ロシアン・エレクトロニカ
1970-80年代のANSシンセによるEduard Artemyev(タルコフスキー諸作)とラトビアのZodiac『Disco Alliance』が先駆けに、2010年代以降Pompeya のシンセ・ポップ復権、Little Big のレイヴ・パンク、IC3PEAK の政治的ハイパーポップが三極を形成。
まずはここから
ひとことで言うと1970-80年代のANSシンセによるEduard Artemyev(タルコフスキー諸作)とラトビアのZodiac『Disco Alliance』が先駆けに、2010年代以降Pompeya のシンセ・ポップ復権、Little Big のレイヴ・パンク、IC3PEAK の政治的ハイパーポップが三極を形成。
まずはこの曲からEduard Artemyev — Solaris (Ocean) ▶ YouTube
代表的な人Eduard Artemyev
どんな音か
ロシアン・エレクトロニカは、ソ連期のANS光電子シンセによるEduard Artemyev(タルコフスキー諸作)とラトビアSSRのZodiac『ディスコ Alliance』(1980)を先駆けに、2010年代以降のロシア語圏で発達した電子音楽の総体だ。現代の主軸は大きく三つの極に分かれる。第一はPompeya(2007結成、モスクワ)に代表される英80sシンセ・ポップ復権系、第二はLittle Big(2013結成、サンクトペテルブルク)に代表されるレイヴ・パンク/コメディ・エレクトロ、第三はIC3PEAK(2013結成、モスクワ)に代表される政治的ハイパーポップ/ウィッチハウスだ。編成はプロデューサー+ボーカルの二人組が典型、BPMは100-160、シンセ主導のプロダクションに歪んだドラム・マシン、時にレイヴ・スタブとフューチャー・ベースのウォブル・ベース、ボーカルは英語混じりのロシア語で加工され、視覚要素(MV、ステージ演出)が音楽と同等以上に重視される。
聴きどころ
初めて聴くなら
現代側からはLittle Big『Skibidi』(2018)、これで一気にジャンルの派手な側の入口が開ける。次にIC3PEAK『Смерти больше нет』(2018)、対極の暗く政治的な側を体験できる。Pompeya『90』(2011)は英語で歌う整然とした80sシンセ・ポップ。ここで系譜の始点まで遡ってEduard Artemyev『Solaris (Ocean)』(1972)、続いてZodiac『Zodiac』(1980)を聴くと、鉄のカーテンの東側で電子音楽が独自に育っていた時間の重みが分かる。IC3PEAKは深夜、ヘッドホン、赤い部屋で聴くと最大限に効き、Little Bigは友達の家のパーティで爆音で鳴らすのが正しい。Artemyevはむしろ日曜の午後、部屋を薄暗くしてタルコフスキー映画を思い出しながら聴くのが向いている。
代表アーティスト
- Eduard Artemyev
- Zodiac
- Pompeya
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- IC3PEAK
- Little Big
代表曲
- Eduard Artemyev — Solaris (Ocean) (1972)
- Eduard Artemyev — Meditation (1979)
- Zodiac — Pacific (1980)
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- Zodiac — Zodiac (1980)
生まれた背景
系譜の起点は1970年代のEduard Artemyev(1937-2022、ノヴォシビルスク生、モスクワ音楽院卒)で、彼はソ連製の光電子シンセサイザーANSを用いてアンドレイ・タルコフスキー『惑星ソラリス』(1972、『Ocean』)『ストーカー』(1979、『Meditation』)の音楽を書き、ソ連圏における電子音楽の父となった。1980年にはラトビアSSR国立音楽院の学生5人組Zodiacがデビュー・アルバム『ディスコ Alliance』を国営メロディヤから発表、全ソ連で2000万枚超を売り、ジャン・ミッシェル・ジャール流の宇宙的シンセ・ディスコをロシア語圏に定着させた。
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この二つの伏線の上に、2007年結成のPompeyaが英語でDepeche Mode系80sシンセ・ポップを演奏、2011年『Foursome』が米SXSWで注目されて先行して欧米認知を得た(彼らはロシア語ではなく英語で歌う点でこの系譜の変則例)。並行して2013年結成のLittle Bigがイリヤ・プルシキン率いる過剰なコメディ・レイヴを打ち出し、2018年『Skibidi』のダンス・チャレンジがTikTokで全世界的にバイラル化した。同年2013年結成のIC3PEAKが3rdアルバム『Сказка(お伽噺)』(2018)からの『Смерти больше нет(死はもうない)』でロシア警察による捜査対象になり、政治的ウィッチハウスとして国際的認知を得た。
音楽的特徴の詳細
楽器シンセサイザー、ドラム・マシン、サンプラー、時に生ボーカル、時にヴォコーダー
リズム100-160BPMのハウス/レイヴ/トラップ、ハイパーポップの過剰なピッチ変化、Pompeyaは80sシンセ・ポップの整然とした4/4
発展
2020年、Little Bigはロシア代表としてEurovision 2020出場が決定していたが、COVID-19でコンテスト自体がキャンセルされた。2022年のウクライナ侵攻後、Little BigはメンバーがLA拠点に、IC3PEAKはヨーロッパ拠点に移った。同時期、ベラルーシ籍のMolchat Domaがロシア語ポスト・パンク/コールドウェイヴを代表する存在として、2020-21年TikTok経由で全世界的な『doomer』美学のサウンドトラックとなった(彼らは本作では別枠のrussian-doomerに配置)。近年ではKazuschaがゼムフィーラを継ぐドリーム・ポップ系電子音楽の代表として台頭している。
出来事
- 1972: Artemyev『Solaris』(ANS光電子シンセ)
- 1979: Artemyev『Stalker (Meditation)』
- 1980: Zodiac『Disco Alliance』全ソ連2000万枚
- 2007: Pompeya結成
- 2011: Pompeya SXSW注目
- 2013: Little Big結成
- 2018: Little Big『Skibidi』TikTokバイラル
- 2018: IC3PEAK『Смерти больше нет』検閲対象
- 2020: Little Big Eurovision出場決定→COVID中止
- 2022: メンバー各所亡命
派生・影響
英シンセ・ポップ/ニュー・ウェイヴ(Depeche Mode、New Order)、ドイツNDW、南アDie Antwoord、米ハイパーポップ(100 gecs、Charli XCX)からの影響。russian-doomer(Molchat Doma、Motorama)と兄弟関係にあり、post-punk との重複領域を持つ。
その後の代表曲
- Pompeya — 90 (2011)
- Pompeya — Cheenese (2014)
- Little Big — Skibidi (2018)
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- IC3PEAK — Trrst (2018)
- Little Big — Uno (2020)
IC3PEAK — Smerti Bolshe Net (2018)
日本との関係
豆知識
Little Bigは2020年、ユーロヴィジョン2020のロシア代表として『UNO』で出場が決定していたが、COVID-19で大会自体がキャンセルされ、彼らの世界的ブレイクの絶好の機会は失われた。翌2022年のウクライナ侵攻後、彼らはロサンゼルスに拠点を移し、公然と反戦のメッセージを発した。
影響・派生で結ばれたジャンル
もっと見る(あと1件と系譜図)
感触が近い系譜も地域も違うのに、聴くと通じるジャンル
ロシアン・エレクトロニカが好きな人は、この6つも刺さる可能性が高いです。系譜図には出てこない、意外な隣人たち。
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