民謡
日本各地で歌い継がれてきた地域固有の伝統的民衆歌謡。
どんな音か
日本全国、地域ごとに異なる旋法と歌詞。農作業のリズムに同期した歌、漁師が海で歌う歌、祭りで若者が唱う歌——各々の生活場面から自然発生した音楽。歌い手は地声で、方言の抑揚をそのまま音楽化している。簡易な太鼓や三味線が伴奏することもあるが、しばしば人声だけで成立する。
生まれた背景
日本各地で江戸時代から明治時代にかけて民間で継承されてきた歌謡。戦後、民謡研究者たちが『文化財として保護すべき音楽』と認識し、全国各地での採譜と記録が進む。1950年代から1960年代にはNHKなどを通じた全国放送で『民謡ブーム』が形成され、地方の伝統が同時に国民共有の文化として再定義された。
聴きどころ
標準的な日本語(NHK標準語)とは異なる方言の音韻を、まず楽しむこと。その地方の言葉のリズムが、そのまま曲の旋律になっていることに気づくと、『なぜこの曲はこの形なのか』の答えが言語そのものに隠れていることが分かる。また、歌唱者の個性——高音が得意な者、低音が得意な者——による解釈の違いを比較すると、『標準的な民謡』は存在せず、常に演者による再創造が起こっていることに気づく。
発展
1920年代以降、ラジオ・レコードで民謡が大衆化し、民謡歌手という職業が成立した。戦後には民謡ブームが起き、尺八・三味線の名手が共演する舞台様式が確立。1980年代以降は民謡酒場・全国民謡大会・若手継承者育成が制度化された。
出来事
- 江戸期: 各地民謡の定型化。
- 1920年代: ラジオ放送による全国流通。
- 1950年代: 民謡ブーム。
- 1979年: 文化庁による全国民謡調査の本格化。
- 2000年代: 若手民謡歌手の現代化。
派生・影響
演歌・歌謡曲・新民謡の母体となり、津軽じょんがら節などは津軽三味線の独立した芸能を生んだ。盆踊り歌は現代の盆踊りポップにも継承される。
音楽的特徴
楽器三味線、尺八、篠笛、太鼓、鳴物、声
リズム地域別の音階(田舎節・都節・律音階)、自由拍と定拍の混在、囃子詞
日本との関係
日本文化の中核の一つ。NHK『民謡番組』は数十年続く長寿番組で、今も毎週全国放送されている。各都道府県、さらには各市町村に『代表民謡』があり、運動会や学園祭で子どもたちが歌う。一方、高度経済成長期の都市化により、地方の若者が民謡から離れるという現象も同時に起こっており、保護と継承は常に課題である。
