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伝統・民族

ハイライフ

Highlife

ガーナ / 西アフリカ · 1920年〜

20世紀初頭のガーナで成立した、ヨーロッパの吹奏楽とアフリカのリズムを融合した音楽。

どんな音か

ガーナナイジェリアで生まれた、生バンドによる社交ダンス向けの音楽。テンポは1分あたり100〜140拍と幅広く、核となるのは2〜3本のギターの絡み合いだ。アコースティックギターとエレキギターが、たがいに循環する反復パターンを編み上げる。アコースティック中心の初期は、西アフリカの酒場で演奏された緩いギタースタイル、いわゆるパーム・ワイン(ヤシ酒酒場の音楽)に根を持つ。その下をエレキベースとドラム、コンガなどの打楽器が支え、トランペットやサックスのホーンが上に重なる。歌うのは男女どちらもで、英語や、現地で発達した簡易英語であるピジン英語のほか、ガーナのトウィ語、ナイジェリアのヨルバ語・イボ語など地域の言葉が使われる。歌詞は恋愛、結婚、社会観察、宗教、ことわざと幅広い。リズムは、1930〜40年代にレコードでキューバから持ち込まれたクラーベと呼ばれるリズムの型と、ジャズ、西アフリカの伝統打楽器が溶け合い、明るく揺れる。

生まれた背景

19世紀末から20世紀初頭にかけて、ガーナ(当時の英領ゴールド・コースト)沿岸部で融合が始まった。イギリスの軍楽隊、カリブ海からの移民が持ち込んだ音楽、そして地元の伝統音楽が混ざり合い、1920年代に「ハイライフ」の名が定着する。名の由来はこうだ。当初この音楽は植民地の上流階級が集うホテルや舞踏会で演奏された。店の外で踊る庶民が、中で繰り広げられる上流階級の「ハイクラスな暮らし(high life)」を指してそう呼んだ、とされる。1950年代にはE.T.メンサー(E.T. Mensah)率いるザ・テンポスが黄金期を築いた。ナイジェリアでは、内戦(ビアフラ戦争、1967〜1970年)の後にオリヴァー・デ・コク(Oliver de Coque)ら「イボ系ギターバンド」が東部を牽引する。同じ1970年代には、ヨルバ系の大衆音楽ジュジュ(Juju、トーキングドラムを核とする舞踏音楽)も並行して台頭したが、これはハイライフとは別の姉妹ジャンルである。フェラ・クティ(Fela Kuti)はハイライフジャズファンク、ヨルバの伝統音楽を掛け合わせ、1968〜70年にかけて政治色の強いアフロビート(アフロビート)を生み出した。1980年代以降は商業的に縮小したが、今もガーナナイジェリアで受け継がれている。なお、フェラのアフロビート(アフロビート、語尾にsの付かない単数形)と、2010年代以降に世界的ヒットを連発するポップアフロビーツ(アフロビーツ、sの付く複数形)は別ジャンルだが、どちらもハイライフを祖先に持つ。現代のガーナでは、ハイライフのギターラインをヒップホップに織り込むヒップライフを通じて、ダディ・ランバ(Daddy Lumba)やサーコディ(Sarkodie)といったスターに受け継がれている。

聴きどころ

エレキギター2〜3本の細かいフレージング(西アフリカ独特の循環パターン)。ホーンセクションのキメが2小節おきに入る規則性。男声合唱のコール&レスポンス。うねるベースと、拍の裏を突くようにコンガが刻む弾むリズム(シンコペーション)。ハイライフから派生したアフロビートが長尺のグルーヴを志向するのに対し、ハイライフは比較的短い曲構造(4〜6分)にまとまる。

リズムを聴く

このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。

ハイライフ · 120 BPM

代表アーティスト

  • E. T. Mensahガーナ · 1948年〜1996
  • Ebo Taylorガーナ · 1962年〜
  • Osibisaガーナ · 1969年〜
  • Prince Nico Mbargaナイジェリア · 1970年〜1997

代表曲

日本との関係

日本でのハイライフシーンは小規模だが、世界音楽ファンの間で支持される。Fela Kuti(ハイライフから派生したアフロビートの父)は何度か来日し、ハイライフの直接の延長として認識されている。

初めて聴くなら

古典なら、E.T.メンサー(E.T. Mensah)『All for You』(1950年代録音、レトロアフリック社が1986年に再発)。ガーナ独立前夜の高揚がそのまま音になっている。1970年代のイボ系ギターバンドを聴くなら、オリヴァー・デ・コク(Oliver de Coque)の「People's Club of ナイジェリア」シリーズが外せない。いま最も入手しやすいのは、1967〜1981年の録音を集めたパット・トーマス(Pat Thomas)『Coming Home』(ストラット社、2015年)。まずはここから入るのが手軽だ。

豆知識

エボ・テイラー(Ebo Taylor)が初めてアメリカ合衆国をツアーしたのは、86歳のとき(2022年)だった。1960年代から録音を続けてきた彼に国際的な再評価が訪れたのは、70代になってからのことだ。きっかけは、長く忘れられていた1970年代のハイライフを掘り起こした再発の波だった。サウンドウェイ社の編集盤『ガーナ Soundz』(2002)や同社の『ガーナ Special』シリーズが西側での再評価に火をつけ、ベテラン演奏家の国際的なキャリアを甦らせたのである。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図1920年代1950年代1960年代1990年代2000年代ハイライフハイライフマコッサマコッサアフロビートアフロビートヒップライフヒップライフアフロビーツアフロビーツ凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ハイライフを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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