散調
韓国の独奏器楽形式。緩から急へ加速する組曲構成。
どんな音か
散調はゆっくりから始まる。チンヤン(진양)と呼ばれる最も遅いテンポの楽章では、一つの音が十数秒引き伸ばされることもある。奏者はその中で微分音的な音程のゆれ(シムシム)と、弦をこする圧力の変化による音色の揺れを駆使する。次第に楽章が替わるにつれてテンポが上がり、最終楽章のフィナーレでは手が追えないほど速くなる。伽倻琴(カヤグム)、海琴(ヘグム)、大笒(テグム)など楽器ごとに流派があり、流派によってリズムの割り方と音のこね方が異なる。
生まれた背景
聴きどころ
「伽倻琴散調 — 黄秉冀 (1974)」は楽章の切り替わりに注目して聴く。最初の楽章でいかに時間がゆっくり流れているかを感じ、次の楽章で地に足がついてくる感覚、そして後半に向かって速くなるにつれて音楽の重力が変わる経緯を追う。弦をひっかく音と音の間の、わずかな沈黙の質感も散調の一部だ。
発展
20世紀には沈相健・成錦鳶らがカヤグム散調の流派を確立し、テグム散調(朴鍾基流)・コムンゴ散調(韓甲得流)などが体系化された。1960年代以降、各散調が重要無形文化財に指定され、伝承体制が整った。
出来事
- 1890年代: 金昌祖によるカヤグム散調創始。
- 1968年: コムンゴ散調が重要無形文化財指定。
- 1980年代: 黄秉冀ら現代散調作品。
- 2000年代: 各散調流派が国際的に演奏される。
- 2018年: アジェン散調が無形文化財指定。
派生・影響
韓国創作国楽の主要なフォーマットとなり、現代カヤグム独奏曲・協奏曲(ファン・ビョンギ『沈香舞』など)の母体となった。
音楽的特徴
楽器カヤグム(伽耶琴)、コムンゴ、テグム、ピリ、ヘグム、アジェン、チャング
リズム六大長短(チンヤンジョからフィモリへ)、即興的変奏、加速する組曲構成
代表アーティスト
- 黄秉冀
代表曲
伽倻琴散調 — 黄秉冀 (1974)
日本との関係
初めて聴くなら
「伽倻琴散調 — 黄秉冀 (1974)」の全曲(20〜30分)を通して聴く。途中で早送りしたくなるかもしれないが、前半のゆっくりした楽章を経ないと後半のカタルシスが弱まる。全体を体験してこそ「散調」の設計思想がわかる。
