ブルース
アフリカ系アメリカ人の労働歌や霊歌を背景に、19世紀末のアメリカ南部で生まれた音楽。
どんな音か
ブルースの骨格は2本だ。1本は「12小節進行(I-IV-V)」、つまり3つの基本的な和音をぐるぐる繰り返す型。もう1本は「ブルーノート」と呼ばれる音づかいである。明るく聞こえる音階(長音階)の3番目と7番目の音を、本来よりわずかに下げる。時にはさらに5番目の音も半音下げて(これを♭5と呼ぶ)、全体にうなるような哀感のある響きを生む。歌い方は語りに近い。一つの言葉をいくつもの音をすべるように渡って引き伸ばしたり、うなるような裏声を交えたり、ふっと笑い声のように声を切ったりする。ギターはチョーキングとビブラートで音を泣かせる。編成はアコースティック/エレキギター、ハーモニカ、ピアノ、ベース、ドラムが基本で、ギタリストが歌も兼ねることが多い。BPMは60前後の遅いものから、100を超えるジャンプ・ブルースまで幅がある。録音はあえて荒っぽく仕上げられる。アンプを歪ませ、部屋の雑音もそのまま残し、ギターの生々しい質感を優先するのが好まれた。
生まれた背景
19世紀末から20世紀初頭、アメリカ合衆国南部・ミシシッピ・デルタの綿花プランテーション。アフリカに起源を持つ労働歌(ワーク・ソング)、畑での叫び(フィールド・ハラー)、教会の霊歌(スピリチュアル)。奴隷解放後も貧困と差別のなかで生きる黒人労働者は、これらを土台に、一人がギターを抱えて歌う弾き語りの形へとまとめていった。1920年代には女性歌手のマミー・スミス、ベッシー・スミスが録音で「クラシック・ブルース」を商業化する。1930年代には、チャーリー・パットン、サン・ハウスら戦前の弾き語りギタリストが、パラマウントなどのレコード会社のSP盤(初期の蓄音機用レコード)に名演を残した。なかでもロバート・ジョンソンは、わずか29曲の録音だけで後世のギタリストたちの教科書になった。のちの世代がこの29曲を一音一音コピーして学んだのだ。第二次大戦後、多くの黒人労働者が職を求めて北部へ移り住んだ。その移住先のシカゴで、マディ・ウォーターズやハウリン・ウルフはチェス・レコードのもとブルースをエレキギター中心の音へと作り変えた。これがシカゴ・ブルースだ。その音がそのままロックンロールへ、そして後のロックへと流れ込んだ。現在のポピュラー音楽のギター語法の多くは、ここから枝分かれしている。
聴きどころ
12小節の同じパターンが何度も繰り返される。その反復のなかで、歌い手と楽器がリズムをどう「ずらす」かに注目したい。ギターの1音にどれだけ表情を付けるか、歌のフレーズの最後を伸ばすときのビブラートの揺れ、ハーモニカが息を吸う音(ドロー)と吐く音(ブロー)を交互に使い、舌と喉で音程を曲げていく――こうした細部に耳を澄ませたい。完璧な演奏ではなく、わざと「外す」「遅らせる」「強く突っ込む」ことで人間味を出すのが流儀だ。
音楽的特徴
楽器ギター、ハーモニカ、ピアノ、声
リズム12小節進行、シャッフル、ブルーノート
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- Robert Johnson
- Muddy Waters
- John Lee Hooker
- B.B. King
- Howlin' Wolf
代表曲
- Cross Road Blues — Robert Johnson (1936)
- Sweet Home Chicago — Robert Johnson (1937)
- Hoochie Coochie Man — Muddy Waters (1954)
- Mannish Boy — Muddy Waters (1955)
- Smokestack Lightning — Howlin' Wolf (1956)
- Boom Boom — John Lee Hooker (1962)
- The Thrill Is Gone — B.B. King (1969)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- 宗教・霊歌ゴスペル
- ブルース・カントリーケイジャン音楽
- 伝統・民族ハワイアン・ファルセット
- 宗教・霊歌ペヨーテ・ソング(先住民教会聖歌)
- 宗教・霊歌ペンテコステ礼拝音楽
- 宗教・霊歌サザン・ゴスペル
- ポップハパハオレ
