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ポップ

Q-POP

Q-pop

アルマトイ / アスタナ / カザフスタン / 中央アジア · 2015年〜

別名: Qazaq Pop / Kazakh Pop / Kazakhstani K-Pop / カザフ・ポップ

2015年 NINETY ONE デビュー以降、カザフスタンで K-Pop の育成システムとダンス・ヴォーカル書法をカザフ語に適用したポップ産業。Q は Qazaq(カザフ)の頭文字。Ziruza、Ally、MADINA、Say Mo、Alem。

どんな音か

Q-POP の音は、K-Pop を聴き慣れた耳には最初『言語だけ違う K-Pop』と感じられるかもしれない。それは半分正しい。技術的な骨組み——K-Pop の EDM 系プロダクション、シンコペートしたシンセ・ドロップ、ヒップホップ・ヴァースの挿入、そしてダンス・コレオグラフィと歌唱の統合——は共有される。しかし言語は決定的に違う。NINETY ONE《MEN EMES》(2018) を聴くと、カザフ語の母音調和(muyi undestik、母音の連続する調和)が K-Pop の朝鮮語音節構造とは異なる長い母音の伸ばしを作り、伝統的なカザフ・キュイの旋律断片が dombra(2弦琴)のサンプルとして4小節ループに挿入される。Ziruza《Bir Bala》(2017) では女性ソロのメロディック・ポップ側が、Say Mo《Big Time》(2018) では女性ラッパーがロシア語+カザフ語のコード・スイッチで、それぞれ K-Pop の型を超えた独自路線を提示する。名称『Q』は Qazaq(現代カザフ語ラテン文字表記の『カザフ』)の頭字語で、K-Pop の『Korean』に対する『Kazakh』の意識的な位置づけを示す。

生まれた背景

決定的な起点は2015年5月、アルマトイの Juz Entertainment(Yerbolat Bedelkhan 主宰)がオーディションで選抜した5名の少年からなるボーイズグループ NINETY ONE がシングル《Aiyptama》でデビューしたことだ。グループ名の『91』は1991年のカザフスタン独立年に由来する。彼らは K-Pop の育成システムを明示的に参考にし、韓国の SMTOWN・YG・JYP のダンス・ヴォーカル書法をカザフ語で実演することで、K-Pop に憧れる若いカザフ人リスナーに直接届いた。デビュー当時は保守派からの反発(『男性的でない』『民族的でない』といった批判)もあったが、2016年《Qaimoqta》のヒットで国内シェアを固め、以降 Q-POP 産業全体の基盤を作った。

聴きどころ

第一に、カザフ語の音節構造。母音調和が K-Pop の朝鮮語とは異なる長い母音の連続を作り、行末で母音を伸ばす歌唱様式が独特。第二に、dombra(2弦琴)、sıbızğı(縦笛)、qıl-qobız(擦弦楽器)などのカザフ伝統楽器のサンプル・ループが4-8小節単位で断片的に挿入される点。これは伝統音楽 kazakh-kui との明示的な対比項として機能する。第三に、ロシア語混入の歌詞。特に Say Mo・Alem のソロ路線では、カザフ語+ロシア語のコード・スイッチが日常的で、これは2020年代のカザフスタン若年層のリアルな言語生活を反映している。第四に、K-Pop 型のダンス・コレオグラフィが音楽と統合されて設計される点。第五に、2019年のカザフ語ラテン文字化政策と連動した文化政策的な位置づけ——ソ連時代のロシアポップ支配からの言語的独立の象徴として機能している。

発展

2016-20年、NINETY ONE は《Bayau》(2016)、《MEN EMES》(2018)、《DARN》(2018)で国内チャート首位を独占、同時期に女性ソロ Ziruza(1995-)が《Bir Bala》(2017)でメロディック・ポップ側、Ally(1997-)が《Ay-A》(2018)でバラード側を担った。2018年、女性ラッパー Say Mo(1993-)が《Big Time》で登場し、カザフ女性ヒップホップの起点となった。2019年、Juz Entertainment はガールズグループ MADINA(2017年結成の4人組)を本格化、《Erke Qız》(2019)で K-Pop 型ガールズ・グループ・フォーマットをカザフに定着させた。NINETY ONE の Alem(1993-、本名 Alem Kozhakhmet)は2021年ソロ・キャリアに転向、《Qara》(2021)、《Aq Bayterek》(2023)でトラップ寄りのソロ路線を開拓した。2022年、カザフスタンで開催された 1月抗議事件以降、Q-POP は政治的中立を保ちつつ産業として拡大を続けている。

