パキスタン
Pakistan
南アジア
パキスタンのSpotifyチャートはほぼ完全に国内勢で占められ、海外ヒットがほとんど入り込まない珍しい市場だ。いまその中心にあるのは、カラチやラホールの寝室から立ち上がる新しい肌触りのポップ — ウルドゥー語のインディーポップと、声の近いベッドルームポップ(自宅で一人録音する内省的なポップ)である。この流れを作ったのが、自宅録音のサウンドで一気に支持を広げたHasan Raheemら新世代だ。Abdul HannanやTalha Anjumらとともに、彼らの音楽はいま若者の定番になりつつある。かつて若者の定番の座にあったのは、古典とポップを融合させたサウンドで知られるCoke Studio パキスタンだ。その人気が新世代に移ったいまも、Coke Studio自体は依然として国民的な存在で、「Pasoori」(2022年)はいまも聴かれ続けるロングヒットだ。年配層では、スーフィーの宗教歌カッワーリーや古典歌謡のガザルがなお生きている。
自国アーティストの人気曲
Khasara / 損失 — Abdul Hannan ft. Samar Jafri · 2025Spotifyパキスタン首位の人気曲。失恋を「損失」と捉えて受け入れる、繊細な弾き語り系インディーポップ。
海外アーティストの人気曲
世代・地域・経済による違い
若者世代、とくに都市部のカラチ・ラホールでは、ウルドゥー語のインディーポップとパキスタンのラップが主流だ。ラップの中心はYoung Stunners(Talha AnjumとTalhah Yunusのラップデュオ)で、その後ろに新顔が次々と続く。年配層や地方では、いまもガザルやカッワーリーが日々の音楽として根を張り、その背骨にあるのが世界に名を知られた歌い手Nusrat Fateh Ali Khanの遺産だ。世代差は深いが、それを束ねるのがCoke Studioで、その年の新曲が数か月後の家族の集まりで自然と流れることも多い。そして、このチャートを動かすもう一つの力が国外にある。イギリスや湾岸諸国で暮らす在外パキスタン人(ディアスポラ)の再生数は無視できず、その規模は、レーベルがどの曲を売り出すかを左右するほどなのだ。
