不確定性の音楽
演奏ごとに異なる結果が生まれる、極限まで開かれた作曲形式。ジョン・ケージが理論化。
どんな音か
不確定性の音楽は、演奏するたびに結果が変わるよう、作曲の一部を開いたままにする音楽。音の順序、長さ、配置、演奏者の選択、会場の偶然が作品に入り込む。ジョン・ケージの「4分33秒」では、演奏者が音を出さない時間に、客席や環境の音が作品として立ち上がる。
生まれた背景
1950年代のアメリカ合衆国実験音楽で、ケージが易経や偶然操作を用い、作曲家の意図から音を解放しようとした。モートン・フェルドマンの図形譜も、音高や時間を部分的に開くことで、演奏者の判断を作品に含めた。ヨーロッパの管理された偶然性とは違い、思想的には非意図性が大きな柱になる。
聴きどころ
完成された同じ結果を期待せず、いま鳴っている一回限りの状況を聴く。沈黙、会場の物音、演奏者の判断、楽器の偶然が作品に入る。退屈に見える時間でも、聴き手自身の集中が変わっていくことが聴きどころになる。
発展
ケージ「ミュージック・オブ・チェンジズ」(1951)、「4分33秒」(1952)、「コンサート・フォー・ピアノ・アンド・オーケストラ」(1958)が代表作。フェルドマン「プロジェクション」(図形楽譜)、ブラウン「Available Forms」、ウォルフの参加型作品が並行した。
出来事
- 1951: ケージ「ミュージック・オブ・チェンジズ」
- 1952: ケージ「4分33秒」
- 1958: ケージ「コンサート・フォー・ピアノ・アンド・オーケストラ」
- 1959: ケージ、ダルムシュタットで「不確定性」講演
派生・影響
フルクサス、即興音楽、サウンドアート、ロウアーケース・ミュージック、参加型・社会的実践音楽まで広く影響している。
音楽的特徴
楽器多様(楽器・声・電子音・行動)
リズム図形楽譜、行動指示、演奏結果の予期不可能性
代表アーティスト
- ジョン・ケージ
- モートン・フェルドマン
代表曲
- Indeterminacy — ジョン・ケージ (1959)
- 4分33秒 — ジョン・ケージ (1952)
- プロジェクション — モートン・フェルドマン (1951)
- ミュージック・オブ・チェンジズ — ジョン・ケージ (1951)
- コンサート・フォー・ピアノ・アンド・オーケストラ — ジョン・ケージ (1958)
日本との関係
初めて聴くなら
思想を体験するなら「4分33秒 — ジョン・ケージ (1952)」。偶然操作によるピアノ作品は「ミュージック・オブ・チェンジズ — ジョン・ケージ (1951)」。語りと偶然の関係に触れるなら「不確定性の音楽 — ジョン・ケージ (1959)」がよい。
豆知識
不確定性は、作曲家が何も考えないという意味ではない。どこまで決め、どこから先を演奏者や環境に渡すかを設計する。聴き手もまた、その場で何を音楽として聴くかを問われる。 ケージ以後、この考え方は音楽だけでなく、美術、舞踏、パフォーマンスにも広がり、作品と出来事の境界を揺らした。
