WorldMusic

メキシコ

Mexico

中南米・カリブ

コリードは、語りで物語を聞かせるメキシコ北部の古いローカル音楽だった。それがいま、世界的な大ヒットへと姿を変えている。火付け役は、そこにヒップホップトラップ(重低音とハイハットが特徴のヒップホップの一種)を混ぜた現代版「コリードス・トゥンバドス」だ。ジャンルを命名・確立したNatanael Cano、それを世界的ヒットへ押し上げたPeso Pluma、さらにFuerza Regida、Junior Hらが、ローカルな音だったこのサウンドを世界市場へ運んだ。チャート上位で目立つのは、大きく二つの系統だ。麻薬抗争などを生々しく歌う荒々しい「コリードス・ベリコス」と、ギターを主役に据えた静かな「シエレーニョ・トラップ」。この二つに、金管バンドが主役の楽団音楽「バンダ」を核とする地方音楽の総称「レヒオナル・メヒカーノ」が重なる。こうした自国ルーツ音楽はまとめて「ムシカ・メヒカーナ(メキシコ音楽)」と呼ばれ、その熱はいま頂点にある。スペイン語圏どころか、米ビルボードHot 100など英語圏の主要チャートにまでスペイン語のコリードが食い込んだ。レヒオナル・メヒカーノ曲がHot 100トップ10に入ったのは2023年が初めてのことだ。

自国アーティストの人気曲

海外アーティストの人気曲

世代・地域・経済による違い

若い世代はコリードス・トゥンバドスやシエレーニョ・トラップ一色で、年配層は金管楽団のバンダ、マリアッチ、演歌的な大衆歌謡ランチェーラを好む。北部の国境地域では、アコーディオン中心のノルテーニョが定番だ。一方、首都メキシコシティではレゲトンや海外のポップも入り混じる。麻薬を題材にした歌詞への風当たりは、足元で急速に強まっている。シェインバウム政権はコンテスト「メキシコは歌う(México Canta)」で非暴力的な楽曲を後押しする一方、ハリスコやチワワなど複数の州が条例でナルココリードの公演を禁止・罰金の対象とし、犯罪を美化するとして公の場での演奏が制限される事例も出ている。コリードの歌詞をめぐる議論は、たびたび全国ニュースになる。ヒット曲が国の議論を動かす——メキシコの音楽は、いまそういう場所にいる。

参考資料

- Spotify Mexico Daily: https://kworb.net/spotify/country/mx_daily.html - Billboard México Canta: https://www.billboard.com/music/latin/junior-h-from-corridos-tumbados-to-mexico-canta-1236245861/