宗教・霊歌

ブルーグラス・ゴスペル

Bluegrass Gospel

アメリカ合衆国 / 北米 · 1945年〜

ブルーグラスの楽器編成と高音ハーモニーで歌われる、白人福音音楽様式。

どんな音か

ブルーグラス・ゴスペルは、バンジョー、マンドリン、フィドル、ギターの速い弦の響きに、高く澄んだハーモニーで信仰を歌う音楽。ソロ歌唱より家族や仲間で声を重ねる感覚が強く、The Stanley Brothersの歌では、山あいの教会や葬送の静けさが近くに感じられる。楽器は軽快でも、歌詞には死後の再会、救い、旅路の寂しさが多い。

生まれた背景

1940年代以降、アパラチア地方の白人福音歌、カントリーブルーグラスのバンド編成が結びついて広がった。教会の讃美歌をステージやラジオで歌える形にし、家族バンドや兄弟デュオのハーモニーが重要になった。Bill Monroe以後のブルーグラス文化では、ゴスペル曲はライブや録音に欠かせない柱だった。

聴きどころ

声の重なりと、楽器の細かい刻みの対比を聴くとよい。バンジョーやマンドリンが速く動いても、歌はまっすぐ言葉を届ける。特にテナーの高い声が上に乗る瞬間、祈りと山の空気が一緒に立ち上がる。速い曲より遅いゴスペルでハーモニーの切実さがよく分かる。

発展

1950-60年代のスタンレー・ブラザーズ『Angel Band』など多数の名演を経て、1970年代以降はドック・ワトソン、リカルド・スコッグスらでフォーク観客にも広まった。コーエン兄弟映画『オー・ブラザー!』(2000)サウンドトラックで世界的に再注目された。

出来事

  • 1947: ビル・モンロー『Wicked Path of Sin』録音
  • 1966: スタンレー・ブラザーズ『Cry from the Cross』
  • 2000: 『オー・ブラザー!』サウンドトラックで国際的人気

派生・影響

現代Americana、Newgrass、ロック~ゴスペル融合(ライ・クーダー、エミルー・ハリス)、Christian Bluegrassに連続する。

音楽的特徴

楽器マンドリン、バンジョー、フィドル、ギター、コントラバス、声(三~四声)

リズム速いブレイクダウン拍、ハイ・テナー、モーダル和声

代表アーティスト

  • The Stanley Brothersアメリカ合衆国 · 1946年〜1966

代表曲

日本との関係

日本ではブルーグラス愛好家、カントリー音楽、アメリカ合衆国ン・ルーツ音楽の文脈で聴かれている。一般的なゴスペルというと黒人教会の合唱を思い浮かべる人が多いが、ブルーグラス・ゴスペルは白人南部の信仰歌として別の響きを持つ。日本ブルーグラス・フェスや大学サークルでも歌われることがある。

初めて聴くなら

入口は「Angel Band — The Stanley Brothers (1955)」。別れと救いの感覚がまっすぐ伝わる。より寂しさが深い曲なら「Rank Stranger — The Stanley Brothers (1960)」。よく知られた讃美歌として「I'll Fly Away — The Stanley Brothers (1962)」も聴きやすい。

豆知識

ブルーグラス・ゴスペルでは、演奏の技巧より声の誠実さが強く聴かれることがある。高速のソロを誇るブルーグラスの中で、ゴスペル曲はバンドの信仰、家族性、共同体の記憶を示す場にもなる。

影響・派生で結ばれたジャンル

ブルーグラス・ゴスペルを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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アメリカ合衆国 · 1945年前後 (±25年)

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