エレクトロニック

不確定性の音楽

Indeterminacy

ニューヨーク / アメリカ合衆国 / 北米 · 1950〜1980年

演奏ごとに異なる結果が生まれる、極限まで開かれた作曲形式。ジョン・ケージが理論化。

どんな音か

不確定性の音楽は、演奏するたびに結果が変わるよう、作曲の一部を開いたままにする音楽。音の順序、長さ、配置、演奏者の選択、会場の偶然が作品に入り込む。ジョン・ケージの「4分33秒」では、演奏者が音を出さない時間に、客席や環境の音が作品として立ち上がる。

生まれた背景

1950年代のアメリカ合衆国実験音楽で、ケージが易経や偶然操作を用い、作曲家の意図から音を解放しようとした。モートン・フェルドマンの図形譜も、音高や時間を部分的に開くことで、演奏者の判断を作品に含めた。ヨーロッパの管理された偶然性とは違い、思想的には非意図性が大きな柱になる。

聴きどころ

完成された同じ結果を期待せず、いま鳴っている一回限りの状況を聴く。沈黙、会場の物音、演奏者の判断、楽器の偶然が作品に入る。退屈に見える時間でも、聴き手自身の集中が変わっていくことが聴きどころになる。

発展

ケージ「ミュージック・オブ・チェンジズ」(1951)、「4分33秒」(1952)、「コンサート・フォー・ピアノ・アンド・オーケストラ」(1958)が代表作。フェルドマン「プロジェクション」(図形楽譜)、ブラウン「Available Forms」、ウォルフの参加型作品が並行した。

出来事

  • 1951: ケージ「ミュージック・オブ・チェンジズ」
  • 1952: ケージ「4分33秒」
  • 1958: ケージ「コンサート・フォー・ピアノ・アンド・オーケストラ」
  • 1959: ケージ、ダルムシュタットで「不確定性」講演

派生・影響

フルクサス、即興音楽、サウンドアート、ロウアーケース・ミュージック、参加型・社会的実践音楽まで広く影響している。

音楽的特徴

楽器多様(楽器・声・電子音・行動)

リズム図形楽譜、行動指示、演奏結果の予期不可能性

代表アーティスト

  • ジョン・ケージアメリカ合衆国 · 1935年〜1992
  • モートン・フェルドマンアメリカ合衆国 · 1950年〜1987

代表曲

日本との関係

日本では一柳慧、武満徹、小杉武久らの実験音楽、Fluxus、前衛芸術の文脈で大きな影響を受けた。ケージの来日は日本の作曲家や美術家にも刺激を与え、音楽と行為、沈黙、環境音の境界を考えるきっかけになった。

初めて聴くなら

思想を体験するなら「4分33秒 — ジョン・ケージ (1952)」。偶然操作によるピアノ作品は「ミュージック・オブ・チェンジズ — ジョン・ケージ (1951)」。語りと偶然の関係に触れるなら「不確定性の音楽 — ジョン・ケージ (1959)」がよい。

豆知識

不確定性は、作曲家が何も考えないという意味ではない。どこまで決め、どこから先を演奏者や環境に渡すかを設計する。聴き手もまた、その場で何を音楽として聴くかを問われる。 ケージ以後、この考え方は音楽だけでなく、美術、舞踏、パフォーマンスにも広がり、作品と出来事の境界を揺らした。

影響・派生で結ばれたジャンル

不確定性の音楽を中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ合衆国 · 1950年前後 (±25年)

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