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ラテン・カリブ

フラメンコ

Flamenco

アンダルシア / スペイン / 西ヨーロッパ · 1780年〜

スペイン南部アンダルシア地方の、歌・踊り・ギターからなる伝統芸能。

まずはここから

ひとことで言うとスペイン南部アンダルシア地方の、歌・踊り・ギターからなる伝統芸能。

まずはこの曲からPaco de LucíaEntre Dos Aguas ▶ YouTube

代表的な人La Niña de los Peines

どんな音か

フラメンコは、アンダルシア(スペイン南部)で18世紀末から19世紀初頭に成立した、カンテ(歌)・バイレ(踊り)・トケ(ギター)の三本柱による芸術だ。全体を支える骨格が「コンパス」と呼ばれる12拍のリズム周期で、これを曲種(パロ)ごとに違う配置でアクセントを打ち直す。重く暗いソレア(soleá)、突き刺すシギリージャ(seguiriya)、跳ねる祝祭のブレリア(bulería)、軽快なタンゴス・フラメンコス、山の匂いのファンダンゴなど、パロは20以上あり、それぞれ独自の歌詞形式、リズム、感情の温度を持つ。楽器編成はナイロン弦のフラメンコ・ギター1本+パルマ(手拍子)+カンタオール(歌手)+バイラオール(踊り手)+掛け声(jaleo)が最小構成で、1977年にパコ・デ・ルシアがペルー起源のカホン(木箱型打楽器)を導入して以降、これも標準編成に加わった。和声はモード(教会旋法)寄りで、E フリギアからのアンダルシア終止 Am-G-F-E がフラメンコの音の代名詞。声質は「voz afillá(掠れた声)」が最高位に置かれ、装飾音は微分音的な揺らぎで音符の間を滑る。

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

ブレリアのコンパス · 240 BPM

聴きどころ

まず12拍のコンパスに耳を慣らしてほしい。ソレアなら「1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・12」で3, 6, 8, 10, 12にアクセント、シギリージャなら「2+2+3+3+2」の変則配置。次に、カンタオールが敢えて拍からずらして入り遅れて追いつく「タメ」の瞬間を探すこと。パコ・デ・ルシア『Entre Dos Aguas』ではラスゲアード(複数指で扇状に開く速いストローク)と、爪で隣弦にもたせかけて弾くピカードの速弾きが対比され、ゴルペ(胴打ち)がリズムを刻む三重構造が味わえる。カマロン『La Leyenda del Tiempo』はロルカ詩と電子鍵盤を乗せた歴史的転換点、Rosalía『Malamente』は12拍コンパスを808キックで刻む2020年代の翻案例だ。

初めて聴くなら

1曲だけならパコ・デ・ルシア『Entre Dos Aguas』(1973)、フラメンコ・トケが世界化した瞬間そのものだ。カンテならカマロン・デ・ラ・イスラ『La Leyenda del Tiempo』(1979)、これがフラメンコの現代性の証明。エンリケ・モレンテ『Omega』(1996) で伝統派とロックの融合を、Rosalía『El Mal Querer』(2018) で最新世代の翻案を確認できる。バイレは映像で観るジャンルなので、カルロス・サウラ+アントニオ・ガデス『血の婚礼』(1981) を1本通しで観るのが本来の入り口だ。深夜、部屋を暗くしてスピーカーで鳴らすのが正しい聴き方。

代表アーティスト

  • La Niña de los Peinesスペイン · 1902年〜1961
  • Paco de Lucíaスペイン · 1958年〜2014
  • Antonio Gadesスペイン · 1961年〜2004
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  • Manolo Sanlúcarスペイン · 1963年〜2022
  • Enrique Morenteスペイン · 1967年〜2010
  • Camarón de la Islaスペイン · 1969年〜1992
  • Tomatitoスペイン · 1976年〜
  • Sara Barasスペイン · 1988年〜
  • Vicente Amigoスペイン · 1988年〜
  • Diego el Cigalaスペイン · 1990年〜
  • Miguel Povedaスペイン · 1993年〜
  • Farruquitoスペイン · 1994年〜
  • Israel Galvánスペイン · 1994年〜
  • Niña Pastoriスペイン · 1996年〜
  • Estrella Morenteスペイン · 1998年〜
  • Rocío Molinaスペイン · 2002年〜
  • Rosalíaスペイン · 2016年〜

