ヒップホップ・R&B

ボンゴ・フラヴァ

Bongo Flava

ダルエスサラーム / タンザニア / 東アフリカ · 1995年〜

1990年代後半タンザニアで、米国ヒップホップ・R&B・ダンスホールが在地のスワヒリ語ポップと融合して生まれたタンザニア国民ポピュラー音楽。

どんな音か

スワヒリ語で歌うタンザニア発のポップR&Bで、テンポは概ね95〜105BPM前後。ダンスホールアフロビーツのドラムパターンを下敷きに、しなやかなベース、薄く広がるシンセパッド、ときどき差し込まれるピアノやアコギの単音リフが乗る。歌は鼻にかかったメロウなファルセットとオートチューンを織り交ぜ、サビでは合唱フックを重ねて開放的に響かせる。録音は中域がふくよかで、ハイハットの刻みは丸く、全体に湿度のある音像(ふくらみと余韻)が特徴。

生まれた背景

1990年代後半、ダルエスサラームの若者たちがアメリカ合衆国ヒップホップやR&Bをスワヒリ語のリリックで翻案し始めたのが起点。「ボンゴ」はタンザニアの俗称で、ラジオ局Clouds FMやレーベルBongo Recordsの存在が普及を後押しした。2000年代に入りProfessor Jay、Lady Jaydeeらが土台を作り、2010年代にDiamond PlatnumzのWCBレーベルと音楽専門局を巻き込む産業化で、ケニア・ウガンダ・ルワンダ・コンゴ東部までを覆う東アフリカ共通ポップへ拡張した。

聴きどころ

まず聴いてほしいのは、サビのメロディが日本J-POPに近い「歌で押す」設計になっている点。バースでは語りに近いラップやスポークン気味の歌が続き、フックで一気に開く構成が多い。ベースは長く伸ばさず、休符で空間を作る。打ち込みドラムの裏で鳴る民族打楽器(ダラブッカ風の高音やシェイカー)の微細な揺れ、コーラスのスワヒリ語の母音の響き(「a」「e」が連続する開放的な音)も聴きどころ。

発展

プロフェッサー・ジェイ、AY、ジェイ・デ、ダイアモンド・プラチナムズが世代を更新し、2010年代にはダイアモンドが東アフリカ最大規模のスター歌手に成長した。アマピアノやアフロビーツとの交差、シンゲリへの素材提供を経て、東アフリカ汎アフリカ・ポップの中心となった。

出来事

  • 1991: ストリート・ハッスラーズ結成
  • 2001: プロフェッサー・ジェイがブレイク
  • 2014: ダイアモンド・プラチナムズ『Number One』
  • 2020: WCBレーベルがアフリカ全土で活動

派生・影響

シンゲリ、東アフリカ・ヒップホップ、アマピアノと相互影響。

音楽的特徴

楽器ドラムマシン、シンセ、サンプラー、声

リズム4/4キック、トラップ・ハイハット、スワヒリ語ラップ

代表アーティスト

  • Professor Jayタンザニア · 1996年〜
  • Diamond Platnumzタンザニア · 2010年〜

代表曲

日本との関係

日本での流通はまだ限定的だが、東京や横浜のアフロビーツ系パーティでDiamond Platnumzの『Jeje』や『Waah!』が定番でかかる。J-WAVEの一部番組やSpotifyの「African Heat」プレイリスト経由で耳にした人も多いはず。明示的に日本のアーティストがボンゴ・フラヴァを取り入れた例は少ないが、アフロビーツアマピアノとあわせてDJのセットに紛れ込み、フェス文化(朝霧JAMの一部ステージなど)の周辺でじわじわ存在感を増している。

初めて聴くなら

最初の一曲はDiamond Platnumzの『Jeje』。ミドルテンポで歌の運びが分かりやすく、ボンゴ・フラヴァの空気がほぼここに詰まっている。次にAlikibaの『Seduce Me』を聴くと、より落ち着いた大人のR&B寄りの面が見える。三曲目はDiamond Platnumz feat. Rayvannyの『Salome』で、フックの開け方とアフロビーツとの境目を体感できる。夜のドライブや、夏の夕方の散歩で流すと身体が勝手に揺れるはず。

豆知識

「ボンゴ」はスワヒリ語の「ubongo(脳)」に由来し、「頭を使って生き抜く街=ダルエスサラーム」を指す俗称。つまりボンゴ・フラヴァは直訳すると「ダルの味」になる。Diamond Platnumzは自身のレーベルWasafi(WCB)とテレビ局・ラジオ局までを束ねる東アフリカ最大級の音楽帝国を作り上げ、2010年代後半にはアフリカ大陸全体のYouTube再生数で常に上位を占めていた。

影響・派生で結ばれたジャンル

ボンゴ・フラヴァを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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