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エレクトロニック

ドラムンベース

Drum and Bass

イギリス / 西ヨーロッパ · 1992年〜

1990年代初頭のイギリスで成立した、高速ブレイクビーツと重低音を特徴とする電子音楽。

どんな音か

たった数秒のドラム・ソロが、ジャンル全体の心臓になった——通称「エイメン・ブレイク」。1969年録音、ウィンストンズの楽曲『Amen, Brother』に含まれるドラム部分だ。ドラムンベースは1分間に160〜180拍(BPM)という速さで走る電子音楽で、その中心にあるのが「ブレイクビーツ」、つまり古いファンクジャズのドラム演奏だけを抜き出し、高速化して組み直す手法である。なかでもこの約6〜7秒の断片は、ジャンルの原型として無数の曲に刻み直されてきた。低音はサブベースとシンセ・ベースが担い、DJが次の曲へつなぎやすいよう各曲は5〜7分と長めに作られている。ヴォーカルはほぼ脇役で、ソウルジャズ由来の歌のフレーズが、ときおり差し色のように置かれるだけだ。

生まれた背景

ドラムンベースは、同じく英国発の高速ダンス音楽ジャングルから派生し、1994〜95年にかけて独立したジャンルとして姿を整えた。ジャングルが多用していたレゲエダンスホール風のボーカルを控えめにし、より滑らかな音作りとジャズ的な質感へ寄せていったのである。Goldie『Timeless』(1995)とRoni Size & Reprazentがマーキュリー賞を受賞した『New Forms』(1997)が、この時代を代表する二枚として知られる。2000年代以降は、攻撃的な「ニューロファンク」を切り開いたEd Rush & Optical、それをさらに推し進めたNoisia、ジャズ寄りの「リキッド」を広めたHigh Contrastらが活躍し、現在はコミカルな「ジャンプアップ」など多くのサブジャンルに枝分かれしている。

聴きどころ

まずはベースラインの低さと深さを、身体で味わうように聴いてみるといい。次に、キック(バスドラム)やスネア(小太鼓)の鳴る順番に注目したい。同じ1曲の中でも、その並びは曲の途中で何度も入れ替わっていく——この絶え間ないリズムの編集こそ、この音楽の体温だ。多くの曲には、ドラムとベースが一気に揃って炸裂する「ドロップ」の前に、32〜48小節ほどの長い助走がある。そこから本編がなだれ込む瞬間をつかめれば、曲の組み立てがすっと見通せるようになる。ライブでは、まるで全力で走っているかのような速いビートを、観客が身体ごと受け止める感覚を味わえる。

音楽的特徴

リズム160-180 BPM、刻まれたブレイクビーツ、重低音

リズムを聴く

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

アーメン・ブレイク · 170 BPM

代表アーティスト

  • Alex Reeceイギリス · 1992年〜
  • Goldieイギリス · 1992年〜
  • Roni Sizeイギリス · 1992年〜
  • Ed Rush & Opticalイギリス · 1996年〜
  • Pendulumオーストラリア · 2002年〜
  • Chase & Statusイギリス · 2003年〜
  • Noisiaオランダ · 2003年〜2022

代表曲

日本との関係

1990年代後半に新宿LIQUIDROOM、芝浦GOLDなどでD&Bパーティが定着。日本人プロデューサーでは、Makoto(リキッド系)、PaulSGなどがイギリスレーベルから定期的にリリース。Boom Boom Satellitesは初期にD&Bを取り入れていた。

初めて聴くなら

まず一曲なら、Goldie『Inner City Life』(1994)——ソウルの歌声と高速ビートが同居する、ジャンルの名刺がわりの曲だ。ジャズ寄りの「リキッド」を知るなら、LTJ Bukem『Music』(1993)、滑らかなシンセと深いベースが心地よい。攻撃的な「ニューロファンク」なら、Noisia『Machine Gun』(2010)が音の硬さの極北を聴かせてくれる。日本の作り手では、Makoto『Believe in My Soul』が、ソウルジャズの温かみを高速ビートに溶かし込んでいる。

豆知識

「Amen Break」(約6〜7秒のドラム・ソロ)は、正確な集計こそ無いものの、史上もっとも多くサンプリングされたドラムブレイクの一つとされ、推定で数万曲に使われたと言われる。それでいて、あのドラムを実際に叩いた原曲のドラマー、グレゴリー・コールマン(ウィンストンズ)は2006年にホームレス同然の困窮のうちに死去し、サンプリングの印税を生涯1セントも受け取らなかった。2015年にはイギリスのDJ2名がクラウドファンディングを立ち上げ、最終的に約2万4千ポンド(当時およそ450万円)が集まった。だがその小切手を手にしたのは、コールマンではなかった。バンドのリーダーで著作権者でもある、存命のリチャード・スペンサーである。

影響・派生で結ばれたジャンル

ドラムンベースを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ドラムンベース の系譜全体図(多段)を見る

同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

イギリス · 1992年前後 (±25年)