プロセス音楽
規則やプロセスを設定し、その自動的な展開そのものを音楽とする手法。ライヒの初期作品が代表。
どんな音か
プロセス音楽は、作曲家が決めた規則が少しずつ進む様子そのものを聴かせる音楽。Steve Reichの「Piano Phase」では、同じパターンを弾く二台のピアノがわずかにずれていき、最初は同じだった音が波紋のように分かれる。「I Am Sitting in a Room」では、声の録音を部屋で再生し録音し直すたび、言葉が響きだけへ変わっていく。
生まれた背景
1960年代のアメリカ合衆国実験音楽の中で、結果より手続きに焦点を置く考え方が強まった。ミニマル・ミュージック、テープ音楽、コンセプチュアル・アートとも近く、演奏者の感情表現より、設定した条件が時間の中でどう音になるかを見せる。Reich、Terry Riley、Alvin Lucierらの作品は、その後の反復音楽やサウンドアートにも影響した。
聴きどころ
劇的なサビを待たず、変化の速度を聴く。最初の1分でパターンを覚えたら、次に同じはずの音がどこでずれたかを探す。ずれ、残響、反復の濁りが主役なので、長く聴くほど耳が細部に合ってくる。退屈に感じる時間も、プロセスを知覚するための余白になる。
発展
ライヒ「Piano Phase」(1967)、「Pendulum Music」(1968、振り子マイクのフィードバック)、「Drumming」(1971)が古典例。アルヴィン・ルシエ「I Am Sitting in a Room」(1969、声を空間で繰り返し再生・録音する)も代表的プロセス作品。
出来事
- 1967: ライヒ「Piano Phase」
- 1968: ライヒ「音楽としてのプロセス」エッセイ
- 1968: ライヒ「Pendulum Music」
- 1969: ルシエ「I Am Sitting in a Room」
派生・影響
ミニマル・ミュージック全体、ジェネレーティヴ・ミュージック(ブライアン・イーノ)、コンピュータ・アルゴリズム作曲、サウンドアートの過程的作品へ広がった。
音楽的特徴
楽器ピアノ、打楽器、声、テープ
リズムフェイジング、付加リズム、自動展開
代表アーティスト
- テリー・ライリー
- アルヴィン・ルシエ
- スティーヴ・ライヒ
代表曲
- In C — テリー・ライリー (1964)
- I Am Sitting in a Room — アルヴィン・ルシエ (1969)
- Drumming — スティーヴ・ライヒ (1971)
- Piano Phase — スティーヴ・ライヒ (1967)
- Pendulum Music — スティーヴ・ライヒ (1968)
- Music for 18 Musicians — スティーヴ・ライヒ (1976)
日本との関係
初めて聴くなら
規則が耳で分かりやすいのは「Piano Phase — スティーヴ・ライヒ (1967)」。音響の変質を味わうなら「I Am Sitting in a Room — アルヴィン・ルシエ (1969)」。集団演奏の明るい入口としては「In C — テリー・ライリー (1964)」も聴きやすい。
豆知識
プロセス音楽では、作曲家がすべての瞬間を手で飾るのではなく、仕組みが音を生む。聴き手は完成品だけでなく、音が変わっていく手順をリアルタイムで追うことになる。
影響・派生で結ばれたジャンル
同じ時期・同じ地域で生まれた他のジャンル
- ラテン・カリブサルサ
- ロック・メタルサイケデリックロック
- ヒップホップ・R&Bファンク
- ロック・メタルカントリーロック
- エレクトロニックドローン・ミュージック
- ジャズフュージョン
- 宗教・霊歌コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック
- ロック・メタルロック
