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ラテン・カリブ

ボレーロ・ラティーノ

Latin Bolero

キューバ / カリブ / 南米 · 1885年〜

別名: Bolero / Bolero romántico

キューバ起源のロマンティック・バラッド。1950-60年代にチリ・ペルー・コロンビアで国民音楽化した。

どんな音か

ボレーロ・ラティーノは、1880年代のキューバ・サンティアーゴで作曲家ホセ・サンチェスが『Tristezas』で確立した2/4のロマンティック・バラード形式を指し、後にメキシコで大衆化し、1950-60年代にはチリペルーコロンビアで独自の解釈が生まれた形式全体を覆う総称である。テンポは65-90BPMと遅く、歌詞は失恋、郷愁、離別といった内省的な感情表現を主とする。編成は伝統的にはトリオ(ボーカル+ギター2本、時にレキント)、後にはビッグバンドやオーケストラも用いる。スペインフラメンコ由来のクラーベ・リズムを2/4に置き換えた基底が、他のラテン舞踊音楽との差別化点になっている。

生まれた背景

1930年代にメキシコで大衆化し、Agustín LaraとTrio Los Panchosが世界的ヒットを飛ばした後、1950年代にチリのLucho Gatica(1928-2018、ランカグア出身)がロマンス・シンガーとして頭角を現した。彼の『Bésame Mucho』『Contigo en la Distancia』『Reloj』は世界50カ国以上で発売され、日本でも1960年代のラテン音楽ブームで大量に流通した。同世代にはアルゼンチンのLeo Marini、キューバのOlga Guillotがおり、彼らはリマ、ボゴタ、カラカスのラジオ局を通じて汎ラテン・アメリカ合衆国でスターとなった。1970年代以降、ヌエバ・カンシオンサルサの台頭でボレロは商業音楽の中心から退いたが、1990年代のLuis Miguel『Romance』シリーズがリバイバルを仕掛けた。

聴きどころ

Lucho Gaticaの『Bésame Mucho』(1957)を聴くと、原曲(1940年、Consuelo Velázquez作)の情動を極限まで引き延ばした遅いテンポと、フレーズの終わりで音を絞り込む「バラード的な様式」が確認できる。伴奏はナイロン弦ギターと控えめなオーケストラで、歌の一音一音が浮かび上がる設計になっている。ボレロの真髄はこの「抑制と情熱の同居」で、歌い手の声質が全てを決める形式だ。2010年代以降のMon Laferteはこの形式を現代的に解釈し、Latin Grammyでボレロ部門を受賞している。

発展

1970年代以降、ヌエバ・カンシオンやサルサの台頭でボレロは商業音楽の中心から退いたが、1980年代のLuis Miguelによる『Romance』シリーズ(1991-)が世代を跨いだ再流行を仕掛け、以降現在まで結婚式・記念日等の定番として生き続けている。近年ではChilean Mon LaferteもLatin GrammyでBolero部門受賞している。

出来事

  • 1885: José 'Pepe' Sánchez『Tristezas』(最初のボレロとされる)
  • 1941: Agustín Lara『Solamente Una Vez』
  • 1957: Lucho Gatica『Bésame Mucho』世界的ヒット
  • 1991: Luis Miguel『Romance』でリバイバル

派生・影響

Bolero-son、Bolero-mambo(キューバ)、Balada Románticaへの直接の親、Latin Trapのメロディ引用にまで及ぶ。

音楽的特徴

楽器ボーカル、ナイロン弦ギター、レキント(小型ギター)、時にオーケストラ

リズム2/4、65-90BPM、シンコペーションを伴うクラーベ由来のリズム

代表アーティスト

  • Lucho Gaticaチリ · 1953年〜2018
  • Mon Laferteチリ/メキシコ · 2003年〜

代表曲・古典

日本との関係

日本での認知は歴史的に厚い。1960年代のラテン音楽ブームでLucho Gatica、Trio Los Panchos、Agustín Laraのボレロは大量に流通し、『Bésame Mucho』『Solamente Una Vez』は日本の音楽好きの誰もが知る曲として定着した。歌謡曲の一部(古賀政男、服部良一)がボレロの旋律様式を吸収しており、越路吹雪や美空ひばりが1950-60年代にボレロ調の曲を録音している。近年はMon Laferteが2019年フジロック出演で若年層の一部に届き、ボレロがラテン・ポップの一形式として再登場する経路が生まれつつある。

初めて聴くなら

最初はLucho Gatica『Bésame Mucho』(1957)、これはボレロの世界的な標準曲で、遅いテンポでの情動表現の完成形が体感できる。続いて『Contigo en la Distancia』『Reloj』を聴くと、Gaticaの声質の一貫性が理解できる。メキシコの側からはTrio Los Panchos『Sin Ti』が入り口として最適で、日本盤も戦後大量に流通している。現代的な解釈が聴きたければLuis Miguel『Romance』(1991)、Mon Laferte『Amárrame』(2016)を続けて聴くと、ボレロの現代への継承が確認できる。

豆知識

Lucho Gaticaは晩年をメキシコシティで過ごし、2018年にメキシコ国籍を取得後、同年11月に死去した。彼はチリ・メキシコの二重国籍者として両国で国民葬に相当する追悼を受けた稀有な存在だ。Consuelo Velázquez作曲の『Bésame Mucho』(1940)は、彼女が15歳で作曲した曲で、当時彼女はまだキスの経験がなかったと後年のインタビューで語っている。この曲は世界70カ国以上、1000人以上の歌手にカバーされ、ビートルズの1962年ハンブルク時代の演奏レパートリーにも含まれていた。

影響・派生で結ばれたジャンル

ボレーロ・ラティーノを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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キューバ · 1885年前後 (±25年)