アフロビーツ
2000年代以降、ナイジェリア・ガーナを中心に発展した、アフリカのリズムとポップ・ヒップホップを融合した音楽。
どんな音か
ナイジェリアやガーナを中心に、西アフリカで生まれた現代のポップ音楽。テンポはやや速め(1分間に100〜120拍ほど)で、ジャマイカのダンスホール、アメリカ合衆国のヒップホップやR&B、イギリスのダンス音楽「UKファンキー」、そしてナイジェリアの伝説的ミュージシャン、フェラ・クティが生んだ「アフロビート」などが溶け合って生まれた。拍の頭ではなく、その合間(裏拍)を強調する「シンコペーション」を多用し、4拍子の中で前へつんのめるような独特のノリを生む。歌詞は英語・ピジン英語・ヨルバ語・イボ語を行き来し、掛け合い(コール&レスポンス)のコーラスが全体を駆動する。音作りは重低音と打楽器を前面に押し出す。そこに、トラップ由来の細かく刻むハイハットや、スークース(コンゴのダンス音楽)・ジュジュ(ナイジェリア・ヨルバのギター音楽)を思わせるメロディアスなギターが彩りを添える。歌声には音程を補正する「オートチューン」をうっすら効かせるのが定番だ。
生まれた背景
2000年代後半、ナイジェリアの都市ラゴスの若手プロデューサーたち(ドン・ジャジーやID・カバサら)が、フェラ・クティ(Fela Kuti)の「アフロビート」(アフロビート、末尾にsの付かない単数形)の遺産に、ダンスホールやヒップホップ、UKファンキーを混ぜたポップを作り始めた。これをメディアがフェラの音楽と区別するため、複数形の「アフロビーツ(アフロビーツ)」と呼ぶようになった。2010年代には、イギリスのナイジェリア系ディアスポラ(移民コミュニティ)を足がかりに、Wizkid、Davido、Burna Boyが国際的に頭角を現した。なかでもWizkidは、米英で1位を獲ったDrakeのヒット曲『One Dance』(2016)に客演している。続く2020年代にはRema、Asake、Tems、CKayが現れた。Wizkid『Essence』(2020)は翌2021年のジャスティン・ビーバーによるリミックスを機に世界的ヒットとなり、ナイジェリア勢が主導した曲として史上初めて全米トップ10入りを果たす。Burna Boy『Last Last』(2022)も世界規模で広がった。
聴きどころ
聴きどころは、まずリズムの置き方だ。アメリカ合衆国のポップが2拍目・4拍目にスネアを置くのに対し、アフロビーツはそこを外して跳ねさせる。打楽器にはコンガ、シェイカー、トーキングドラムが重なり、近年は南アフリカ発のダンス音楽「アマピアノ」由来の重低音シンセ「ログドラム」も加わる。次に低音部では、ベースとキック(バスドラム)が組み合って曲を押し出す。さらに掛け合いのコーラスと、フレーズの最後の音を長く伸ばす独特の歌い回しに耳を澄ましたい。曲の冒頭でプロデューサーが自分の名前を口にする「プロデューサータグ」が、DJの名刺のように差し込まれることも多い。ピジン英語(西アフリカで使われる、英語をもとにした混成語)の歌詞では、「I love you die(死ぬほど好き)」「No wahala(問題ない)」のように、英語と西アフリカの言語が混ざる。
音楽的特徴
楽器ドラムマシン、シンセ、ギター、声
リズムアフリカの打楽器系リズム、シンコペート、4/4
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- Wizkid
- Burna Boy
- Davido
- Rema
- Tyla
代表曲
- Ojuelegba — Wizkid (2014)
- Fall — Davido (2017)
- Ye — Burna Boy (2018)
- Essence — Wizkid (2020)
- Calm Down — Rema (2022)
- Last Last — Burna Boy (2022)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
現地のアーティスト自身は、ひとくくりの「アフロビーツ」という呼び名を嫌う傾向がある。彼らが好むのは「アフロポップ」や「アフロフュージョン」。アフロフュージョンはBurna Boyが自分の音楽を指して使う言葉だ。Asakeのゴスペル(教会音楽)寄りの楽曲は、評論で「アフロアドゥラ」(aduraはヨルバ語で「祈り」)と呼ばれることもある。さらに、ナイジェリアの口語的な呼び名「Naija(ナイジャ)」から「Naija sound」と呼ばれることもある。一方、複数形の「アフロビーツ」と単数形でフェラ・クティ系を指す「アフロビート」の綴り分け自体は、もともとメディア発の区別で、現地では必ずしも定着していない。
