バブルガム・ベース
ロンドンのレーベルPC Musicを核に2013年頃形成された、ハイパー商業的ポップを意識的にパロディ化する電子音楽。
どんな音か
最初に耳に刺さるのは、異常に高く処理されたボーカルだ。ピッチシフトでキャラクター化された声が、過剰に明るいシンセサウンドの上で歌う——甘くて、人工的で、商業的なポップスを意識的にやりすぎた姿がそこにある。ベースは低音をぶ厚く歪ませながら、同時に中音域にキラキラした音を重ねる。4つ打ちのビートではなく、変拍子や細かく分割されたドラムパターンが多い。A.G. CookやSOPHIEは音の「歪み」を隠さずに前面に出し、耳障りギリギリの音圧を美的判断として選択している。Charli XCXがこのサウンドをポップの文脈に持ち込んだことで、より広い層に届くようになった。
生まれた背景
2013年頃、ロンドンのレーベル「バブルガム・ベース」をA.G. Cookが設立したことがこのジャンルの出発点だ。Hannah Diamondの「Pink and Blue」(2014年)、「Beautiful」(2014年)は初期の代表作で、アイドルポップの記号をすべてやりすぎた状態に再構成した音楽として登場した。SOPHIEはやがてバブルガム・ベースから独立しながら、似た美学を自分の文脈でより過激に展開した。「ハイパーポップ」という呼称が2019〜2020年頃にSpotifyのプレイリストを通じて広まり、バブルガム・ベースはその先駆けとして再評価された。2021年にSOPHIEが急逝したことは、この文化圏全体にとって大きな転換点になった。
聴きどころ
Hannah Diamondの「Pink and Blue」(2014年)では、ボーカルがどこまでピッチ修正されているかを確認する。次に、その声質が「アイドル的な可愛さ」として機能しているのか、それとも「人工物として提示されている」のかを考えながら聴いてほしい——バブルガム・ベースの核心はこの曖昧さにある。A.G. Cookの「PINK ROOM」(2017年)はより抽象的な音の実験として聴けて、旋律よりも音色と構造が前面に出る。
発展
2016年Charli XCXが急接近し、PC Music系プロデューサーを大量起用。これがHyperpopへの接続点となった。
出来事
- 2013: PC Music設立 / 2014: Hannah Diamond『Pink and Blue』 / 2016: Charli XCX『Vroom Vroom EP』
派生・影響
Hyperpop、Digicore、Glitchcore。
音楽的特徴
楽器DAW、ソフトシンセ、Auto-Tune、サンプル
リズム120-150 BPM、過剰光沢の音色、急展開
代表アーティスト
- Charli XCX
- A.G. Cook
- GFOTY
- Hannah Diamond
- SOPHIE
代表曲
- Beautiful — A.G. Cook (2014)
- Hi — Hannah Diamond (2014)
- Pink and Blue — Hannah Diamond (2014)
Beautiful — Hannah Diamond (2014)
Pony — Hannah Diamond (2014)
PINK ROOM — A.G. Cook (2017)
Galore — A.G. Cook (2020)
