ヒップホップ・R&B

ポルトガル語ヒップホップ

Lusophone Hip-Hop

ポルトガル / 西欧 · 1995年〜

ポルトガル本土・ブラジル・ルゾフォン・アフリカ(モザンビーク、カーボベルデ等)を横断するポルトガル語ラップ。Lon3R Johny、Plutónio、Bispo等。

どんな音か

ポルトガル語圏(ポルトガル本土、ブラジル、モザンビーク、アンゴラ、カーボベルデ、ギニアビサウなど)を横断するヒップホップの総称。テンポは90〜140BPMまで幅広く、トラップ/ドリル/アフロビーツ/キゾンバ/クドゥロまでビートの幅は大きい。共通項はポルトガル語特有の「鼻母音」と「シ・シュ音」の連なりが生み出す独特のフロウ感。録音はクリアで低域が太く、リスボンとサンパウロのスタジオ品質は北米トラップに引けを取らない。

生まれた背景

ポルトガル本土では2000年代以降、リスボン郊外のアフリカ系移民コミュニティ(旧植民地アンゴラ、カーボベルデ、ギニアビサウ出身者)から出てきたDa Weasel、Sam The Kid、Valeteらが土台を作った。ブラジルではEmicidaやCriolo、Racionais MC'sらが独立したシーンを築き、リオやサンパウロのファヴェーラから世界へ広がった。2010年代後半、Plutónio、Bispo、Lon3R Johnyらの登場でリスボン発のトラップ世代が顕在化し、SoundCloudとSpotifyの普及で大西洋を挟んだルゾフォニア圏の往来が一気に加速した。

聴きどころ

聴きどころは、ポルトガル語の言語的なリズム感そのもの。スペイン語より歯擦音(シャ・シュ)が多く、語尾が鼻にかかって落ちる「ãoãe」の連続は、英語ラップにはない独特のうねりを生む。ブラジル系(パウリスタ訛り、カリオカ訛り)とポルトガル本土系(リスボン訛り、ポルト訛り)の発音差を聴き比べるのも面白い。Plutónioの楽曲ではキゾンバ/アフロビーツの腰の重さ、Bispoの『Iceman』ではドリル的な硬さなど、地域とビートの組み合わせ方が多彩。

代表アーティスト

  • Emicidaブラジル · 2008年〜
  • Plutónioポルトガル · 2009年〜
  • Lon3R Johnyポルトガル · 2017年〜

代表曲

日本との関係

日本ではブラジル系のEmicidaが在日ブラジル人コミュニティを中心に支持されており、群馬・愛知のブラジルタウンのイベントでプレイされることがある。ポルトガル本土のラップは日本ではほぼ未紹介だが、サッカー選手(リスボンのクラブで活動する日本人選手)のSNS経由でPlutónioやBispoの曲が紹介される偶発的な接触はある。J-POP/J-Rapとの直接的な交差はまだ少ないが、Spotifyの「Lusofonia」プレイリスト経由で発見する日本のリスナーは増えつつある。

初めて聴くなら

リスボン側の入口はPlutónioの『Em Coma』。メロディアスなフックとアフロビーツ寄りの腰の重いビートが、ポルトガル本土ラップの現在地をよく示している。ブラジル側ではEmicidaの『AmarElo』を聞くと、サンパウロのコンシャス・ラップの厚みが分かる。Lon3R Johnyの『Vibe』はトラップ寄りで聴きやすい。夜、リスボンやサンパウロの坂道を歩く想像をしながら、イヤホンで深く聴くのが似合う。

豆知識

ポルトガル語話者は世界に約2億6千万人、そのほとんどはブラジル人。ヨーロッパ・南米・アフリカに同じ言語で歌うシーンが分散しているのは世界的にも珍しく、ラテンアメリカ合衆国スペイン語圏のような単一市場にはなりにくい代わりに、地域ごとの音楽的多様性が極めて豊か。リスボンのアフリカ系クラブ・カルチャー(「キゾンバ」「クドゥロ」「アフロハウス」を融合させた「バトゥケ」シーン)は、欧州ダンスミュージック史の隠れた水源として近年再評価が進んでいる。

影響・派生で結ばれたジャンル

ポルトガル語ヒップホップを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

ポルトガル語ヒップホップ の系譜全体図(多段)を見る

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