ハードロック
1960年代末に成立した、歪ませたエレキギターと強いビートを特徴とするロック。
どんな音か
ロックを重く歪ませた音楽だ。エレキギターのディストーション(音の歪み)を強くかけ、リフを楽曲の中心に据える。テンポは中速から速め(BPM90〜140)。ドラムは細かく叩き込む“フィル(おかず)”で場面を盛り上げ、ベースはギターのリフと同じ動きを重ねて厚みを出す。ボーカルこそハードロックの決め手だ。ロバート・プラント(レッド・ツェッペリン)、スティーヴン・タイラー(エアロスミス)、デヴィッド・カヴァデール(ホワイトスネイク)らがその代表だ。裏返る寸前まで高音を張り上げる力強い歌い方が定番だ。歌詞が扱うのはバンド生活、女性、車、自由、そして誇張された栄光と退廃。録音の傾向も時代で分かれ、1970年代は部屋の自然な響きを生かした音、1980年代はすき間を埋め尽くす分厚いギターの壁を狙った音作りが主流になった。同じハードロックでも、70年代盤と80年代盤では音の手触りがまるで違う。
生まれた背景
1968年前後、イギリスのレッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ブラック・サバスの3バンドが、ブルース・ロックをより重くしたスタイルを並行して確立した。同じ頃、アメリカ合衆国でもステッペンウルフ、グランド・ファンク・レイルロードが似た方向へ進み、マウンテンが1970年前後に続いた。1970年代を通じて、派手なメイクとショーのKISS、リフ一発で押し切るAC/DC、エアロスミス、クイーンらが商業的ピークを迎える。1980年代後半にはLAのサンセット・ストリップ・シーンがモトリー・クルーやガンズ・アンド・ローゼズを生み、東海岸ではボン・ジョヴィがアリーナ規模で台頭した。1990年代以降はオルタナティブ・ロックやグランジに主役の座を譲るが、ハードロック自体は今も演奏され続けている。ハードロックとヘヴィーメタルの境界はもともと曖昧で、レッド・ツェッペリンやブラック・サバスのようなバンドは、語る人によってどちらにも分類される。
聴きどころ
まず、ギターのリフがどれだけ口ずさめるかに注目したい。『アイアン・マン(Iron Man)』『バック・イン・ブラック(Back in Black)』『ヒア・アイ・ゴー・アゲイン(Here I Go Again)』のように、メロディとして覚えられるリフほど名リフとされる。ボーカルの高音域も聴きどころで、出るか出ないかの瀬戸際を張り上げる緊張感がドラマを生む。ドラムも見せ場で、ジョン・ボーナムが『ホエン・ザ・レヴィ・ブレイクス(When the Levee Breaks)』で叩く重く遅い冒頭のグルーヴ——階段の吹き抜けの自然な残響をそのまま録ったビート——は、後のヒップホップでも数えきれないほどサンプリングされ、このジャンルで最も真似されたドラムの一つだ。ライブで観ると、観客が頭を激しく振り、こぶしを突き上げ、サビを大合唱する——その一体感そのものがハードロックの魅力だと体感できる。
代表アーティスト
- Deep Purple
- Led Zeppelin
- Queen
- AC/DC
代表曲
- Whole Lotta Love — Led Zeppelin (1969)
- Black Dog — Led Zeppelin (1971)
- Smoke on the Water — Deep Purple (1972)
- Highway to Hell — AC/DC (1979)
- Back in Black — AC/DC (1980)
日本との関係
初めて聴くなら
1曲なら、レッド・ツェッペリン『ホール・ロッタ・ラヴ(Whole Lotta Love)』(1969)。アルバムなら、ディープ・パープル『マシン・ヘッド(Machine Head)』(1972)で、『スモーク・オン・ザ・ウォーター(Smoke on the Water)』『ハイウェイ・スター(Highway Star)』など代表曲が並ぶ。1980年代を1枚なら、ガンズ・アンド・ローゼズ『アペタイト・フォー・ディストラクション(Appetite for Destruction)』(1987)。
豆知識
ディープ・パープルの『スモーク・オン・ザ・ウォーター(Smoke on the Water)』は、スイスのモントルーで実際に起きたカジノ火災を題材にした曲だ。1971年12月4日、フランク・ザッパ・アンド・ザ・マザーズ・オブ・インヴェンションの公演中、観客が放った信号弾(フレアガン)が籐張りの天井に引火し、会場は全焼した。バンドは新作の録音のため現地に滞在中で、近くのホテルから火事を眺め、煙がレマン湖の水面を覆っていくのを見ていた——曲名はこの情景から生まれた。あの伝説のギター・リフは、ギタリストのリッチー・ブラックモアが事件の数日後に作ったもの。本人はのちに、あの4音はベートーヴェンの交響曲第5番『運命』の有名な出だしの音を逆さまにしたものだと語っている——ただし半ば冗談・後付けの解釈とも認めている。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ロック・メタルプログレッシブロック
- ロック・メタルスペースロック
- エレクトロニックフリー・インプロヴィゼーション
- エレクトロニックアンビエント
- エレクトロニック新複雑性
- エレクトロニックインダストリアル
- ロック・メタルニューウェーブ
- ロック・メタルポストパンク
