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ロック・メタル

ロシアン・ドゥーマー

Russian Doomer

ロシア/ベラルーシ / 東ヨーロッパ · 2010年〜

ベラルーシ・ロシアのポスト・ソ連系ポストパンク/コールドウェイブをDoomerウェイヴ文化が再ブランド化したサブシーン。

まずはここから

ひとことで言うとベラルーシ・ロシアのポスト・ソ連系ポストパンク/コールドウェイブをDoomerウェイヴ文化が再ブランド化したサブシーン。

まずはこの曲からMolchat DomaEtazhi ▶ YouTube

代表的な人Motorama

どんな音か

ロシアン・ドゥーマー(またはドゥーマー・ウェイヴ)は、2010年代後半以降にロシア語圏のポスト・パンク/コールドウェイヴが英語圏の「ドゥーマー(絶望した若い男)」ミームと結合して生まれた、アンビエントな絶望感を主題にする電子ロックの潮流を指す。中心はベラルーシのMolchat Doma(2017結成、ミンスク)で、彼らの『Судно(便器)』(2018)、『Этажи(階段)』(2018)がTikTokの『doomer walking down the street at night』動画に大量に使われた2020-21年のバイラルで、ロシア語圏をはるかに超えた世界的な現象になった。編成はシンセ+ドラム・マシン+ベース+ドイツ表現主義寄りのボーカルで、Joy Division/Sisters of Mercyのソ連版と位置付けられる。BPMは90-115、旋律は東欧マイナー・キーで、ロシア語の暗い子音のクラスターがコールドウェイヴの冷たい肌触りに完璧に接合する。

聴きどころ

Molchat Doma『Судно』は3分半のシンセ・ベース・ドラムマシン・ボーカルという純粋な4層構造で、ヴォーカルのイェゴール・シュキュトコの低く平板な語り歌唱が、まるで郵便配達員が郵便箱を叩くようにフレーズを刻む。歌詞の内容(『石鹸、綱、便器、水…私の墓は静かに眠るだろう』という自死の想念)を知って聴くと、明るいテンポとの落差が耳に刺さる。Motorama『Alps』では英語で歌われ、Joy Divisionの遺伝子がむしろ直接的に露出する。この音楽の聴きどころは『何も起きない』ことで、旋律もリズムも予想通りに進み、その予定調和そのものが絶望の音になっている。

初めて聴くなら

最初はMolchat Doma『Судно(Sudno)』(2018)、これで一気にジャンルの入口が開ける。続いて『Этажи(Etazhi)』(2018)、こちらの方が旋律的に親しみやすい。Motorama『Alps』(2010)は英語で歌われる同系譜の古参、日本人には Joy Division の直接の延長として理解しやすい。深夜、雨の降る窓、ヘッドホンで聴くのが定石で、明るい部屋では効かない。

代表アーティスト

  • Motoramaロシア · 2005年〜
  • Molchat Domaベラルーシ · 2017年〜

代表曲

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生まれた背景

系譜としては2005年結成のロストフ・ナ・ドヌのMotoramaが英語で歌うロシア発ポスト・パンクのパイオニアとして機能した。決定的な変化は2017年のMolchat Domaデビューで、彼らはミンスク出身のベラルーシ人3人組でロシア語で歌い、灰色の集合住宅と社会主義都市計画の美学を意識的に演出、これがInstagramとTikTokの『Soviet aesthetic』ヴィジュアル・トレンドと完全に噛み合った。

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『doomer』ミーム自体は英語圏の4chan/Redditで2018年頃に生まれた「フード付きジャケットの絶望した若い男」キャラクターだったが、YouTubeの『doomer wave playlist』動画がMolchat Doma、Motorama、Buerak、Plach Eveなどを一括してこの美学の音として提示することで、ジャンル呼称として定着した。

音楽的特徴の詳細

楽器ギター、ベース、ドラムマシン、シンセ、声

リズム中速、ポストパンク・グルーヴ、暗い旋律

発展

TikTokを介して西側ティーンに大量輸出され、Doomerウェイヴ・プレイリストの中核となった。

出来事

  • 2010: Motorama『Alps』 / 2017: Molchat Doma台頭

派生・影響

Post-punk、Cold Wave、Doomer Wave、New Wave。

日本との関係

日本での認知はTikTok経由の『doomer walking』ミーム(2020-21)が最大の窓口で、日本の中高生・大学生層がMolchat Doma『Судно』を『暗い曲』として発見した。日本のアニメ・ゲーム系の陰キャ美学(『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』『よふかしのうた』的な夜の街の孤独)とMolchat Domaの都市美学が視覚的に共鳴し、日本のTikTokクリエイターが自作の夜の街の動画にこの曲を貼る現象が2021-22年に多発した。より深いリスナー層は、Molchat Domaが実はJoy Division直系のポスト・パンクだと理解した上で、ソヴィエト・ノスタルジアと東欧の暗さを一括して受容している。

豆知識

Molchat Domaは正確にはベラルーシのバンドだが、彼らのすべての楽曲はロシア語で歌われ、活動拠点も長らくミンスクだった(2020年ベラルーシ抗議運動以降、多くの音楽家がリトアニアやポーランドに拠点を移し、Molchat Domaも欧州拠点となった)。バンド名『Молчат дома(モルチャト・ドマ)』はロシア語で『家々が沈黙している』の意味で、集合住宅の匿名性を象徴する。

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『Судно』の歌詞は詩人ボリス・リジ(1974-2001、エカテリンブルクの詩人、27歳で自死)の詩からの引用で、Molchat Domaはリジの詩を複数の曲で使っている。この文学的な深さがこのバンドを単なるTikTok現象から救い、真剣なリスナーの永続的な支持を得る根拠になっている。

影響・派生で結ばれたジャンル

系譜図を見る
ロシアン・ドゥーマーを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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