ウイグル十二ムカーム
新疆ウイグル自治区の、12の組曲からなる古典音楽体系。
どんな音か
12の組曲それぞれが異なるマカーム(モード)を持ち、前奏・序唱・本歌・間奏曲という段階を踏む。ウード的な弦楽器と打楽器が、細かく装飾された長いメロディラインを支える。音程は半音単位で微調整され、西洋音階とは異なる響き。
生まれた背景
新疆ウイグル自治区。シルクロードの交差点で、ペルシャ・アラビア古典音楽とウイグル民族音楽が融合。15世紀ごろに現在の12曲の組成が成立したと伝えられている。宮廷・神聖な場所・民間の三層で継承された。
聴きどころ
各組曲の最初の瞬間の旋律フレーズ。弦楽器タールのビブラート。打楽器の微妙なタイミング。歌声の装飾音(タキスィーム的即興要素)。組曲内での速度・感情の段階的変化。
発展
20世紀前半に伝承の危機を迎えたが、1950年代に民族音楽家トゥルディ・アーホンの口述から600時間の録音と楽譜化が行われ、復元された。新疆芸術団・ムカーム研究所が継承を担い、2005年のユネスコ登録で国際的に知られた。
出来事
- 16世紀: アマンニサ妃による整理(伝)。
- 1951年: トゥルディ・アーホン録音事業。
- 1980年: 新疆ムカーム研究所設立。
- 2005年: ユネスコ「人類の口承及び無形遺産の傑作」宣言。
- 2008年: 12ムカーム全曲録音完成。
派生・影響
中央アジア各地のマカーム(ウズベキスタン・タジキスタンのシャシュマカーム)と並ぶイスラム圏古典音楽の一翼を担う。現代ウイグル民族音楽創作の母体でもある。
音楽的特徴
楽器サタール、ラワプ、ドゥタール、タンブール、ダップ、ガーニチャ、声
リズムムカーム旋法、複雑な拍子(7/8、9/8など)、組曲構成
代表アーティスト
- トゥルディ・アーホン
代表曲
十二ムカーム第一・ラク — トゥルディ・アーホン (1956)
日本との関係
日本の民族音楽研究者にはよく知られているが、一般的な知名度は非常に低い。中国伝統音楽の一種として、わずかなCD リリースがある。NHK『世界音紀行』などのドキュメンタリーで紹介されたことはあるが、定着していない。
初めて聴くなら
トゥルディ・アーホンの『十二ムカーム第一・ラク』(1956年)。最初の弦楽器の緩やかなフレーズを聴くところから。静かな夜間に聴くと、遠い砂漠の音が聴こえてくるような気分になる。
豆知識
2008年、ウイグル十二ムカームはユネスコ無形文化遺産に登録された。各組曲は数十分から1時間を要し、全12組を演奏するのに8時間以上かかる。トゥルディ・アーホン(1935-2015)は20世紀最大の継承者。
