ボレーロ・ラティーノ
キューバ起源のロマンティック・バラッド。1950-60年代にチリ・ペルー・コロンビアで国民音楽化した。
どんな音か
生まれた背景
1930年代にメキシコで大衆化し、Agustín LaraとTrio Los Panchosが世界的ヒットを飛ばした後、1950年代にチリのLucho Gatica(1928-2018、ランカグア出身)がロマンス・シンガーとして頭角を現した。彼の『Bésame Mucho』『Contigo en la Distancia』『Reloj』は世界50カ国以上で発売され、日本でも1960年代のラテン音楽ブームで大量に流通した。同世代にはアルゼンチンのLeo Marini、キューバのOlga Guillotがおり、彼らはリマ、ボゴタ、カラカスのラジオ局を通じて汎ラテン・アメリカ合衆国でスターとなった。1970年代以降、ヌエバ・カンシオンやサルサの台頭でボレロは商業音楽の中心から退いたが、1990年代のLuis Miguel『Romance』シリーズがリバイバルを仕掛けた。
聴きどころ
Lucho Gaticaの『Bésame Mucho』(1957)を聴くと、原曲(1940年、Consuelo Velázquez作)の情動を極限まで引き延ばした遅いテンポと、フレーズの終わりで音を絞り込む「バラード的な様式」が確認できる。伴奏はナイロン弦ギターと控えめなオーケストラで、歌の一音一音が浮かび上がる設計になっている。ボレロの真髄はこの「抑制と情熱の同居」で、歌い手の声質が全てを決める形式だ。2010年代以降のMon Laferteはこの形式を現代的に解釈し、Latin Grammyでボレロ部門を受賞している。
発展
1970年代以降、ヌエバ・カンシオンやサルサの台頭でボレロは商業音楽の中心から退いたが、1980年代のLuis Miguelによる『Romance』シリーズ(1991-)が世代を跨いだ再流行を仕掛け、以降現在まで結婚式・記念日等の定番として生き続けている。近年ではChilean Mon LaferteもLatin GrammyでBolero部門受賞している。
出来事
- 1885: José 'Pepe' Sánchez『Tristezas』(最初のボレロとされる)
- 1941: Agustín Lara『Solamente Una Vez』
- 1957: Lucho Gatica『Bésame Mucho』世界的ヒット
- 1991: Luis Miguel『Romance』でリバイバル
派生・影響
Bolero-son、Bolero-mambo(キューバ)、Balada Románticaへの直接の親、Latin Trapのメロディ引用にまで及ぶ。
音楽的特徴
楽器ボーカル、ナイロン弦ギター、レキント(小型ギター)、時にオーケストラ
リズム2/4、65-90BPM、シンコペーションを伴うクラーベ由来のリズム
代表アーティスト
- Lucho Gatica
- Mon Laferte
代表曲・古典
Bésame Mucho — Lucho Gatica (1957)
Reloj — Lucho Gatica (1957)
Contigo en la Distancia — Lucho Gatica (1958)
日本との関係
初めて聴くなら
最初はLucho Gatica『Bésame Mucho』(1957)、これはボレロの世界的な標準曲で、遅いテンポでの情動表現の完成形が体感できる。続いて『Contigo en la Distancia』『Reloj』を聴くと、Gaticaの声質の一貫性が理解できる。メキシコの側からはTrio Los Panchos『Sin Ti』が入り口として最適で、日本盤も戦後大量に流通している。現代的な解釈が聴きたければLuis Miguel『Romance』(1991)、Mon Laferte『Amárrame』(2016)を続けて聴くと、ボレロの現代への継承が確認できる。
