古典

ミニマル・ミュージック

Minimalism

ニューヨーク / アメリカ合衆国 / 北米 · 1960年〜

1960年代米国で興った、短いパターンの反復と漸進的変化を核とする音楽運動。

どんな音か

ミニマル・ミュージックは、短い音型を繰り返しながら少しずつ変化させる音楽。ライヒではリズムのずれが波のように広がり、グラスでは同じ和音型が光の角度を変えるように積み上がる。大きな旋律を歌うより、反復の中で耳が細部を発見していく。テリー・ライリーの「In C」は、明るいパルスの上で演奏者が小さなパターンを重ねる。

生まれた背景

1960年代のアメリカ合衆国で、ヨーロッパ現代音楽の複雑化への反動、非西洋音楽への関心、テープ実験、ジャズの反復感覚が交差して生まれた。ラ・モンテ・ヤングの持続音、ライリーの反復、ライヒの位相ずれ、グラスの加算的なリズムが、それぞれ違う形でミニマルな発想を広げた。後には映画音楽や電子音楽にも影響した。

聴きどころ

同じことの繰り返しに聴こえたら、音の増減を小さく追う。ハイハットに相当する短い音が入る位置、和音が一つ変わる瞬間、パターンが半拍ずれる瞬間が聴きどころになる。長い曲では、最初の退屈を越えると、身体の呼吸が反復に合ってくる。

発展

ヤング「The Well-Tuned Piano」(持続音と純正律)、ライリー「In C」(1964、53のパターン反復)、ライヒ「It's Gonna Rain」(1965、テープ・フェイジング)、「ドラミング」(1971)、グラス「Music in Twelve Parts」(1971-74)、「Einstein on the Beach」(1976、オペラ)が代表作。1980年代以降は調性的書法の拡張とロマン派的劇場性へ展開した。

出来事

  • 1964: ライリー「In C」初演
  • 1965: ライヒ「It's Gonna Rain」
  • 1971: ライヒ「ドラミング」
  • 1976: グラス「Einstein on the Beach」初演

派生・影響

ポスト・ミニマリズム、ホーリー・ミニマリズム、トータリスム、ニュー・エイジ、テクノ、IDM、エレクトロニカ、現代映画音楽の反復書法に決定的影響を与えた。

音楽的特徴

楽器アンサンブル、声、テープ、電子鍵盤

リズム反復パターン、漸進変化、明快な調性、フェイジング

代表アーティスト

  • ラ・モンテ・ヤングアメリカ合衆国 · 1958年〜
  • アルヴォ・ペルトエストニア · 1960年〜
  • テリー・ライリーアメリカ合衆国 · 1960年〜
  • スティーヴ・ライヒアメリカ合衆国 · 1965年〜
  • フィリップ・グラスアメリカ合衆国 · 1965年〜
  • ジョン・アダムスアメリカ合衆国 · 1975年〜

代表曲

日本との関係

日本では現代音楽、映画音楽、電子音楽のリスナーに広く受け入れられている。久石譲の反復的な書法や、ポストロックテクノ、環境音楽の聴き方とも相性がよい。コンサートホールだけでなく、美術館や映像作品の文脈でも聴かれる。

初めて聴くなら

入口には「In C — テリー・ライリー (1964)」が明るく分かりやすい。リズムのずれを体験するなら「ドラミング — スティーヴ・ライヒ (1971)」。劇場的な反復の大きさを聴くなら「Einstein on the Beach — フィリップ・グラス (1976)」へ進むとよい。

豆知識

ミニマル・ミュージックという言葉は単純という意味ではない。材料を絞ることで、普段なら聞き流す小さな変化を前面に出す。聴く側の集中の仕方まで変えてしまう音楽である。クラブミュージックや映画音楽、ポストロックに反復の語法が広がったことで、現代の耳には思った以上に身近な作曲法にもなっている。

影響・派生で結ばれたジャンル

ミニマル・ミュージックを中心とした近傍図。中心と直接結ばれるエッジが強調表示されます。

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