OPM
フィリピンの自国産ポップの総称。バンド系(Cup of Joe、Ben&Ben)、シンガーソングライター系(Moira Dela Torre)が中心。
どんな音か
生まれた背景
OPMという言葉は1970年代、フィリピンが「自分たちの言葉で歌うポップ」を意識的に立ち上げようとした文化運動から生まれた。当時はAOR/フォーク寄りのRey Valeraらが中心だったが、2010年代後半にBen&BenがYouTubeから国民的バンドに育ち、フォーク・ポップ的なOPMが復権する。決定的だったのは2024年〜25年のCup of Joe『Multo(亡霊)』現象だ。フィリピン・スポティファイで27週連続1位、史上最多の5億1300万ストリーム超を記録し、長期ヒットの記録を全部書き換えた。経済的に不安定なまま海外出稼ぎ世代を抱える社会で、「会いたい人に会えない」感情を歌うOPMが、文字通り国民歌になっている。
聴きどころ
代表アーティスト
- Ben&Ben
- Moira Dela Torre
- Cup of Joe
代表曲
- Kathang Isip — Ben&Ben (2017)
- Tagpuan — Moira Dela Torre (2018)
- Multo — Cup of Joe (2024)
日本との関係
初めて聴くなら
まずCup of Joe『Multo』。深夜にひとりで聴くタイプの曲で、3拍子の揺れに身を委ねるのが正しい入り方だ。次にBen&Ben『Kathang Isip』、アコギと多声コーラスの厚みを存分に味わえる。Moira Dela Torre『Tagpuan』はバラードの王道で、ピアノとストリングスだけで押し切る潔さが分かる。3曲聴けば現代OPMの輪郭がほぼ掴める。
豆知識
『Multo』はタガログ語で亡霊・幽霊の意。Cup of Joeはバギオ市出身の6人組で、メジャー資本に頼らずFlying Lugawという小規模レーベルから出した曲が世界記録級のロングヒットになったのが象徴的だ。フィリピンは英語が事実上の第二公用語なので英語で歌っても通じるのに、わざわざタガログで歌うこと自体がOPMの政治性で、これは1970年代の言語ナショナリズム運動の遺産でもある。海外出稼ぎ労働者(OFW)が約220万人いる国で、母語で歌うバラードは「故郷の音」として機能している。
