ガムラン
ジャワ・バリの青銅打楽器を中心とするインドネシアの宮廷・儀礼アンサンブル音楽。
どんな音か
インドネシア・ジャワ島・バリ島の伝統打楽器合奏。20〜30人の奏者が演奏する。中心となるのは青銅のゴング類とメタロフォン(鉄琴に似た金属の打楽器)で、これにケンダン(両面太鼓)、ルバブ(弓奏の弦楽器)、スリン(竹笛)、男女合唱が加わる。太鼓のケンダンがテンポを導き、ルバブやスリンが旋律を彩る。調律体系は「スレンドロ(5音音階)」「ペロッグ(7音音階)」の二系統が中心で、いずれも西洋音階とは異なる独自の音律をもつ。1曲の長さは5〜30分で、同じパターンを繰り返しながら徐々に変化していく循環する構造が曲の土台になっている。
生まれた背景
聴きどころ
大ゴング(ゴング・アグン)の腹に響く低音が数小節おきに最も長い周期を区切り、小さなゴングがその内側をさらに分割する。こうしてゴング類が時間を入れ子状に区切る仕組みを「コロトミー」と呼ぶ。その骨格の上で、複数のメタロフォンが同じ基本旋律(バルンガン)を、それぞれ違う速さや装飾で重ねていく。同じ旋律を少しずつ違えて幾重にも重ねるこの手法を「ヘテロフォニー」と呼ぶ。ケンダン(太鼓)が指揮者の役割を果たす。ジャワ・ガムランは沈むように遅く瞑想的で、バリのゴング・クビャールは全奏が一斉に切り替わる断片的な疾走感をもつ。
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- I Wayan Lotring
- Lou Harrison
- Ki Nartosabdho
代表曲
- Ketawang Puspawarna (1850)
- Bubaran Hudan Mas (1900)
- Gending Sriwijaya (1962)
- La Koro Sutro — Lou Harrison (1972)
Kotaro (gamelan) (1980)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
ドビュッシーは1889年のパリ万博でジャワのガムランを聴き、その音楽は「言葉にできない微妙な陰影まで、あらゆるニュアンスを含んでいた」と評したと伝えられる。1895年、詩人ピエール・ルイス宛の手紙では、ジャワの対位法——複数の旋律を絡ませる書法——に比べれば、ルネサンスの巨匠パレストリーナの対位法も児戯に等しく見える、とまで書いている。代表作『版画』(1903)の第1曲「塔(パゴード)」は、このとき聴いた響きと構造から着想を得たとされる。ミニマリズムのスティーヴ・ライヒは、複数のパートが噛み合って一つの連続体を生むバリ・ガムランのインターロック(相互嵌合)構造に惹かれ、『18人の音楽家のための音楽』などにその発想を取り込んだ。もっとも、彼の代名詞である「位相をずらす(フェイズ)」手法——同じ旋律を少しずつズラして重ねる技法——そのものは、ガムランより前のテープループ実験から生まれている。
