ヒップホップ・R&B

アフロスウィング

Afroswing

ロンドン / イギリス / ヨーロッパ西部 · 2017年〜

別名: Afrobashment

2017年前後のロンドンで、J Hus、Not3s、Yxng Bane、Hardyらが確立した、UKラップ/グライム土台にアフロビーツとダンスホールを溶け込ませたサウンド。

どんな音か

テンポはおおよそ80〜100BPM。ドラムパターンはダンスホールの「デマウ」に近いアクセントを持ちながら、グライムのダーティなベースラインがその下を支える。そこへアフロビーツ特有の軽く跳ねる16分音符のパーカッションが加わり、前に進む感じと揺れる感じが同時に存在するグルーヴができあがる。ボーカルはラップと歌の間を行き来し、一つのヴァースの中でフロウが複数回切り替わることも多い。オートチューンは薄くかけるのが主流で、完全に声を変形させるというより、声に柔らかい光沢を与えるための使い方が多い。全体的に音数は少なく、余白を意識的に作ることでグルーヴを浮かび上がらせる。

生まれた背景

2010年代中盤のロンドン、特にイーストロンドンとサウスロンドンの移民二世コミュニティが出発点だ。西アフリカ系(ガーナナイジェリア、シエラレオネなど)の家庭で育ちながら、グライムとUKラップをストリートで吸収した世代が、親の世代の音楽(ハイライフアフロビーツダンスホール)を自分たちの言語で再解釈した。J Husがミックステープ「The 150th Episode」(2015年)でこのサウンドの骨格を示し、2017年のアルバム「Common Sense」がシーンを一気に可視化させた。同年にNot3sの「Addison Lee」がヒットし、アフロスウィングという呼称が定着した。

聴きどころ

J Husの「Did You See」(2017年)を最初に聴くなら、イントロのギターループがどう打ち込みのドラムと絡むかを確認してほしい。次にヴァースの歌詞のリズム——ロンドン英語のアクセントがアフロビーツの16分音符の上でどう跳ねるかがこのジャンルの面白さの核心だ。サビに入ったとき、音数がむしろ減って空間が広がる感覚に注目する。密度を上げるのではなく、引くことでグルーヴを際立たせる構造がある。

音楽的特徴

楽器シンセ、ドラムマシン、トーキング・ドラム・サンプル

リズムアフロビーツ系3-2クラベ感覚、ミッドテンポ

代表アーティスト

  • J Husイギリス · 2015年〜
  • Yxng Baneイギリス · 2016年〜
  • Not3sイギリス · 2017年〜

代表曲

日本との関係

日本では大きな流行にはなっていないが、アフロビーツ全体への関心が高まる中で、好事家のプレイリストやYouTubeのワールドミュージック系チャンネルを通じて知られるようになってきた。UKブラックミュージック全般に関心を持つ層や、グライムのファンを通じて広がっている。国内のプロデューサーが類似のリズム構造を参照したトラックを作る例も出始めている。

初めて聴くなら

J Husの「Did You See」か「Common Sense」(ともに2017年)から入るのがわかりやすい。アフロビーツの揺れとグライムの硬さがどう共存しているか、構造から聴ける。次にNot3sの「Addison Lee」(2017年)。こちらはよりポップな仕上がりで、メロディーラインの甘さとビートの重さのコントラストが面白い。Yxng Baneの「Rihanna」(2017年)はボーカルのオートチューン処理を確認するのにちょうどいい。

豆知識

アフロスウィング」という呼称はアーティスト側が積極的に使い始めたわけではなく、ジャーナリストとストリーミングプラットフォームのプレイリスト担当者が便宜的に使い始めたものが定着した経緯がある。J Hus自身は自分の音楽を特定のジャンル名で括ることに以前から慎重だ。なお「アフロスウィング」という表記はUK国内での呼称で、アメリカ合衆国ではほぼ使われない。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図2000年代2010年代アフロスウィングアフロスウィングアフロビーツアフロビーツグライムグライム凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
アフロスウィングを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

アフロスウィング の系譜全体図(多段)を見る

同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル

イギリス · 2017年前後 (±25年)

ジャンル一覧へ戻る