirkutt 結成、女性ボーカル・ロックが定着
- 2005: Nemesis『Kobe』ヒット
- 2018: Ayub Bachchu 死去(10月18日)
派生・影響
バングラ・ポップと兄弟関係。ロック全般の地域的変種(regional_variant of rock)。バングラ・ヒップホップにも Aurthohin 系列のパンク精神が引き継がれている。
その後の代表曲
- James — Guru Ghor Banailay Ki Diya (2006)
- Chirkutt — Kanamachi (2011)
- Chirkutt — Jaadur Shohor (2013)
日本との関係
バングラ・ロックと日本の直接の交流は薄いが、間接的な影響はいくつか記録されている。Ayub Bachchu が Deep Purple の1975年武道館ライブのブートレグに憧れたことを公言、その影響で LRB のライブ構成にツイン・ギター・ソロ・セクションを常設した。2018年10月18日の Ayub Bachchu 死去は日本の在日バングラデシュ人コミュニティでも報じられ、東京・大久保のバングラデシュ料理店では追悼のミュージック・ナイトが開かれた。近年、東京・立川のバングラデシュ人コミュニティが Uttara ベンガl Association を通じて年1回バングラ・ロックのカバー・ライブを開催している。日本の音楽ジャーナリズムでバングラ・ロックが本格的に紹介される機会はまだ少なく、YouTube と Spotify 経由の個別発見が主要なアクセス経路だ。
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
系譜図を見る
感触が近い系譜も地域も違うのに、聴くと通じるジャンル
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