スウェディッシュ・ポップ
スウェーデン発の英語ポップ。ABBA、Roxette、Robyn、Tove Lo等。Max Martin系作家陣が世界ポップを支える「裏の輸出産業」も。
どんな音か
スウェディッシュ・ポップは、スウェーデン発の英語ポップ全般を指す広い呼び名だ。BPMは100〜120のミディアム〜アップが中心で、サビの直前で半拍ためてからフックを叩き込む「Max Martin式」の譜割りが世界標準になっている。冷たく整理されたシンセ、極端に音数を絞ったヴァース、それを一気に開放するサビという構造は、ABBAから連綿と受け継がれてきた。Roxetteのアリーナ用ロック、Robynの孤独感漂うエレポップ、Tove Loのざらついた声のエレクトロポップまで、どれも「メロディが一発で覚えられる」設計思想で共通する。録音は乾いていて、ボーカルのピッチは曇りなく、北欧の冬の光のような澄んだ質感がある。
生まれた背景
出発点は1974年のABBAによるユーロビジョン優勝『Waterloo』だ。北欧の小国スウェーデンがいきなり世界ポップの最前線に出た瞬間で、その後、ストックホルムのスタジオCheiron Studios(1990年代)がBackstreet Boys、Britney Spears、'N Syncを次々に手掛け、Max MartinとDenniz Popが「スウェーデン式ポップ製造ライン」を確立した。背景には、教育課程に組み込まれた音楽学校制度(kommunal musikskola)と、英語教育の徹底がある。子どもの頃から無料で楽器を習い、英語で歌うことに違和感がない世代が大量に育ったことが、後の世界ポップ覇権の土台になった。
聴きどころ
Max Martin系の楽曲には、サビ直前の「リフトオフ」と呼ばれる定型がある。ヴァースで一度下げたコードを、プリコーラスで半音ずつ持ち上げ、サビで一気にトニックに着地する設計だ。ABBA『Dancing Queen』からThe Weeknd『Blinding Lights』まで同じ骨格を持つので、聴き比べると見えてくる。次にメロディの繰り返し数で、スウェディッシュ・ポップは同じフレーズを3〜4回反復してから次に進むことを恐れない。Robyn『Dancing On My Own』のサビは、ほぼ同じ4小節を繰り返すだけで世界中の人が踊れる構造になっている。
代表アーティスト
- Loreen
- Veronica Maggio
- Miriam Bryant
代表曲
- Jag kommer — Veronica Maggio (2011)
- Black Car — Miriam Bryant (2013)
- Tattoo — Loreen (2023)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
スウェーデンは音楽輸出額で長年世界3位以内に入る「裏輸出産業国」だ。表に出るのは歌手だが、裏では作曲家・プロデューサーが世界中のアーティストに楽曲を売っている。Max Martin(本名Karl Martin Sandberg)はBillboard Hot 100の1位獲得作曲家ランキングでビートルズに次ぐ2位、ポール・マッカートニー以上の記録を持つ。日本人の耳に届いているポップソングの半分以上に、ストックホルム郊外のスタジオが関わっている可能性すらある。もうひとつの豆知識として、スウェーデンは違法ダウンロード問題への対抗策として2008年にSpotifyを生み、その仕組みが今のストリーミング世界全体の標準になった。「ポップを売る」だけでなく「ポップの届け方」までスウェーデン製だ。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ロック・メタルメロディック・デスメタル
