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ヒップホップ・R&B

ネオソウル

Neo-Soul

アメリカ合衆国 / 北米 · 1994年〜

1990年代に成立した、古典的Soulへの回帰とHip Hop感覚を併せ持つR&B。

どんな音か

完璧に整ったデジタルなR&Bが主流だった1990年代後半、あえて機械的な正確さを捨て、人の手が生む揺らぎを取り戻したのがネオソウルだ。伝統的なソウルヒップホップジャズを取り入れ、テンポは70〜100BPMとゆったりしている。フェンダー・ローズのエレキピアノやハモンドオルガンが温かいコードの土台を敷き、その上でドラムが拍からわずかに前後へずれて置かれる。ベースはエレキとアコースティックの両方が使われる。歌は一音を細かく揺らす技法(メリスマ)を多用しながらも、聴き手に語りかけるような親密な歌い方を保つ。歌詞は内省や自己肯定、社会へのメッセージ、恋愛の機微を行き来する。ホーンは全編を覆わず、要所にだけ差し込む。録音はヴィンテージ機材のアナログな質感を意図的に残し、すり減ったレコードのような温度をまとう。

生まれた背景

1990年代後半、ヴァージニア州リッチモンド出身のディアンジェロとエリカ・バドゥ、そして彼らを含む制作集団ソウルクァリアンズ(Soulquarians)が、この音を形づくった。ソウルクァリアンズは、ディアンジェロ、ザ・ルーツのクエストラブ、デトロイトのプロデューサーであるジェイ・ディー(のちのJ・ディラ)、キーボーディストのジェイムズ・ポイザーらが中核を成した集まりで、ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオを拠点にした。リズム面の中核を担ったのはクエストラブとJ・ディラだった(エリカ・バドゥらはのちに合流している)。マクスウェル『Urban Hang Suite』(1996)、エリカ・バドゥ『Baduizm』(1997)、ディアンジェロ『ハイチ・ヴォドゥ音楽』(2000)の三枚が代表的な名盤だ。ローリン・ヒル『The Miseducation of Lauryn Hill』(1998)は、ネオソウルと主流R&Bを近づける役割を果たしたとされる。2010年代以降は、ジャズの即興を大胆に持ち込んだロバート・グラスパーや、ファンクへ寄せたアンダーソン・パークらが、このよれたグルーヴを次の世代の語法として更新していった。

聴きどころ

まず聴いてほしいのはドラムだ。機械のように正確な位置(ジャスト)ではなく、拍からわずかに前後へずれることで、酔ったように後ろへもたれるグルーヴが生まれる。この“よれ”こそ、のちにプロデューサーのJ・ディラの名と結びつけて語られる感触だ。ヴォーカルはメリスマを使いながらも決して歌い上げず、聴き手に近い距離で歌う。コードはジャズ的なテンション(11th、13th)が多用される。

代表アーティスト

  • Lauryn Hillアメリカ合衆国 · 1988年〜
  • Erykah Baduアメリカ合衆国 · 1994年〜
  • D'Angeloアメリカ合衆国 · 1995年〜
  • Solangeアメリカ合衆国 · 2001年〜

代表曲

日本との関係

宇多田ヒカル『First Love』(1999)以降、日本のR&BシーンはNeo Soulの感覚を完全に内面化した。MISIA、平井堅、JUJU、Crystal Kay、Salyu、bird、UA、SOIL & PIMP SESSIONS、Cero、wonk、Tempalayなど、ネオソウルを下敷きにしたアーティストは多い。

初めて聴くなら

1枚だけ聴くなら、ディアンジェロ『ハイチ・ヴォドゥ音楽』(2000)。生のバンドが一体となって、重心を後ろに置いたまま転がっていく音作りが、このジャンルの核心だ。中でも「Untitled (How Does It Feel)」の長尺グルーヴは、ネオソウルが何を指すのかをそのまま教えてくれる。続けて、ムーブメントの中心となったエリカ・バドゥ『Baduizm』(1997)、マクスウェル『Urban Hang Suite』(1996)。ぐっと最近の手触りが欲しければ、アンダーソン・パーク『Malibu』(2016)が、このグルーヴをファンク寄りに更新した姿を聴かせてくれる。

豆知識

ネオソウル」はもともと音楽用語ではなく、宣伝のための造語だった。エリカ・バドゥやディアンジェロを手がけ、のちにモータウン・レコード社長(1997〜2004年在任)となるマネージャー、ケダー・マッセンバーグ(Kedar Massenburg)が、1990年代後半(おおむね1997年頃)に、ディアンジェロとエリカ・バドゥを中心とする同種のアーティスト群を一つのムーブメントとして売り出すために作った。皮肉なことに、当事者であるエリカ・バドゥらはこの呼称をあまり好まない。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1950年代1970年代1990年代2010年代ネオソウルネオソウルソウルソウルヒップホップヒップホップUKソウルUKソウル凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ネオソウルを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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アメリカ合衆国 · 1994年前後 (±25年)