現代ロシアン・ロック
1997年前後のゼムフィーラ、Bi-2、Splean、Mumiy Trollを起点にする、ソ連崩壊後のロシアン・ロックの継承世代。
どんな音か
現代ロシアン・ロックは、1990年代後半に登場したゼムフィーラ、Bi-2、Splean、Mumiy Trollを起点にする、ソ連崩壊後のロシアン・ロックの継承世代を指す。編成はエレキギター+ベース+ドラム+ボーカル+時にシンセの4-5人組で、BPMは90-160、Kino以来の「灰色の生活を歌う」姿勢を残しつつ、英米90年代オルタナ・ロック(Nirvana、Radiohead)と英ブリットポップの制作技術を吸収して洗練された。歌詞はロシア語、都市生活の閉塞、恋愛、時折の政治性。ゼムフィーラの擦れた声、Bi-2のバラード的な壮大さ、SpleanのCureに近い暗さ、Mumiy Trollのラウンジ寄りポップ・ロックが対比的な四つの極を作る。
生まれた背景
決定打は1997年のMumiy Troll『Morskaya』アルバムで、ウラジオストク出身のイリヤ・ラグテンコがロンドン滞在中に完成させた作品が、ロシアン・ロックにブリットポップ的な洗練を初めて持ち込んだ。翌1999年、当時23歳のゼムフィーラ・ラマザーノヴァ(バシキール系、ウファ出身)がデビュー盤『Zemfira』を発表、『SPID(エイズ)』『Ariveder'chi』でウファ出身の女性ロック・ボーカルとして一気に世代を代表した。同時期にサンクトペテルブルクのAlexander VasilyevがSpleanで『Line of Life』(1997)を、Bi-2は2001年『Полковнику никто не пишет』(ガルシア=マルケスの短編小説から)で全国的認知を獲得した。
聴きどころ
発展
2000年代半ばにはZveri(2000結成、ローマン・ビリク)、Chaif(1985結成、スヴェルドロフスク、ウラジミール・シャフリン)らが加わり、Kino/DDT世代の子供にあたる第2世代シーンが確立した。2020年、ゼムフィーラは公然と自身の同性愛を明かし、パートナーの映画監督レナータ・リトヴィノヴァと共に活動していることを認めた。2022年のウクライナ侵攻後、彼女とBi-2はいずれも反戦声明を発表、彼女はイスラエル、Bi-2はイスラエル/タイ拠点に移り、2023年ゼムフィーラは『外国エージェント』指定を受けた。国内では現在、彼女たちの楽曲のラジオ放送とストリーミングが制限されている。
出来事
- 1997: Mumiy Troll『Morskaya』
- 1999: ゼムフィーラ・デビュー
- 2001: Bi-2『Полковнику никто не пишет』
- 2020: ゼムフィーラ、同性愛カミングアウト
- 2022: 反戦声明、亡命
- 2023: ゼムフィーラ『外国エージェント』指定
派生・影響
1980年代のレニングラード・ロック・クラブ(Kino、Aquarium、DDT、Nautilus Pompilius)の直接の子孫。同時期の英ブリットポップ、米90sオルタナと兄弟関係。ゼムフィーラの声の質感は後の Molchat Doma 女性版としての Kazuscha にも受け継がれる。
音楽的特徴
楽器エレキギター、ベース、ドラム、シンセ、ボーカル、時に生弦、ピアノ
リズム90-160BPMのオルタナ・ロック4/4、パワー・バラッドの3/4と6/8、Mumiy Trollは80sニュー・ウェイヴ寄りの跳ね
代表アーティスト
- Mumiy Troll
- Chaif
- Bi-2
- Splean
- Zemfira
- Zveri
代表曲・古典
Liniya Zhizni — Splean (1997)
Utekay — Mumiy Troll (1997)
Vladivostok 2000 — Mumiy Troll (1997)
Ariveder'chi — Zemfira (1999)
SPID — Zemfira (1999)
Hochesh? — Zemfira (2000)
Iskala — Zemfira (2000)
Argentina-Yamayka 5:0 — Chaif (2001)
Moe Serdtse — Splean (2001)
Polkovniku Nikto Ne Pishet — Bi-2 (2001)
Moy Rok-n-Roll — Bi-2 (2002)
代表曲・現在
Rayony-Kvartaly — Zveri (2004)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
ゼムフィーラは2020年に映画監督レナータ・リトヴィノヴァとのパートナーシップを公表、ロシアで2022年6月に「LGBTプロパガンダ法」が拡張(未成年向けから全世代向けに)された直後の2023年、外国エージェント指定を受けた。彼女の楽曲は現在もロシア国内Spotifyで聴けるが、ラジオ放送とテレビ露出は制限されている。Bi-2の Shura Bi-2 と Lyova Bi-2 はどちらも本名ではなくバンド名を苗字扱いで名乗る芸名で、両者ともソ連時代ミンスク出身、後にイスラエル国籍を取得している。Mumiy Trollのイリヤ・ラグテンコは日本にも複数回来日、日本のシティ・ポップ再評価の文脈でMumiy Trollを紹介するイベントが2020年代に東京で行われている。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ポップポスト・ソヴィエト・ロシア・ポップ
- 伝統・民族ロシアン・シャンソン
- エレクトロニックロシアン・エレクトロニカ
- ヒップホップ・R&Bロシア語ラップ
- ヒップホップ・R&B現代ロシアン・ラップ
- エレクトロニックドリフト・フォンク
