ニューウェーブ
1970年代末〜80年代のイギリス・米国で隆盛した、シンセを取り込んだポップ寄りのPunk派生。
どんな音か
歪んだギターで押し切るパンクの後に来たのは、きらめくシンセと乾いた明るさだった。1970年代末〜80年代初頭の英米欧で、パンクの勢いを引き継ぎつつポップへ舵を切ったロック。ギターはパンクのように歪ませず、コーラスやディレイ(音を重ねたり残響を加えたりするエフェクト)をかけたきらめく音色が特徴。テンポはやや速め(BPM110〜140)で、主な楽器はシンセサイザー(初期はProphet-5、1983年以降に普及したYamaha DX7)、ドラムマシン、エレキギター、エレキベース。ボーカルは朗々と歌い上げるより、語りかけるような淡々とした歌い方が多い。歌詞は、ファッションや恋愛、未来への憧れを題材にしたものから、皮肉まじりに一歩引いて観察するものまで幅広い。映像(ミュージックビデオ)を音楽そのものと同じくらい重視した最初のジャンルでもあり、耳に残るフレーズ(フック)を曲の冒頭から押し出すのが常だ。
生まれた背景
1976〜78年のイギリス・アメリカ合衆国。3つのコードと勢いだけで押し切るパンクは長くは保たないと見たミュージシャンが、そこにシンセサイザーとプロダクション(音作り)の実験を持ち込んだ。第一波はロンドンとニューヨークが中心だった。アメリカ合衆国からは、アートスクール出身で機械的な硬さを持つTalking Heads、女性ボーカルでパンクを主流のポップへ押し上げたBlondie、ロボットのような振り付けで知られたDevo、The Carsが、イギリスからはElvis CostelloやXTCが登場した。同時期、日本ではYMOがテクノポップとして並走していた。続く第二波は1980〜85年のシンセ主導の英国勢で、化粧と映像で売ったDuran Duran、Spandau Ballet、Tears for Fears、Eurythmicsが代表格。同時期にはノルウェーのa-haも世界的に成功した。1981年に開局したアメリカ合衆国MTVは、当初流せる米国産の映像が乏しく、すでにミュージックビデオを用意していたイギリスのニューウェーブ勢がその穴を埋めた。こうしてニューウェーブは1980年代前半に世界的な主流となった。1980年代末には「ニューウェーブ」という言葉が指す範囲が広がりすぎ、もはや特定の音ではなく一つの時代そのものを指すようになっていた。
聴きどころ
シンセの初期設定(プリセット)の音を聴けば、その曲がいつ頃のものかほぼ言い当てられる。なかでもYamaha DX7のエレピ風サウンドは、1980年代半ばを象徴する音としてきわめて多くの楽曲で聴かれる。ドラムマシン(LinnDrum、Oberheim DMX)の硬質なスネアの「パチッ」という質感も、シンセと並ぶ年代の指紋だ。コーラスをかけたクリーンなギターは、1970年代のロックバンドがリズムギターで埋めていた中域を満たす。映像(MV)と合わせて観ると、衣装やセットまで含めて一つの「アレンジ」だったと分かる。
リズムを聴く
このジャンルを特徴づける代表的なリズムパターン。再生ボタンでループ再生し、下のリズム譜で今どの拍が鳴っているかを確認できます。
代表アーティスト
- Blondie
- Talking Heads
- The Police
- Depeche Mode
代表曲
- Psycho Killer — Talking Heads (1977)
- Heart of Glass — Blondie (1978)
- Roxanne — The Police (1978)
- Once in a Lifetime (new wave) — Talking Heads (1981)
- Every Breath You Take — The Police (1983)
日本との関係
初めて聴くなら
豆知識
ジャンル名そのものが、音楽ではなく映画から借りた言葉だった。「ニューウェーブ」は、1950年代末のフランス映画運動「ヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague)」の用語を転用したものとされる。1976年頃にロンドンの音楽プレスが、パンクの荒々しさを避けた、より洗練された若者向けロックを指す言葉として使い始めたと言われる。1981年8月1日のMTV開局で最初に流れたのは、その2年前の1979年に発表されていたThe Buggles『Video Killed the Radio Star』だった。曲名は「ラジオスターはビデオに殺された」の意で、MTVがラジオに取って代わる時代の到来をそのまま言い当てていた。