代表曲

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生まれた背景

フラメンコの起源は18世紀末から19世紀初頭のアンダルシア、セビーリャ・カディス・ヘレスを結ぶ三角地帯で、16世紀にインドから流入したヒターノ(ロマ)、8世紀からのモーロ人(北アフリカのイスラム系)、15世紀の再征服で改宗を強制されたセファルディ・ユダヤ系、そして土着のカスティーリャ系が交わった特異な文化圏の混交産物として生まれた。19世紀後半のカフェ・カンタンテ興隆で舞台音楽として整備され、20世紀前半にラモン・モントヤ(ギター)、ドン・アントニオ・チャコン(歌)、ラ・ニーニャ・デ・ロス・ペイネス(歌)、カルメン・アマヤ(踊り)が古典化を進めた。

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1922年、詩人ロルカと作曲家マヌエル・デ・ファリャがグラナダで開催した「カンテ・ホンド・コンクール」がカンテ・ホンド(深い歌)の正典化の起点となる。決定的な現代化は1970年代のパコ・デ・ルシアとカマロン・デ・ラ・イスラの共同録音群で、二人は1969-1977年に9枚のアルバムを共作、これらが以後の全カンタオールとギタリストの教科書になった。1980年代には Ketama、Pata Negra が「ヌエボ・フラメンコ」を提唱、ジャズロックとの融合を進めた。2010年にはUNESCOの無形文化遺産に登録された。

音楽的特徴の詳細

楽器フラメンコギター、カスタネット、手拍子(palmas)、声、靴音(zapateado)

その後の代表曲

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  • Miguel PovedaSonetos y Poemas (2013)

日本との関係

日本フラメンコ受容は世界的にも特別に深い。1963年設立の「日本フラメンコ協会」は非スペイン圏で最大級の組織で、東京・大阪・京都・名古屋にプロのタブラオが常設されている(東京・銀座「エル・フラメンコ」は1967年開店、パコ・デ・ルシアとカマロンも来演)。小松原庸子(1931-2019、日本初のプロのフラメンコ舞踊家)、鍵田真由美、片桐勝彦、沖仁(2007年 スペイン主催「首都圏カテドラル」フラメンコ・ギター・コンクール優勝)、佐藤浩希、新井英一らが世代的存在。パコ・デ・ルシアは1970年代以降ほぼ毎年来日、東京文化会館・NHKホールが定番会場だった。彼が2014年2月に亡くなった際、東京フラメンコ・タブラオ各店では追悼公演が組まれた。1994年のリバダンス以降の「ケルト・ブーム」と平行して、1990年代から「フラメンコ・ブーム」も日本で継続的に起き、映画『フラメンコ』(1995、サウラ監督)『フラメンコフラメンコ』(2010)の日本公開が節目となった。

豆知識

フラメンコ」の語源は未確定で、最有力説は「フランドル地方の人(フラメンコ)」を意味する語からの派生(16世紀の宮廷でフランドル軍人が派手な服装で「フラメンコ」と呼ばれ、それが「派手な連中」の意味に転じた説)、次に鳥のフラミンゴ(スペイン語でも フラメンコ)と同語源説、そしてアラビア語 fellah mengu(逃亡した農民)説などがある。2010年11月16日、UNESCO 無形文化遺産にフラメンコが登録された(スペインケニアコロンビアが同時提案)。

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フラメンコには男女で衣装のドレスコードがあり、女性バイラオーラの「バタ・デ・コーラ(bata de cola)」は裾に長いトレーンの付いた重いドレスで、制作費50-100万円級の一点物が主流だ。日本でこれを縫えるのは10名前後の職人しかいない。

影響・派生で結ばれたジャンル

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フラメンコを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

フラメンコ の系譜全体図(多段)を見る

感触が近い系譜も地域も違うのに、聴くと通じるジャンル

フラメンコが好きな人は、この6つも刺さる可能性が高いです。系譜図には出てこない、意外な隣人たち。

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