ポップ
P-POP
Philippine Pop / Idol
フィリピン / 東南アジア · 2018年〜
フィリピンのアイドル系ポップ。SB19、BINI、BGYOらがK-popフォーマットを土着化させた。
どんな音か
P-POPはOPMの中でも、特にK-POPの制作モデル(オーディション、トレーニー期間、振付重視のMV、ファンダム経済)をフィリピン語と英語のミックスに移植したアイドル・ポップを指す。BPM110〜130のシンセポップやファンク寄りのダンストラックが中心で、サビでフォーメーションが綺麗に決まることを前提にトラックが構造化されている。声はOPMより整音され、低音域の押し出しが強い男性ボーイズグループはR&B寄り、ガールズグループはきらびやかなEDMポップ寄りという棲み分けがはっきりしている。
生まれた背景
2018年にSB19がShow BTという韓国系プロダクションからデビューしたのが事実上の起点で、これがフィリピンに「K-POP方式のローカル・アイドル」を持ち込んだ。続いてStar Magic(ABS-CBN系)のBINI/BGYO、2024年デビューのHORIといった次世代が出てきて、シーンが層を成すようになる。決定的な事件は2024年のSB19のPhilippine Arena 2夜連続ソールドアウト(5万5千席×2)で、これはアジア人グループとしても異例の規模だった。OPMが「個人と内省」の音楽だとすれば、P-POPは「群れと祝祭」の音楽で、両者はライバルというより車輪の両側として共存している。
聴きどころ
K-POPのコピーに聞こえないか、を判別する耳の置き所はリリックだ。P-POPはタガログ語と英語のスイッチを意図的に多用し、サビで「Mahal kita(愛してる)」のようなタガログのフックを置く曲が多い。SB19の『MAPA(地図)』は親への感謝を歌った曲で、こういう題材選びがK-POPと明確に違う。プロダクションはK-POPに比べると低音のミックスがやや甘めだが、その分ボーカルが前に出るので、メンバーごとの声質を聴き分ける楽しさは強い。BINIの『Pantropiko』のような明るく南国的なファンク・ポップは、振付込みでフィリピンの夏祭り感が出る。
代表アーティスト
- SB19フィリピン · 2018年〜
- BGYOフィリピン · 2021年〜
- BINIフィリピン · 2021年〜
日本との関係
K-POPファンの一部が「次の鉱脈」としてP-POPに流れ込んでいて、SB19は2023年に日本ツアーを成功させている。AKB48グループのフィリピン版MNL48(2018〜2024)が日本との直接の橋渡しになっていたが、こちらは事実上活動休止で、いまはSB19/BINIの方が日本の若年層に届きやすい。フィリピンは日本のアニメ消費が非常に多い国なので、P-POPのMVにJ-POP的なメロディ運びやアニメOPっぽい構成が混じることがあり、日本のリスナーの耳に違和感が少ない。
初めて聴くなら
入門にはSB19『Gento』、フィリピンの民族楽器サンプルとモダンなR&B/ヒップホップを混ぜたバンガーで、SB19の現在地が一発で分かる。明るい気分ならBINI『Pantropiko』、夏のドライブに最適だ。じっくり聴きたいならSB19『MAPA』、家族をテーマにしたバラードで、P-POPがアイドル枠を超えてOPM的な情緒に接続する瞬間が味わえる。
豆知識
Philippine Arenaはブラカン州にある世界最大規模の屋内ドーム(公称収容5万5千人)で、Iglesia ni Cristoという独立系キリスト教会が建てた施設だ。ここを2夜連続で埋めたSB19は、フィリピン人アーティストとして史上初。P-POPの「P」はPhilippine/Pinoy(フィリピン人の意の親称)両方を含意していて、自称としては「Pinoy Pop」と書くファンも多い。BINIはStar Hunt Academyというトレーニー機関を経て2021年デビュー、Star Magic(フィリピン最大の芸能事務所)の戦略商品として動いている。
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