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ジャズ

クールジャズ

Cool Jazz

アメリカ合衆国 / 北米 · 1949年〜

1940年代末〜50年代に成立した、抑制された音色と編曲を重視するジャズ。

どんな音か

ビバップが速くて熱いとすれば、クールジャズは感情を抑えた静かな対極にある。テンポはおおむね中速以下、BPM90〜130あたりに収まる。サックス・トランペット・ピアノ・ベース・ドラムというコンボ編成が基本だが、代表的な録音ではフレンチホルン・チューバ・バリトンサックスなどを加え、低音域を厚くしたアンサンブルが特徴になる。音量は控えめで、一つひとつの音を長く伸ばして歌うように吹き、ヴィブラート(声を揺らす震わせ方)を抑える。和声は西洋クラシック寄りで、対位法(複数の旋律が独立に動く書き方)を意識した編曲が多い。当時の録音はむしろ乾いて親密な響きが特徴で、後のジャズで耳にする深い残響を期待すると、その素っ気なさに驚くかもしれない。

生まれた背景

クールジャズの「原点」とされるのが、1949〜50年にマイルス・デイビスが9人編成(ノネット)で吹き込み、1957年に『バース・オブ・ザ・クール(The Birth of the Cool)』として編まれた一連の録音だ。編曲はギル・エヴァンス、ジェリー・マリガン、ジョン・ルイス、ジョン・カリシらが手がけ、フレンチホルンやチューバを含む厚い管アンサンブルが、この音楽の輪郭を決めた。ここから「冷たさ」は二つの方向に枝分かれする。西海岸では軽やかに大衆的に。マリガンとチェット・ベイカーのピアノレス・カルテットが軽い対位法で人気を集め、デイヴ・ブルーベック・カルテットのアルトサックス奏者ポール・デズモンドが乾いた音色でその顔になった。デズモンド作曲の「Take Five」(アルバム『Time Out』1959年収録)は、1961年にシングルとしてジャズ屈指の大ヒットになる。こうした西海岸の流れは「ウェスト・コースト・ジャズ」として広がり、ショーティ・ロジャーズやアート・ペッパーらロサンゼルス勢、レスター・ヤング系列の軽い音色を持つテナー奏者スタン・ゲッツも並走した。東海岸では知的にストイックに。レニー・トリスターノ門下のリー・コニッツ、ウォーン・マーシュが、ヴィブラートを排した直線的な旋律を、いっそう構築的に突き詰めた。ジョン・ルイス率いるモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)は、室内楽風のジャズ(チェンバー・ジャズ)の路線を40年にわたり貫いた。1960年代以降は、ビル・エヴァンスのピアノ・トリオや、ドイツのレコード会社ECM系のヨーロッパ勢が、「クール」の持つ間(ま)と響きを受け継いだ。

聴きどころ

まず「無いもの」を聴いてほしい。ビバップを覆っていた休みない速い音符が消え、音と音のあいだに余白が生まれる。ヴィブラートの少ないストレートな音色も特徴だ。チェット・ベイカーのトランペットは、ごく弱い音(ピアニッシモ)でささやくように歌う。アンサンブルが重要で、ソロイスト一人が目立つビバップと違い、複数の管楽器が織物のように絡む。ピアノは余白を多用し、和音をひとつ置いては休符を取る。

音楽的特徴

楽器サックス、トランペット、ピアノ、ベース、ドラム

リズム抑制されたテンポ、リラックスしたフレージング

代表アーティスト

  • Dave Brubeckアメリカ合衆国 · 1940年〜2012
  • Stan Getzアメリカ合衆国 · 1943年〜1991
  • Chet Bakerアメリカ合衆国 · 1946年〜1988
  • Gerry Mulliganアメリカ合衆国 · 1946年〜1996
  • Bill Evansアメリカ合衆国 · 1955年〜1980

代表曲

日本との関係

日本ではビバップハードバップより、クールやウェスト・コースト系のほうが一般受けが良い傾向がある。1950〜60年代のジャズ喫茶が「ジャズは難しい音楽」のイメージを和らげるためにビル・エヴァンスやチェット・ベイカーを多用した名残。村上春樹のエッセイで頻繁に言及されるのもこのあたり。

初めて聴くなら

まず1枚なら、Miles Davis『バース・オブ・ザ・クール(Birth of the Cool)』(1949〜50年録音、1957年盤)。9重奏のアレンジが今聴いても新しい、すべての出発点だ。最大のヒット作を聴くなら、Dave Brubeck Quartet『Time Out』(1959)。ヴォーカル入りなら、Chet Baker『Chet Baker Sings』(1954)。ピアノ・トリオへの広がりを聴くなら、Bill Evans『Sunday at the Village Vanguard』(1961)。

豆知識

「Cool」という形容詞が今の意味で広く使われるようになった背景には、1940年代のジャズ・スラング(熱くない、感情を抑えた、洗練された)がある。今の「That's cool」のクールである。この語感とよく結びつけて語られるのが、ビバップ以前のスウィング期に活躍したテナー奏者レスター・ヤングだ。彼の力みのない歌うようなプレイは、過剰な感情表現を嫌う「クール」の美学を象徴している。面白いのは、誰か一人が言い出したのではなく、ミュージシャンたちの口ぶりや吹き方そのものが、いつの間にか英語の「かっこいい」を更新してしまったことだ。「cool」という言葉自体は古くから英語にあり、その俗語化はアフリカ系アメリカ合衆国人の口語のなかで育っていった。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1940年代クールジャズクールジャズビバップビバップ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
クールジャズを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ合衆国 · 1949年前後 (±25年)