ラテン・カリブ

MPB

Música Popular Brasileira

ブラジル / 南米 · 1966年〜

1960年代以降のブラジルで、Bossa Novaの後を受けた洗練された大衆音楽の総称。

どんな音か

MPB(ブラジル大衆音楽)」の略。BPM 80〜130。アコースティック・ギター、ピアノ、ベース、ドラム、ホーンセクション、サンバ系打楽器(タンボリン、パンデイロ)が基本。歌は男女両方、語りに近い親密なトーンで歌い、メロディは口ずさみやすい。歌詞はポルトガル語、テーマは恋愛、社会批判、ブラジルの自然・街・歴史、政治、内省。録音は1970年代のスタジオ感を残しつつ、現代ものはクリアで洗練されている。

生まれた背景

1960年代半ばのブラジルボサノヴァの後継として成立。1965年の「TV Excelsiorのフェスティバル」で、Elis Regina、Jair Rodrigues、Edu Loboが台頭。Caetano Veloso、Gilberto Gil、Chico Buarque、Milton Nascimento、Tom Jobim、Maria Bethânia、Gal Costa、Joyce、Djavanらが1970年代に黄金期を作る。1964〜85年の軍事政権下では、政治批判の歌が検閲され、多くのアーティストが投獄・亡命を経験した。1980年代以降はDjavan、Marisa Monte、Caetano Veloso、Chico Buarqueが世代を超えて活動を継続している。

聴きどころ

ボサノヴァよりリズムは複雑、サンバの打楽器が控えめに加わる。ヴォーカルは大声を出さず、囁くような感情表現。歌詞のポルトガル語の韻律が音楽の重要な要素で、訳詞では失われるニュアンスが多い。Gilberto Gilのリズム感、Chico Buarqueの文学的歌詞、Milton Nascimentoの宗教的高揚感、それぞれ違う魅力。

代表アーティスト

  • Elis Reginaブラジル · 1959年〜1982
  • Gilberto Gilブラジル · 1962年〜
  • Caetano Velosoブラジル · 1965年〜
  • Gal Costaブラジル · 1965年〜2022
  • Chico Buarqueブラジル · 1966年〜
  • Alceu Valençaブラジル · 1972年〜
  • Lenineブラジル · 1980年〜

代表曲

日本との関係

1980年代以降、日本でMPBは熱心なファンを持つ。小野リサ、中嶋ユキノ、Lisa Onoらブラジル音楽の日本人プレイヤーが多い。Caetano VelosoとMarisa Monteは何度も来日公演を行い、日本でアルバム録音も行ってきた。Djavanの楽曲は1990年代の日本のCMで頻繁に使われた。

初めて聴くなら

1曲だけ聴くなら、Milton Nascimento『Travessia』(1967)。MPBの叙事的な深さの典型。ボサノヴァ寄りなら、Tom Jobim『Águas de Março』(1972、Elis Reginaとの共演版が至高)。最近のものなら、Caetano Veloso『Cê』(2006)、Marisa Monte『Memórias, Crônicas e Declarações de Amor』(2000)。

豆知識

1968年、Caetano VelosoとGilberto Gilが軍事政権により投獄され、1969年にロンドンへ亡命した。Gilbert Gilは2003〜08年にルーラ政権の文化大臣を務めた、世界でも珍しい「現役歌手出身の政府閣僚」。Chico Buarqueは父親が著名な歴史学者で、彼自身も小説『ブダペスト』(2003)、『ベンジャミンの愛人』(1995)で文学賞を受賞している。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1910年代1950年代1960年代MPBMPBサンバサンバボサノヴァボサノヴァトロピカリアトロピカリア凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
MPBを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

MPB の系譜全体図(多段)を見る

同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

ブラジル · 1966年前後 (±25年)

ジャンル一覧へ戻る