出来事

  • 2015/05: NINETY ONE《Aiyptama》デビュー
  • 2016: NINETY ONE《Bayau》国内首位
  • 2017: MADINA 結成、Ziruza《Bir Bala》
  • 2018: Say Mo《Big Time》女性ヒップホップ起点、NINETY ONE《MEN EMES》
  • 2019: MADINA《Erke Qız》
  • 2021: Alem ソロ転向《Qara》
  • 2022: 1月抗議事件、Q-POP は政治的中立維持
  • 2023: Alem《Aq Bayterek》

派生・影響

k-pop(modernized_from、K-Pop の育成システムのカザフ語版)、pop(regional_variant)、trap(influenced、Say Mo・Alem のソロを通じて)、kazakh-kui(sibling、伝統音楽側の対極)、ロシア・ラップとも兄弟。

音楽的特徴

楽器K-Pop 系 EDM プロダクション(シンセ・パッド、808 bass、TR-909 系スネア)、カザフ伝統楽器のサンプル(dombra、sıbızğı、qıl-qobız)、AutoTune、時にロシア・トラップ由来のダーク・シンセ

リズムK-Pop の 100-130 BPM 主流拍節、4/4 の EDM/trap ハイブリッド、カザフ語の音節構造(母音調和)に合わせた行末の音節伸ばし

代表アーティスト

  • Ziruzaカザフスタン · 2013年〜
  • Allyカザフスタン · 2014年〜
  • NINETY ONEカザフスタン · 2015年〜
  • MADINAカザフスタン · 2017年〜
  • Say Moカザフスタン · 2018年〜

代表曲

その後の代表曲

日本との関係

日本のリスナーにとって Q-POP は、まだ広く認知されていないニッチ・ジャンルだが、K-Pop に慣れた層にとっては『K-Pop の姉妹現象』として発見される。2020年代前半、YouTube と Spotify を通じて NINETY ONE と MADINA が日本の K-Pop リスナーの一部に届き、Twitter/X 上で『Q-POP』のハッシュタグが定着し始めた。日本国内のカザフスタン系コミュニティは数百人規模で小さく、大使館主催のカザフスタン文化週間などで Q-POP アーティストの映像上映が行われる程度。ただし2020年代半ば以降、中央アジア文化全般への関心が日本でも高まっており(カザフ人俳優 Kuralbek Serikbayev の映画出演等)、Q-POP はその文脈で徐々に発見される位置にある。

初めて聴くなら

まず NINETY ONE《MEN EMES》(2018) から。Q-POP の書法(K-Pop 系 EDM+カザフ語+dombra サンプル)を最も分かりやすく体験できる代表作。次に《Aiyptama》(2015) で2015年デビュー時の起点作、《Bayau》(2016) で国内首位獲得作を聴く。Ziruza《Bir Bala》(2017) で女性ソロのメロディック・ポップ側、Say Mo《Big Time》(2018) でカザフ女性ヒップホップの起点、MADINA《Erke Qız》(2019) で K-Pop 型女性グループ・ポップの起点、Alem《Qara》(2021) で元 NINETY ONE メンバーのソロ・トラップ路線を並列に聴き比べると、Q-POP の分岐した多様性が見える。

豆知識

NINETY ONE のグループ名『91』は1991年カザフスタン独立年に由来するが、実はメンバー全員が1991年以降生まれというわけではなく、これは『新しいカザフスタンの独立世代』を象徴する記号として選ばれた名前だ。デビュー当時、地方の保守的な視聴者から『男性的でない』『民族的でない』といった強い批判があり、2015年後半にはアクトベ・ウラルスクなど地方都市の公演がキャンセルされる騒動もあった。もう一つ:カザフスタン政府は2019年から2025年にかけて、カザフ語の表記をキリル文字からラテン文字に段階的に移行する政策を進めており、Q-POP はこの言語政策と連動する形で『Q』の頭字語を積極的に採用している。NINETY ONE 以降の Q-POP アーティストは公式表記で意識的にラテン文字の『Q』を用いる。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1800年代2010年代Q-POPQ-POPカザフ・キュイカザフ・キュイ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
Q-POPを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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