フリージャズ
1950年代末〜60年代に成立した、調性や形式から自由になった即興主体のジャズ。
どんな音か
事前に決めたコード進行・拍子・形式を破棄した即興ジャズ。一定のテンポという考え方そのものがなくなる。編成はサックス、トランペット、ピアノ、ベース、ドラムが基本で、時にチェロやヴァイオリンも加わる。各奏者が自由に音を出し、互いの音に反応する集団即興だ。サックスは、息を吹き込みすぎて音を割る「オーヴァーブロウ(絶叫)」や、舌を細かく震わせて音をざらつかせるフラッター奏法で、音色を限界まで歪ませる。さらに、息継ぎなしで吹き続ける循環呼吸で音を途切れさせない。録音はライブ感を重視し、編集は最小限。整った曲ではなく、その場で立ち上がる音の応酬がそのまま作品になる音楽である。
生まれた背景
1959年のオーネット・コールマン『The Shape of Jazz to Come』と、続く『フリージャズ: A Collective Improvisation』(1960年録音/1961年発表。ダブル・カルテット8人による約37分の集団即興)が、このジャンルの起点となった。同じころ、ピアノを打楽器のように激しく叩きつけたセシル・テイラー、宇宙をテーマにした衣装と演出で独自の世界をつくったサン・ラ、ゴスペル的な恍惚へと突き進んだ後期のジョン・コルトレーン(『Ascension』1965)らが、それぞれの方法で「フリー」を追い求めた。1965年にはシカゴで創造的音楽家育成協会(AACM)が設立され、ロスコー・ミッチェルらの集団即興がやがて1969年、パリで〈アート・アンサンブル・オブ・シカゴ〉として国際的に花開く。1970年代以降は欧州や日本へと広がった。イギリスのデレク・ベイリー、ドイツのペーター・ブロッツマンを軸とする欧州勢と、阿部薫を筆頭に高柳昌行・豊住芳三郎らが続いた日本勢は、スタジオ録音よりもライブの場を中心に、よりノイズへ振り切った音楽を展開し、フリーは世界規模の即興言語へと発展した。
聴きどころ
「拍を取らない」「コードに従わない」音楽が、それでもなぜ崩壊しないかを聴く。各奏者が他の音にどう反応するか、その瞬発的な対話が音楽の本体だ。長尺曲の中では、突然全員が静かになる「凪」の瞬間と、再び爆発する瞬間が交互に訪れる。最初は分からないまま聴いて構わない。やがて、その静と動のやり取りが、奏者同士の一本の対話として聞こえてくる。
代表アーティスト
- Cecil Taylor
- Ornette Coleman
- Albert Ayler
代表曲
- Lonely Woman — Ornette Coleman (1959)
- Free Jazz — Ornette Coleman (1961)
- Ghosts — Albert Ayler (1964)
- Ascension — John Coltrane (1965)
- Conquistador! — Cecil Taylor (1968)
日本との関係
初めて聴くなら
まず一枚なら、オーネット・コールマン『The Shape of Jazz to Come』(1959)。フリーの出発点で、まだ旋律もテーマも残っている。もう一歩踏み込むなら、アルバート・アイラー『Spiritual Unity』(1964年録音/65年発表)。日本の系譜をたどるなら、阿部薫『Last Date』(1978年8月28日録音、79年発表。彼が遺した最後の演奏)。
豆知識
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ロック・メタルロック
- 古典ミニマル・ミュージック
- ジャズモードジャズ
- 古典サード・ストリーム
- エレクトロニックドローン・ミュージック
- ヒップホップ・R&Bソウル
- ラテン・カリブサルサ
- ロック・メタルサイケデリックロック
