UKガラージ
1990年代後半のイギリスで成立した、シンコペートしたリズムとR&B感のあるダンス音楽。
どんな音か
1990年代後半のイギリスで、リズムが一定で踊りやすいダンス音楽「ハウス」と、ドラムが高速で細かく刻まれる「ドラムンベース」のあいだから生まれた電子ダンス音楽。BPMはおおむね130〜135の4拍子。キックを毎拍きっちり鳴らさず、ところどころ拍を抜いてリズムをずらし、スネアを2拍目・4拍目に置く――この「2-step」と呼ばれるドラム・パターンが最大の特徴だ。ただしキックが規則正しく鳴る四つ打ちの「4x4(スピードガラージ)」系統も並存する。主な音色はシンセベース、細かく刻むハイハット、サンプリングしたスネア、そしてR&Bを思わせる甘い女性ヴォーカル。和音にはローズ(電気ピアノ)などの温かいジャズ/ソウル系コードを使うことが多い。歌詞は英語で、恋愛・ストリート・ダンスフロアを題材にすることが多く、曲尺は4〜6分と比較的短い。音作りは明るく軽快で、耳で聴くというより体で感じる重低音(サブベース)が効いている。
生まれた背景
「UKガラージ」の「ガラージ」という呼び名は、ニューヨークの伝説的クラブ「Paradise Garage」(1977〜87)でDJのラリー・レヴァンがかけていた、ソウルフルなアメリカ合衆国ハウスを指す総称に由来する。1990年代半ばのロンドンでは、海賊ラジオのDJがこの米国産ガラージのレコードを再生速度で数%上げて(少し速く回して)、夜通しのレイヴでドラムンベースに混ぜていた。ニュージャージーのプロデューサー、トッド・エドワーズの、ヴォーカルを細かく刻んで万華鏡のように貼り合わせる音作りも重要な参照源になった。やがてMJ Cole、Artful Dodger、WookieらイギリスのDJ/プロデューサーが土台を築き、1999〜2001年にメインストリームの最盛期を迎える。きっかけはArtful Dodger feat. Craig David『Re-Rewind (The Crowd Say Bo Selecta)』(1999)の大ヒット(全英2位)で、無名の10代だったクレイグ・デイヴィッドは一夜にして国民的スターになった。その後もOxide & Neutrino『Bound 4 da Reload』(2000)など全英1位が続き、クラブだけの音だったものが地下から表舞台へ駆け上がっていく。2002年以降はアンダーグラウンドがより硬質で陰のある音に傾き、グライムやダブステップへ分岐する一方、ポップな歌もの路線はおおむね退潮した。だが2010年代半ば以降、Disclosure、Conducta、AJ Traceyらの手で再びチャートとフロアの中心へ返り咲いた。
聴きどころ
代表アーティスト
- Artful Dodger
- MJ Cole
- Sweet Female Attitude
- Oxide & Neutrino
- Burial
- Joy Orbison
代表曲
- Sincere — MJ Cole (1998)
- Flowers — Sweet Female Attitude (1999)
- Re-Rewind — Artful Dodger (1999)
- Bound 4 Da Reload (Casualty) — Oxide & Neutrino (2000)
- Archangel — Burial (2007)
日本との関係
初めて聴くなら
まず1曲ならMJ Cole『Sincere』(1998)――2-stepの跳ねと甘いコードが教科書通りに鳴り、UKガラージの基本がそのまま聴ける。歌の力を聴くならWookie『Battle』(2000)。ガラージがどう蘇ったかを知りたいなら、近年のヒットAJ Tracey『Ladbroke Grove』(2019)を。
豆知識
「2-step」という呼び名は、1拍ごとにキックが鳴る四つ打ちと違い、1小節に「2歩」分しか踏まないように聞こえることに由来するとされる。このシーンを育てたのは違法電波で音楽を流す海賊ラジオ文化で、当時のロンドンでは無認可局が次々と立ち上がり、生まれたばかりのUKガラージを街に広めていった。
