ファド
19世紀のリスボンで成立した、サウダーデ(郷愁)を歌うポルトガルの伝統歌曲。
どんな音か
生まれた背景
19世紀前半のリスボン下町(アルファマ、モウラリア、バイロ・アルト)で成立。当初は娼婦・船乗り・労働者の酒場の歌で、上流階級から「下品」と嫌われた。20世紀前半にAmália Rodrigues(1920〜99、「Fadoの女王」)が世界化を実現し、ポルトガルのナショナル・サウンドとして定着した。1974年のカーネーション革命(独裁政権崩壊)後、Fadoは独裁との関連で一時人気が下がったが、1990年代以降にMariza、Camané、Mísia、Carminhoらが「新世代Fado」として再生。現在もリスボンの「Casa de Fado」(Fadoを聴く酒場)で毎晩演奏されている。
聴きどころ
ポルトガルギター(12弦)の独特の倍音(高音域がきらきら鳴る)とフレージング。歌い手の「サウダージ」表現: 力強い高音、感情の絞り出し、ヴィブラート。「Fado Maior」(伝統的な定型詩のFado)と「Fado Canção」(歌曲としてのFado)の2系統。
音楽的特徴
楽器ポルトガルギター、クラシックギター、声
代表アーティスト
- Amália Rodrigues
- Carlos do Carmo
- Mariza
代表曲
- Barco Negro — Amália Rodrigues (1955)
- Coimbra — Amália Rodrigues (1956)
- Lisboa Menina e Moça — Carlos do Carmo (1976)
- Lágrima — Amália Rodrigues (1983)
- Ó Gente da Minha Terra — Mariza (2001)
日本との関係
初めて聴くなら
古典なら、Amália Rodrigues『The Art of Amália』(コンピレーション)。Fadoの世界的代表。Mariza『Fado em Mim』(2001)、Camané『Esta Coisa da Alma』(2000)。映画『リスボン物語』(1994、ヴィム・ヴェンダース監督)のサウンドトラック(Madredeus)もポルトガル音楽の入口として良い。
豆知識
「Fado」はラテン語の「fatum(運命)」が語源。「人生は変えられない、その悲しみを歌う」という哲学が音楽の根幹。2011年にユネスコ無形文化遺産に登録された。Amália Rodriguesは1999年に79歳で死去した時、ポルトガル政府は3日間の国民的喪に服した(歌手として異例の処遇)。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 伝統・民族カンテ・アレンテジャーノ
