宗教・霊歌

サザン・ゴスペル

Southern Gospel

アメリカ合衆国 / 北米 · 1910年〜

別名: Quartet Gospel

白人男声四重唱を中心とする、米南部発の福音音楽様式。

どんな音か

サザン・ゴスペルの基本形はテノール・リード・バリトン・バスの白人男声四重唱で、ハーモニーを緊密に重ね合わせる。バスパートが深く落ちるほど、テノールが抜けるほど、四重唱の響きは立体感を増す。ピアノがリズムを刻み、電気オルガンが和音の余韻を延ばす。ブラックウッド・ブラザーズのサウンドは、声の素直さと技術の高さが均衡している——感情を揺さぶるためではなく、信仰を真直ぐ伝えるための発声だ。ときおりジャズスウィングの影響が入り、コーラスの終わりに向かってスウィングする。

生まれた背景

サザン・ゴスペルの直接の祖先は19世紀末に広まった「シェイプノート唱法」(音符の形で階名を示す楽譜)による合唱講習会で、アメリカ合衆国南部農村の白人プロテスタント社会に根付いていた。1910〜20年代に「カルテット」形式が定着し、1926年にはジェームズ・D・ヴォーンがラジオを通じて広めた。ブラックウッド・ブラザーズは1934年にミシシッピ州で結成され、1950年代にテレビ出演で全国的な知名度を得た。エルヴィス・プレスリーが若い頃にカルテットのコンテストに応募した話は有名で、ブラックウッド・ブラザーズのサウンドがロックンロール以前のエルヴィスに影響を与えたとされる。

聴きどころ

「How Great Thou Art — The Blackwood Brothers (1957)」ではバスパートが最低音に下りるとき、他の三声がどう応答するかに注意する。四重唱のハーモニーはコードの理論通りではなく、バスが動いた後に旋律声部がその動きに「反応」する形で和声が変化する。コーラスの終わりに向かってリズムが前に進む感覚、スウィングの影響も聴き取れる。

発展

1948年に創設された『国立四重唱大会』を中心に競演文化が発達し、1960年代にはテレビ番組『ゴスペル・シング』で全国的人気を得た。エルヴィス・プレスリーもサザン・ゴスペル熱烈なファンで、自身も多数の録音を残し主流ロックンロール文化との接点となった。

出来事

  • 1910: ジェイムズ・D・ヴォーン四重唱、商業録音開始
  • 1948: ナショナル・カルテット・コンベンション設立
  • 1967: エルヴィス『How Great Thou Art』でグラミー受賞

派生・影響

1950年代ロックンロールの和声感覚やドゥーワップの音楽的祖型のひとつ。CCM、ブルーグラス・ゴスペル、現代の白人プロテスタント讃美音楽に連続する。

音楽的特徴

楽器男声四重唱(SATB再配置)、ピアノ、稀にリズムセクション

リズム長調、四声ハーモニー、ピアノ・リフ、明るい拍節

代表アーティスト

  • The Blackwood Brothersアメリカ合衆国 · 1934年〜

代表曲

日本との関係

サザン・ゴスペル日本での知名度はほとんどない。ゴスペル音楽の中では黒人教会音楽のコンテンポラリー・ゴスペルの方が日本では知られており、白人カルテットのサザン・ゴスペルは専門的なキリスト教音楽ファンの範囲内だ。

初めて聴くなら

「How Great Thou Art — The Blackwood Brothers (1957)」から始める。讃美歌として日本でも親しまれている曲なので、メロディに聴き覚えがある人が多い。その既知のメロディが四重唱でどう処理されているかを確認するのが最初の聴きどころだ。

豆知識

エルヴィス・プレスリーは少年時代にブラックウッド・ブラザーズのメンバーになりたいと申し込んだが、断られたという記録がある。後に彼がソロで録音した「How Great Thou Art」(1967年)はグラミー賞のベスト・セイクレッド・パフォーマンス部門を受賞した。サザン・ゴスペルカントリーとの接点も強く、グランド・オール・オープリー(ナッシュビルのカントリー音楽の殿堂)にカルテットが出演した記録もある。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1910年代1920年代サザン・ゴスペルサザン・ゴスペルカントリー・ゴスペルカントリー・ゴスペル凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
サザン・ゴスペルを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

アメリカ合衆国 · 1910年前後 (±25年)

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