トローバ
19世紀末キューバ東部サンティアゴで生まれた弾き語り歌曲伝統と、革命後のヌエバ・トローバ運動を含む、社会派・抒情詩派の歌曲群。
どんな音か
アコースティックギターと声だけで構成される、非常にシンプルな音場。弾き語り的な作編成で、歌詞の意味が容易に立ち上がり、政治的メッセージや個人的な思想が前景に出る。メロディは音階的で朗々としており、ラテン音楽の陽性さよりも内省的・瞑想的な雰囲気が強い。BPMは遅から中庸。和音進行はシンプルで、時に複雑な詩型(アレハンドリーノなど)の句読を音楽的リズムで支える。
生まれた背景
聴きどころ
シルヴィオ・ロドリゲスの『Ojalá』では、4本弦のギターが揺らぐようなコード・ヴォイシングで、「もし鳥だったら」から始まる切実な願いの詩を受け止めている。歌詞の各行の終わりにギターが間をつくり、言葉の重さが浮き出る。パブロ・ミラネスの『Yolanda』では、叙述的なメロディが長い間奏を持たず、詩的な時間軸に寄り添っている。弾き方の細かな揺れ(ビブラート的な処理)も作品によって異なり、個性が強く表れる。
発展
1980~90年代にカルロス・バレラ、ヘラルド・アルフォンソらが第二世代を形成し、現代ではディエゴ・カノ、ハイデル・ガオなど若手が継承する。ボレロ、サルサ、フォークとの境界を行き来する。
出来事
- 1900: シンドー・ガライがハバナで活躍
- 1968: シルビオ・ロドリゲス「フェルナンド」
- 1972: ヌエバ・トローバ運動公式結成
- 2010: 第三世代の現代化
派生・影響
ボレロ、ラテン・フォーク、ヌエバ・カンシオン、サルサと交差。
音楽的特徴
楽器アコースティックギター、トレス、声
リズム緩やかな3/4と2/4、抒情詩、社会批評
代表アーティスト
- Pablo Milanés
- Silvio Rodríguez
代表曲
- Ojalá — Silvio Rodríguez (1978)
- Yolanda — Pablo Milanés (1982)
日本との関係
初めて聴くなら
夜に静かに聴くなら、シルヴィオ・ロドリゲスの『Ojalá』。歌詞を知らなくても、ギターのため息のような流れとメロディの悲しさが伝わる。スペイン語が分からなくても、投げ出された声と弦の対話を感じることから始められる。その後、パブロ・ミラネスで、別のアプローチを聴き比べると良い。
豆知識
シルヴィオ・ロドリゲスは盲目の作曲家で、その経験が全く異なる聴く世界を音楽に映した。ヌエバ・トローバ運動の中心は音楽による社会運動だったため、革命政権がスポンサーになる一方で、一部のアーティストは政権批判に転じた場合に沈黙を強いられるなど、複雑な歴史がある。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ラテン・カリブルンバ・クバーナ
