伝統・民族

ファド

Fado

リスボン / ポルトガル / 南欧 · 1820年〜

19世紀のリスボンで成立した、サウダーデ(郷愁)を歌うポルトガルの伝統歌曲。

どんな音か

ポルトガルの伝統的歌謡。BPM 60〜100のゆったり。ポルトガルギター(12弦のスチール弦ギター、リード旋律担当)、クラシック・ギター(伴奏)、ベース・ギター時々。歌は男女両方、深く力強い声で「サウダージ(郷愁、憂愁)」を歌う。歌詞はポルトガル語、テーマは恋愛、別れ、海、リスボンの街、運命、貧困、移民の郷愁。録音は歌い手の声を最前面に置き、伴奏は控えめ。

生まれた背景

19世紀前半のリスボン下町(アルファマ、モウラリア、バイロ・アルト)で成立。当初は娼婦・船乗り・労働者の酒場の歌で、上流階級から「下品」と嫌われた。20世紀前半にAmália Rodrigues(1920〜99、「Fadoの女王」)が世界化を実現し、ポルトガルのナショナル・サウンドとして定着した。1974年のカーネーション革命(独裁政権崩壊)後、Fadoは独裁との関連で一時人気が下がったが、1990年代以降にMariza、Camané、Mísia、Carminhoらが「新世代Fado」として再生。現在もリスボンの「Casa de Fado」(Fadoを聴く酒場)で毎晩演奏されている。

聴きどころ

ポルトガルギター(12弦)の独特の倍音(高音域がきらきら鳴る)とフレージング。歌い手の「サウダージ」表現: 力強い高音、感情の絞り出し、ヴィブラート。「Fado Maior」(伝統的な定型詩のFado)と「Fado Canção」(歌曲としてのFado)の2系統。

音楽的特徴

楽器ポルトガルギター、クラシックギター、声

代表アーティスト

  • Amália Rodriguesポルトガル · 1939年〜1999
  • Carlos do Carmoポルトガル · 1963年〜2021
  • Marizaポルトガル · 2001年〜

代表曲

日本との関係

1990年代後半以降、Marizaらが日本でも知名度を獲得。ファドのCDは日本のクラシック・ジャズ系レコード店で常に一定の存在感を持つ。坂本龍一、伊賀拓郎などがFado的感性を取り入れた作品を残している。

初めて聴くなら

古典なら、Amália Rodrigues『The Art of Amália』(コンピレーション)。Fadoの世界的代表。Mariza『Fado em Mim』(2001)、Camané『Esta Coisa da Alma』(2000)。映画『リスボン物語』(1994、ヴィム・ヴェンダース監督)のサウンドトラック(Madredeus)もポルトガル音楽の入口として良い。

豆知識

「Fado」はラテン語の「fatum(運命)」が語源。「人生は変えられない、その悲しみを歌う」という哲学が音楽の根幹。2011年にユネスコ無形文化遺産に登録された。Amália Rodriguesは1999年に79歳で死去した時、ポルトガル政府は3日間の国民的喪に服した(歌手として異例の処遇)。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1820年代1850年代1880年代ファドファドモルナモルナクロンチョンクロンチョン凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ファドを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

ポルトガル · 1820年前後 (±25年)

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