ポップ
20世紀後半に成立した、商業的・親しみやすさを重視する英語圏中心の大衆音楽の総称。
どんな音か
ポップとは、つまるところその時代に最も多く聴かれた音楽そのものだ。主役はボーカルで、曲の中心は繰り返されるサビにある。テンポは1分間に100〜130拍が主流で、4拍子のドラムは比較的シンプル、ベースとシンセやギターが和音の流れを支え、コーラスやハーモニーが重ねられる。曲の長さは3〜4分。典型的にはイントロ、Aメロ、Bメロ、サビと進み、終盤ではいったん楽器を減らした静かなパート(ブリッジ)をはさみ、そこから最大のサビへ一気に盛り上がる。音はていねいに磨かれ、歌詞の一語一語までくっきり前に出る。歌詞のテーマは恋愛、別れ、ダンス、自分を肯定する気持ちなど、誰にでも当てはまる普遍的なものが多い。
生まれた背景
「Popular Music」を縮めた言葉で、1950年代のアメリカ合衆国・イギリスでラジオやチャート文化と一緒に確立した。エルヴィス・プレスリー、ビートルズ、マイケル・ジャクソン、マドンナ、テイラー・スウィフト——時代ごとの最大のスターが、ソロもグループも入り混じりながら、そのまま「ポップ」を書き換えてきた。歌手の裏では、壁のように音を重ねたフィル・スペクター(1960年代)、『Thriller』を作ったクインシー・ジョーンズ(1980年代)、サビの設計図を量産するマックス・マーティン(1990年代後半〜現在)といったプロデューサーが、実際の音色を決めてきた。クインシー・ジョーンズはマイケル・ジャクソン『Thriller』で、ファンク、ロック、バラードを一枚に同居させ、ポップが何でも飲み込めることを示した。誰がチャートの頂点に立つかで、ポップの響きそのものが変わる。
聴きどころ
最初のサビが来るまでの速さ(今のポップはたいてい45秒以内に到達する)、耳に残る短いフレーズ=「フック」がどこに出るか、ボーカルとコーラスの隙間がどう埋められているか、強いビートがどこで意図的にずらされ抜かれるか。聴くときはこのあたりに耳を向けてほしい。サビのあとに置かれる「ポストコーラス」(『ウォーオー』のような歌詞のない掛け声の部分)にも注目したい。短い動画に切り出されやすい、歌わないフックだ。聞き流せばただの流行歌。だが構造を追うと、どの音も計算して置かれているのが見えてくる。
代表アーティスト
- Bee Gees
- Michael Jackson
- ABBA
- Madonna
- Ace of Base
- Mariah Carey
- Beyoncé
- The Weeknd
- Billie Eilish
代表曲
- Dancing Queen — ABBA (1976)
- Thriller — Michael Jackson (1982)
- Like a Prayer — Madonna (1989)
- Bad Guy — Billie Eilish (2019)
- Billie Jean — Michael Jackson (1982)
日本との関係
初めて聴くなら
まず21世紀ポップの最大公約数を1曲選ぶなら、Taylor Swift『Shake It Off』(2014)。マックス・マーティンの典型的なサビ構造が3分に詰まっている。20世紀の到達点は、Michael Jackson『Billie Jean』(1983、アルバム『Thriller』からのシングル)。コード進行をシンプルに保ち、低音のベースのリフが曲全体を主導している。現在のポップなら、Olivia Rodrigo『drivers license』(2021)。ポップの定石は、テンポの速い曲で勝負することだ。だが彼女はそれを外し、ピアノと囁き声のバラードで世界中のチャートの頂点(Billboard Global 200で8週連続1位)に立った。
