オーストラリア
Australia
オセアニア
アメリカ合衆国・カナダに次ぐ世界3位――そのカントリー音楽市場を、本場から一万キロ離れた南半球が支えている(ライブ大手ライブ・ネイションの調査による)。しかも、地元勢の力でではない。背景には、オーストラリアのアーティストがイギリス・アメリカ合衆国のスターに長く押されつづけてきた事情がある。オーストラリアの音楽業界団体ARIAが集計する主要チャート「ARIA Top 50」は英米のアーティストが圧倒的に強く、地元勢は下位に埋もれてしまう。そのためARIAは、オーストラリアのアーティストだけを対象にした別のランキング(ARIA Top 20 オーストラリアn Singles Chartなど)を設け、埋もれた地元勢に居場所を与えているほどだ。2026年の首位争いは、その構図を絵に描いたようだった。イギリスのサム・フェンダー(Sam Fender)とオリヴィア・ディーン(Olivia Dean)による共作「Rein Me In」に、エラ・ラングレー(Ella Langley)――その「Choosin' Texas」はARIAシングルチャートで首位に立った――に代表されるアメリカ合衆国カントリーの新世代が挑む、という形だった。つまり首位争いすら英国対米国で、豪州勢は不在なのである。世界に出る豪州産も、カントリーでもチャート上位勢でもなく、テーム・インパラ(Tame Impala)やザ・キッド・ラロイ(The Kid LAROI)といったほんの数組の世界的成功例に偏っている。国内チャートでも世界進出でも、豪州産は脇に追いやられているのだ。
自国アーティストの人気曲
- Treaty / 条約 — Yothu Yindi · 1991
豪先住民アボリジニのバンドYothu Yindiの代表曲。先住民との「条約締結」を求める政治的メッセージ。
海外アーティストの人気曲
世代・地域・経済による違い
都市部のZ世代が聴くのは、ほぼイギリス・アメリカ合衆国のポップとK-popだ。一方、地方や郊外ではアメリカ合衆国産カントリーが生活に深く根づいており、アメリカ合衆国アーティストのアリーナ公演が、地元勢の公演よりも多くの観客を集めることも珍しくない。では、この大陸に最も古くからある音楽――先住民(アボリジニ)の音楽はどうか。ヨス・インディ(Yothu Yindi)といった先住民バンドや、故ジェフリー・グルムル・ユヌピングゥ(Geoffrey Gurrumul Yunupingu)らは、政府の助成と批評家の評価に支えられながらも、商業チャートにはなかなか顔を出さない。すなわち、もっとも古い音楽が、自国のヒットチャートではもっとも耳に届きにくい。そんな逆説がここにある。インディペンデント系の中心にあるのが、公共の若者向けラジオ局トリプルJ(Triple J)だ。インディーやオルタナティブのアーティストが世に出る、主要な登竜門になっている。
