ブルーグラス
1940年代に米国アパラチア地方で成立した、超絶技巧の弦楽器アンサンブルを特徴とする音楽。
どんな音か
オールド・タイム/カントリーから派生した米国南部のアコースティック音楽である(ブルースやゴスペルの影響も色濃い)。基本は弦楽器中心の編成で、マンドリン、5弦バンジョー、フィドル(バイオリンの俗称)、ギター、ウッドベース、それにドブロ(金属の共鳴板で音を増幅するギター)が加わる。電気楽器を使わないのが原則だ。テンポは1分間に120〜180拍と速く、全体が駆け抜けるように進む。歌は、主旋律を歌う男性ボーカルの上に高音のテナーを重ねるハーモニーが核になる。演奏では各楽器の奏者が順番に即興ソロを取り合う、ジャズに近い形をとる。歌詞の題材は山あいの暮らし、信仰、別れ、そして旅立ちの象徴である列車など。アパラチアの硬く張りつめた高音の歌い回しは「ハイ・ロンサム・サウンド(high lonesome sound)」と呼ばれる。
生まれた背景
1938年、ケンタッキー州出身のビル・モンロー(マンドリン奏者)がブルー・グラス・ボーイズを結成し、翌1939年にグランド・オール・オープリーへ出演して全国に名を知られた。彼は伝統音楽(オールド・タイム)を高速化・即興化していく。1945年末、バンジョー奏者アール・スクラッグスが3本の指で弾く独特の奏法を持ち込んで加入し、現在まで続くブルーグラスの基本編成が固まった。1948年、スクラッグスがギタリストのレスター・フラットとともにフラット&スクラッグスを結成して独立すると、ラジオの公開番組やフェスを通じて南東部一帯に広がっていった。その後も再発見の波が繰り返し訪れた——1960年代の都市フォーク・リバイバル、1990年代のアリソン・クラウス&ユニオン・ステーションの台頭、そして2000年のコーエン兄弟監督映画『オー・ブラザー、どこへ行く?』のサウンドトラック。とりわけ映画の一作は、誰もが知る古い歌を集めたサウンドトラックが大ヒットしてグラミー年間最優秀アルバムに輝き、ブルーグラスを一気に世へ送り出した。現代では、リッキー・スキャッグスやベラ・フレック(バンジョーをジャズの即興楽器へと変えた)、クリス・スィーリー(パンチ・ブラザーズ/ニッケル・クリーク。クラシックの作曲手法を持ち込んだ)ら名手が、表現をジャズや室内楽の領域にまで広げてきた。
聴きどころ
5弦バンジョーの3本指奏法(フィンガーピッキング)、マンドリンのトレモロ、フィドルの伸びる長音、そしてあの張りつめた高音(ハイ・ロンサム)。奏者が一人ずつ順番にソロを受け渡していく流れに注目すると面白さが増す。その下では、ウッドベースが各コードの根音と5度をメトロノームのように刻み続けている。
音楽的特徴
楽器バンジョー、フィドル、マンドリン、アコギ、ベース
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- Bill Monroe
- Earl Scruggs
- Alison Krauss
代表曲
- Orange Blossom Special — Bill Monroe (1942)
- Blue Moon of Kentucky — Bill Monroe (1947)
- Foggy Mountain Breakdown — Earl Scruggs (1949)
- When You Say Nothing at All — Alison Krauss (1995)
- Man of Constant Sorrow (2000)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
「ブルーグラス」はビル・モンローのバンド名「Blue Grass Boys」(出身州ケンタッキーの愛称「Blue Grass State」から)が由来。つまりジャンル名そのものがバンド名から来ている、珍しい例である。
