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エレクトロニック

ドリフト・フォンク

Drift Phonk

オンライン / ロシア / 東ヨーロッパ · 2019年〜

ロシア発の高速・歪み多めPhonkで、車のドリフト動画と一体化してTikTokで大流行したサブジャンル。

どんな音か

フォンク(アメリカ合衆国メンフィス発祥の、重低音を効かせたヒップホップ系ジャンル)を、特に車のドリフト動画(「ドリ車」)に合わせてテンポを上げた高速サブジャンルだ。BPMは150〜170前後。主な構成要素は次の通り。歪んで唸る808キック(ヒップホップで多用される、腹を打つ深いバスドラムの音)、暗く物悲しい短調のシンセ旋律、跳ねるカウベル、そしてロシア語・ウクライナ語・英語などの短いボーカルの断片。これらの上に、細かく刻むハイハット(金属的なリズム音)が重なる。曲尺は2〜3分と短く、TikTok・YouTube・Spotifyでの再生を前提に作られている。クラブの音響よりも車のスピーカーで鳴らすことを想定し、低域と高域(トレブル)を持ち上げているのも特徴だ。

生まれた背景

2010年代後半、ロシア・ウクライナ・東欧の若いプロデューサーたちが、アメリカ合衆国メンフィス由来のフォンクを、さらに速く、さらに暗く、より攻撃的に作り変えたのが始まりだ。ロシアのINTERWORLD、ウクライナのMoonDeityといった顔ぶれがこの波を代表する。ところが世界的に火をつけたのは「本場」の外、イギリスのKORDHELLだった。彼の『Murder in My Mind』(2022)が、ドリフト・フォンク全体を一気に押し上げた。そのKORDHELLの正体はベテランのメタル系プロデューサー、Mick Kenney。一方INTERWORLDは全盛期でも20代前半の独学プロデューサーで、担い手の素性がバラバラなのもこのシーンの面白さだ。2020〜22年には、車を横滑りさせて走るドリフト動画(日本車のスープラやAE86を使った映像)がTikTokやYouTubeで拡散し、世界中の視聴者に一気に届いた。その後もハード・フォンクやブラジリアン・フォンクなど、地域ごとの分派が生まれている。

聴きどころ

腹に響く808が、歪んで唸るように鳴り続ける。シンセ旋律が高速で刻み、カウベルが跳ねる。サンプリングされたボーカル(時にロシア語の囁き、時にメンフィス・ラッパーの声)が独特の温度感を作る。曲が短いので、繰り返し聴くか、ドリフト動画と一緒に体験するのがいい。

発展

TikTokのカードリフトミーム、『Sleep Token』『Initial D』カルチャーと結びつき、2022年にメインストリームへ進出。BPMは160前後で、Hard PhonkやAggressive Phonk派生が続いた。

出来事

  • 2020: KORDHELL『MURDER IN MY MIND』 / 2022: DVRST『Close Eyes』

派生・影響

Hardvapor、Hardstyle、Drillへの隣接。

音楽的特徴

楽器DAW、ディストーション、TR-808、Memphisサンプル

リズム150-170 BPM、極度のサチュレーション、トリプレット

代表アーティスト

  • KORDHELLロシア · 2019年〜
  • Phonky Tomロシア · 2019年〜
  • DVRSTロシア · 2020年〜

代表曲

  • Close EyesDVRST (2022)
  • MURDER IN MY MINDKORDHELL (2020)
  • Phonky TownPhonky Tom (2019)
  • I Can't SleepPhonky Tom (2022)
  • Memory RebootKORDHELL (2022)

日本との関係

TikTokを介して日本の若い世代に大量に届いた。日本でもフォンク系のプロデューサー(GHOSTEMANE系、Lil Bullet、AYNZK)が一定数活動している。アニメ『頭文字D』のユーロビート(アメリカ合衆国・欧州のEurobeat)と並べて、日本のサブカルチャー文脈で消費されることが多い。

初めて聴くなら

まず1曲なら、KORDHELL『Murder in My Mind』(2022)。このジャンルを世界に知らしめた、文字通り火付け役の曲だ。次にMoonDeity『NEON BLADE』——短尺動画で何百万回と使われた、この波を象徴する一曲。フォンク全体への入り口としては、ハウス・フォンクの代表曲Playaフォンクフォンクy Town』も外せない。

豆知識

ドリフト・フォンクは2022年、SpotifyのバイラルチャートやUS Hot Dance/Electronic Songsチャートに繰り返し顔を出した。クラブやラジオではなく、短尺動画と車の映像が商業的な成否を決めた数少ないジャンルでもある。フォンクのサンプリングは多くが1990年代のメンフィス・ラップ(DJ Spanish Fly、Tommy Wright IIIら)に由来するが、ドリフト・フォンクではほぼロシア・東欧の独自コンテンツへと発展している。

影響・派生で結ばれたジャンル

ジャンル関係図2010年代ドリフト・フォンクドリフト・フォンクフォンクフォンクハードヴェイパーハードヴェイパー凡例派生影響同系統
凡例
派生影響同系統
ドリフト・フォンクを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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ロシア · 2019年前後 (±25年)