ポップ

バングラ・ポップ

Bangla Pop

バングラデシュ / 南アジア · 1990年〜

バングラデシュとインド西ベンガル州のベンガル語ポップ。Pritom Hasan、Tahsan Khanら。

どんな音か

ベンガル語特有の柔らかい母音と、その語感に合わせて作られたメロディアスなボーカルラインが核。リズムはミディアムテンポのバラードからR&B寄りの跳ねたビートまで幅広く、アコースティックギターと電子ドラムの組み合わせが多い。インド古典の影響でメロディが微妙にうねるが、コード進行は西洋ポップに準拠していて聴きやすい。プロダクションは年々洗練されており、近年はK-popや韓国系プロデューサー的なポリッシュ感のあるミックスも増えている。

生まれた背景

ベンガル語話者は世界で2億人以上、その大半がバングラデシュと、国境を越えたインドの西ベンガル州コルカタに住んでいる。1971年の独立戦争以来、バングラデシュは自前のポップ文化を築いてきたが、長らくインドのボリウッドの影に隠れていた。2010年代後半、ダッカ(バングラデシュ首都)の若手プロデューサーたちが、自国のフォークバウル音楽)の旋律と現代的なポップ・プロダクションを接続し始める。コルカタ側でも独自の進化が起き、両都市が緩やかに連動している。

聴きどころ

ベンガル語の歌は語尾が母音で終わることが多いので、フレーズ末が空気のように消えていく感じがある。この「フェードする旋律」がジャンルの特徴。Pritom Hasanの楽曲ではフォーク的な節回しと808ベースが共存しており、両者がぶつからないバランスに耳を傾けてほしい。歌詞は雨、川、別れ、ダッカの渋滞、コルカタの古い建物、といった土地に根ざしたモチーフが多く、意味が分からなくても情景は伝わるはず。

代表アーティスト

  • Tahsan Khanバングラデシュ · 2002年〜
  • Pritom Hasanバングラデシュ · 2013年〜
  • Tabib Mahmudバングラデシュ · 2015年〜

代表曲

日本との関係

日本では西葛西を中心に大きなバングラデシュ人コミュニティがあり、彼らのコミュニティイベントでバングラ・ポップは欠かせない。インド料理店との混同で「これもインドの音楽?」と聞かれがちだが、言語も文化も独立している。アニメや音楽産業との直接的な接点はまだ薄いものの、コルカタを舞台にした映画やドキュメンタリーが日本で公開されると、サウンドトラックに使われる形で耳にすることがある。

初めて聴くなら

Tahsan Khan『Alo』、これはバラード寄りで、夜にゆっくり聴きたい一曲。Pritom Hasan『Khoka』は明るめのポップで、家事をしながら流すのに合う。コルカタ側からはArijit Singh(厳密にはボリウッド側でも活躍)のベンガル語楽曲も入り口になる。雨の日、特に梅雨時の日本の湿度はベンガルの気候に似ていて、バングラ・ポップの空気感としっくりくる。

豆知識

バングラデシュの国民的詩人ラビンドラナート・タゴール(アジア初のノーベル文学賞作家)が作詞作曲した「ラビンドラ・ソンギート」という歌の伝統が、現代のバングラ・ポップの旋律センスの土台になっている。タゴールの曲を現代風にアレンジするのは半ば通過儀礼で、ほぼ全てのベンガル系シンガーが一度は手をつける。日本で言えば、唱歌や童謡を現代アレンジで歌うようなものだが、規模も文化的重みも比較にならないほど大きい。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1700年代1950年代1990年代バングラ・ポップバングラ・ポップバウルバウルポップポップ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
バングラ・ポップを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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